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ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第77話  ( No.146 )
日時: 2012/12/08 12:32
名前: フレア (ID: IMZOhr8h)

王家の山は、さほど今まで旅してきた所と変わらないような感じがした。
だが、見える範囲には紅い鱗を持つ竜……見方によればトカゲにも見えるアルゴリザードが居た。
「はぁ、嫌だなぁ……」
そんな声を上げたのはチャゴスでは無くサフィラだった。
「どうしたの?」
「罪も無い魔物を殺すのってかわいそうだよ!」
「……アルゴリザードは弱らせたら体内のアルゴンハートを吐き出す……。殺す必要は……無い」
エルニスの言葉にサフィラはほっとしたように息を吐く。
「……では、私は貴方がたとは別々に行動するので」
エルニスは一礼して高く跳躍し、木々の中に消えていった。
「本当にあの姫さん大丈夫なのか?」
「女っていうのは精神面でいうと男より強いでがすからなぁ。兄貴には劣りやすが」
「あーはいはい。兄貴ラブってわけね」
「サフィラ然りミーティア然り、何で姫は強いんだ……」
「……お父様?」
ミーティアは先程から全く喋らない父親を心配そうに見つめた。
「……何じゃ?」
「どこか悪いのですか?」
「いや……何でもない」
「おい!何をしている!僕らも早く行くぞ!エルニスに先にでかいのを取られてしまう!!」
わがままなチャゴスを横目で睨んで、サフィラはアルゴリザードに感づかれないように歩いていく。
……どごお!!
容赦ない不意打ちをくらい、アルゴリザードは倒れた。
「……ごめん」
謝ってからサフィラは屈んでアルゴリザードの口をこじ開けた。
中には小指ほどの小さな紅い宝石が輝いていた。
それを取り出し、サフィラは回復呪文を唱えた。
「きゅぅぅ………」
アルゴリザードは起き上がり、怯えた様に逃げていった。
「…………」
サフィラは無言でチャゴスにそれを渡す。
「ふむ、意外と小さい物なのだな。いや……待てよ。エルニスは強い奴程大きい物を持っていると言っていたな。
ここはでかいのを手に入れられなければ、エルニスに負ける。
それに、大きなアルゴンハートを手に入れられれば、城の者達もきっと僕を見直すはずだ。
だから大きい奴を手に入れるまで僕は城に帰らないからそのつもりで」
「…………………」
サフィラ達はもうチャゴスと話すのも嫌になってきた。

その後、数々のアルゴリザードを倒したが、チャゴスのお気に召す大きさのアルゴンハートは見つからず……。
しかも、戦闘の途中でチャゴスは逃げだし、結局六人で戦い、儀式の意味がないだろうというような状況だ。
気がつくと日が暮れ、野宿する事にした。
「……あ、皆さん。私も皆さんと共に夜を明かしたいのですが宜しいでしょうか………?」
壮絶な戦いをしたのだろう。
どこからともなくやってきたエルニスの服はボロボロで、あちこちからは未だ血が流れている。
「もちろんいいよ。ところで、アルゴンハート手に入った?」
エイトはエルニスの傷を呪文で治しながら訊いた。
「……はい。小さいのですが………」
エルニスが懐から出したのは、サフィラ達があれだけ倒したのに出てこなかった、手からはみ出す程の大きさだ。
「……これっぽっちの大きさじゃあ………兄様に勝つ事は無理……。明日、頑張る。おやすみ………」
相当疲れが溜まっていたのか、その場に崩れ落ちるとすぐに寝息を立て始めた。
「これっぽっちの大きさって……。どれ位の奴と戦ったのよ……」
ゼシカは目の前の自分より幼い少女を見やった。
寝顔を見ると本当に子供らしくて可愛い。
チャゴスとは大違いだ。
「ちっ……こうなったらこいつのを盗み取るしか……」
「……………」
「あ、いやいや。より強いアルゴリザードを倒すしかないようだな」
サフィラ達の無言の威圧と殺気を受け、チャゴスは慌てて訂正した。
「まぁ俺達はどっちが王になろうが知ったこっちゃねえんだけどな」
「あの姫さんが王になればサザンビークも安泰だと思いやす」
「右に同じね。超が付くほどわがままなチャゴス王子だと戦争怒りそう」
「……貴様ら」
好き勝手言っている三人を軽く睨むチャゴス。
「………」
トロデは相変わらず言葉を発しない。
自分の娘と結婚する者がこんな奴だと知って絶望したのだろう。
ミーティアも頭を抱えて何か悩んでいるように見える。
「……トロデ王」
サフィラは小声でトロデに尋ねた。
「あいつとミーティアが結婚して、ミーティアは幸せになると思う?」
サフィラの問いにトロデは黙ったままだ。
「あんなわがままで自分勝手な王子……。あんな王子がミーティアを幸せに出来る?」
「……クラビウス王の父親が王子だった頃に身分を隠して諸国漫遊の旅をしてな。
旅の途中に出会った儂の母親と恋に落ちたが当時のトロデーンとサザンビークは犬猿の仲だったのじゃ。
もちろん周囲は猛反対で、引き離された二人は将来自分達の子供を結婚させようと約束を交わしたのじゃが……。
双方の子供は男ばかりで約束を果たせずに亡くなった。
そして、ドルマゲスの呪いに罹る少し前、クラビウス王が父親の願いを叶えようと子供同士を結婚させようと申し出てきた。
儂もそれに賛成し、二人を結婚させる事にした。だが……」
「トロデ王………………」
空は雲で星が隠れていた。
それはまるでトロデの心を映し出すかの様だった……。