二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.96 )
日時: 2013/04/07 15:50
名前: ウルワルス (ID: MDrIaVE2)

 レストレンジは、防寒用のマントの下にスリザリン・クィディッチチームのユニフォームを着用していた。
 2週間前のスリザリン対ハッフルパフ戦には、彼は出場していなかった。チームの誰かが「紫息病」に罹り、その代役として起用されたのだろう。
「ちょうどクィディッチの練習が終わって寮に戻る途中だったんだが、君が城の裏門* に向かって『心ここにあらず』の状態で歩いているのを目にしてね。君の方では僕達に気付いてなかったようだけど。
 気になったから、寮の入り口でチームメイトと別れて、表門経由で−−サウロス達には、君を追っているのだと気付かれたくなかったから−−ここまで来たんだ。」
 レストレンジが話すのを聞きながら、ローズは沸々と怒りが湧き上がってくるのを感じていた。こいつやサウロス・マルフォイがセオドール・ノットに告げ口しなければ、スコープがホグワーツを退学になることはなかっただろうに・・。それにこいつは、スコープが退学になったことを喜んでいた・・
 レストレンジは続けた。
「まだ2月なのに、そんな格好で外にいたら体調を崩すぞ。」
 ローズは城内での服装のまま外に出ていた。
「『紫息病』も流行っていることだし・・」
 レストレンジは防寒用マントを脱ぎ、ローズに着せ掛けようとした。
「余計なお世話よ。」
 ローズはそれを払いのけ、立ち上がった。
「ほっといて。あなたとは関わりたくないの。」
 レストレンジは悲しげな表情を浮かべた。ローズは、酷いことを言ってしまったと後悔しかけたが、次の瞬間には彼は歪んだ笑みを浮かべていた。
「スコーピウスのことが忘れられないようだな?」
「!」
「さっき泣いていたのも、それが原因だろう?
 もしかしたら君は、スコーピウスが自分を異性として見てくれないのは、恋愛感情を持つには彼がまだ幼いからだと、自分を納得させてきたのかもしれないな。だが12歳の少年とは、君が思っている程幼くないぞ。
 12歳は、そろそろ精通がある年頃だ−−僕の場合は10歳だったから、あいつも経験していておかしくない−−。やろうと思えば、そして相手がいれば、性行為が可能になる年頃なんだ。スコーピウスのやつ、ボーバトンの可愛い子と毎晩のように励んでるかもな。
 幼いのは、むしろ君の肉体だ。あいつが君を異性として見ないのも頷ける。凹凸の少ない、その体ではね・・」
 言いたいだけ言うと、レストレンジはマントを纏い、足音も荒く立ち去った。

 ローズは再び座り込んだ。
『だからなのね、スコープ・・』
 またもや涙が溢れ出てきた。


 冷静に考えれば、12歳の少女が学童体型なのはおかしいことではないのだが、衝撃に継ぐ衝撃のせいでローズの精神状態は冷静からほど遠かった。 


 突然、ローズは何かの気配を感じた。杖を取り出し、立ち上がって辺りを見回した。異常は見受けられないが、「大量出血事件」の犯人が傍にいるのかもしれない。
 逃げる気にはならなかった。ユニコーンを殺せる程の相手から逃げられるとは思えないし、それに今までのところ人間は誰も殺されていない。一時の痛みと引き替えに、犯人の正体を暴けるかもしれない。
 加えて、今のローズは多少自暴自棄になっていた。
「スペシアリス・レヴェリオ(化けの皮、剥がれよ)!」

 呪文を唱え終わった時、ローズは3メートル程手前で、銀灰色の毛並みに赤い目をした獣がこちらに顔を向けているのを目にした。体型は豹に似ているが、豹より遙かに大きい。
 ローズは幼い頃、その獣の姿を『魔法動物図鑑』の挿絵で見たことがあった。確かにこの獣なら、ユニコーンだろうとアクロマンチュラだろうとトロールだろうと殺せるだろう。
 だが、この獣がブリテンに棲息しているはずがない。誰かが持ち込んだとも考えられない。こんな危険極まりない生き物を遙々原産地から連れてくるなど、ヴォルデモートですら無理だろう。
 そもそも、この獣が姿を消せるなんて、『魔法動物図鑑』にも『幻の動物とその生息地』にも書いていなかった・・
 不意に、獣の赤い両眼が光った。その光が目に入った瞬間、ローズは脳髄が侵食されるかのような激しい痛みを感じ、意識が遠のいていった。
『許して。私とて望んでやっているわけじゃないの。』
 完全に意識を失う直前、頭の中でそんな声が聞こえたように感じた。


 
参考・・ >>32








* 飛行訓練場は、ホグワーツ城の裏門を出てすぐの所にある。
 原作には登場しない。