二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.85 )
日時: 2016/03/18 23:35
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

 程なくしてTGVはカステルソンヌ駅に到着した。スコープはアイサムと共に列車から降り、ボーバトン校への馬車の乗り場に向かった。
 ホグズミード駅からホグワーツへ馬車を引いていくのはセストラル(スコープを含むほとんどの生徒には姿が見えないが)だったが、ボーバトンへの馬車を引いていくのはヒッポグリフ、ペガサス* 、ウィングドボアという3種類の魔法生物だった。
「それら3種類の魔法生物は、ボーバトンの各寮のシンボルなんだ。」
 アイサムが教えてくれたが、『ボーバトンの歴史』を読んでいたのでスコープもそのことは知っていた。
「バロンデュールの寮旗はオレンジ色の地に白のヒッポグリフ、シャルパンサーニュは銀色の地に金色のペガサス* 、ディオールシアンは紫の地に真紅のウィングドボアなんだろう?」
 スコープは言った。
「よく知ってるね。その通りだよ。
 つまり、僕はバロンデュール生だからヒッポグリフが引く馬車に乗ることになってる。」
「僕はどれに乗ればいいのかな?」
 まだ寮が決まっていないスコープは言った。
「どれでもいいんじゃないのか? 僕と一緒にヒッポグリフの馬車に乗るといいよ。」
 2人は馬車の1台に近付いていった。その馬車に繋がれたヒッポグリフの体毛は、驚くべきことに白色だった。
「ヒッポグリフは誇り高いから、馬車を引いてもらうにはお辞儀しなくちゃならないんだ。」
 アイサムに言われ、スコープは亡きバックビークのことを思い出しながらお辞儀した。白ヒッポグリフがお辞儀を返すと、2人は馬車に乗り込もうとした。
「哀れだねえ、バロンデュール生は。」
 背後から、聞き覚えのある嫌味な声がした。2人が振り向くと、数人の取り巻きを伴ったジュール・ドランペルージが立っていた。列車内でキングコブラに襲われたことにも、大して懲りていないようだ。
「醜い怪鳥に向かって頭を下げなくちゃならないとはね・・」
 ドランペルージは続けて言ったが、それを聞いていた白ヒッポグリフが彼に襲いかかろうとした。馬車に繋がれたままだったので攻撃は遅れ、ドランペルージは前足の鋭い爪から逃れることができたが、よろけて無様に尻餅をついた。
「いい気味だわ。」
 ドランペルージ達の後ろから、赤褐色の髪をした美少女が言った。
「黙れ。」
 立ち上がりながらドランペルージは言った。
「鳥人の血を引く野蛮人が。」
「カトリーヌのことをそんな風に呼ぶな!」
 突然アイサムが怒鳴り、ドランペルージに杖を向けた。それに対して彼の取り巻き達が杖を抜いたので、いざという時はアイサムに加勢しようとスコープも杖に手をかけた。
「気にしないで、アイサム。」
 美少女が言った。
「こんな人達のために、自分の立場をさらに悪くすることになっては駄目よ。
 それから、ドランペルージ。あなたはさっきヒッポグリフをけなしてたけど、あなた達の寮のシンボルはどうなの?」
 美少女は、少し離れた所で待機している、馬ほどの大きさがある翼の生えた猪達に目をやった。
「毛の生えた豚よりも、ヒッポグリフの方がずっと美しいと思うけど?」
 美少女の言葉に気をよくしたのか、白ヒッポグリフは彼女に顔を擦り寄せた。
「ウィングドボアは、偉大なるラグネス・ディオールシアンが寵愛した神聖な動物だ!」
 ドランペルージはむきになって反論したが、時折フゴフゴと鼻を鳴らすウィングドボア達からは、何らの神聖さも感じられない。
「ディオールシアンは、きっと豚みたいな顔をしてたに違いないわ。だからウィングドボアに親しみを感じたんじゃない?」
 美少女は痛烈に言い、スコープとアイサムは笑った。それから美少女は、自寮の創設者の顔をけなされ、怒りの余り反論できないでいるドランペルージ達をそのままにして、スコープとアイサムに歩み寄った。
「他のバロンデュールの馬車はどれも満員なの。私も同乗していいかしら?」
「もちろんだよ。」
 アイサムは答えたが、スコープにはその顔が赤味を帯びているように見えた。彼の肌は黒いので、分かりにくい変化ではあったが。
 スコープとアイサムの後から美少女が馬車に乗り込もうとした時、スコープはドランペルージが背後から彼女に杖を向けるのを目にした。
「エクスペリアームス(武器よ去れ)!」
 ドランペルージが口を開くより早く、スコープは杖を抜き出し、2ヶ月前に習得したばかりの武装解除呪文を唱えた。ドランペルージの手から杖が離れ、彼の体は後方に吹っ飛んだ。取り巻き達がドランペルージを助け起こし暗闇の中で彼の杖を探している間に、美少女が扉を閉め、ヒッポグリフは馬車を引いて飛び立った。







* セストラルを除く天馬の総称(独自設定)。