二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.88 )
- 日時: 2013/02/17 17:05
- 名前: ウルワルス (ID: JnbcEu1t)
「君は、両親がフランスに移住しなかった方がよかったと思ってるんだね?」
スコープは言った。
「その場合、君はマダガスカルの魔法学校に通っていたわけだけど・・」
「『フランスに移住しなかった方がよかった』っていうのは、両親にとってのことさ。僕自身は、フランスで生きることを嫌だと思ってるわけじゃない。両親が移住していなければ、僕がボーバトンに入学し、カトリーヌと出会うこともなかっただろうから・・・
ああ、もちろん、君に会うこともなかっただろうし・・」
アイサムは、慌ててスコープのことを付け加えた。
「あの、アイサム・・」
暫くして、スコープは遠慮がちに尋ねた。
「夕食の時、どうして君は会話に加わらなかったんだい? それから、どうしてカトリーヌ以外は誰も、君に・・・」
「『何故誰も僕に話しかけようとしなかったのか』と、質問したいんだろ?」
アイサムは自嘲的に言った。
「みんなは、僕のことを『罪人』だと思ってる。」
アイサムは続けた。
「1年生が馬車を引く動物達を日替わりで世話することは、君も もう知ってるね? 僕も昨年度ヒッポグリフの世話をした。
3月のある日、僕は、今日僕達が乗った馬車を引いたあのヒッポグリフの子供である、白い雛の世話に当たった。あの白ヒッポグリフの先祖は、コランタン・バロンデュールが飼っていた個体だそうで、飼育されているヒッポグリフの中でも特別な存在なんだ。もちろん、その雛も特別だった。僕は教わった通りにきちんと世話をした。
だけど、翌朝に次の飼育担当の生徒が見に行った時、雛は死んでいた。先生方が検屍したけど、死体のどこにも損傷は無く、病気に罹っていた形跡も見当たらなかったそうだ。
バロンデュールのみんなは僕を疑った。ドランペルージを始めとするディオールシアン生達が、その疑念を煽った。やつらは最初、僕が『死の呪文』を使ったに違いないと主張した。
僕は疑いを晴らすため寮監のダンドリュー先生に頼んで、全校生徒の前で僕の杖の『直前呪文』を次々と調べてもらった。それで、僕が『死の呪文』を使ったのではないことが証明された。
するとドランペルージ達は、僕がイスラーム教徒であることを理由に、僕がジンを呼び出してヒッポグリフを殺させたんだと言い出した。」
ジンとは、かつて主にイスラーム圏の魔法使いが時折召還していた異世界の生き物で、大抵 人のような姿をしている。召還すれば、一度に3つまで願いを叶えてくれる。
だが、ジンを召還して自身の命令に従わせるには複雑な魔法陣を正確に描き、これまた複雑な呪文を正確に唱えなければならない。魔法陣の線が少しでもずれていたり、呪文の発音を少しでも間違えたりすると、召還したジンの性格にもよるが、異世界に連れ去られたり、取り憑かれたり、殺されたりする恐れがある。そのため今では、イスラーム圏の魔法使いもジンを召還することは絶えて無かった。
「ドランペルージがヒッポグリフの雛を殺したに違いない! あいつが、君を退学にするためにやったんだろう。」
スコープは言った。
「そうかもしれない。だけど証拠はない。」
アイサムは悲観的な口調で言った。
その時、同室のセザール・デーツ達が入ってきた。彼らは、恐怖と非難が入り交じった表情を浮かべてアイサムを見やった。スコープが闘蛇(とうだ)のジェレイントにセオドール・ノットを攻撃させた直後に、彼を見ていたグリフィンドール生達と同じ表情だった。
「アイサム、談話室で話そう。」
スコープはセザール達を睨み付けると、アイサムと共に談話室に戻った。
談話室から人の姿は消えていた。
「どうしてバロンデュール生達は、ドランペルージではなく君を疑っているんだ!?」
スコープは、バロンデュール生達のアイサムに対する態度に憤慨していた。
「同じ寮の仲間なら、真犯人を見つけて君の無実を証明するのが道理のはずだ!」
「みんな最初から僕のことを快く思っていなかったんじゃないかな?」
アイサムは寂しそうに言った。
「気付いているかも知れないけど、ボーバトンに非白人の生徒は僕しかいない。ディオールシアン生達みたいにあからさまに侮蔑することは無けれど、バロンデュールのみんなも心の中では非白人への偏見・差別意識を抱いているんだよ、きっと。
だから、ドランペルージが『ムウィレレはジンを召還した』と言った時も、あっさり信じたんだろうね。今時ジンの召還なんて、本場イスラーム圏の魔法使いでさえ行わないのに・・」
スコープは、何が何でもアイサムの無実を証明し、合わせてバロンデュール生の心に巣くう差別意識をも取り除いてやろうと、心に誓った。寝室に戻ると、ローズとアルバスへの手紙にこれらのことを書き加えた。