二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第78話 ( No.150 )
- 日時: 2012/12/15 14:37
- 名前: フレア (ID: iIvAbzaF)
エイトは馬の嘶きで目が覚めた。
眠たげな目で声を発しているパトリシアを見ると……
「何やってんだ!早く歩け!ご主人様を乗せて前に進むんだよ!!」
「王子!おやめ下さい!ええい!やめんかこらっ!馬が嫌がっておるじゃろ!」
「馬がかわいそう……」
チャゴスはパトリシアにまたがっていてパトリシアは暴れまくっている。
そしてトロデは止めようと、サフィラ達はチャゴスを哀れむ様な目で見ていた。
トロデにとっては出会ったばかりでもパトリシアは大切な仲間なのだ。
エイトはしばらくチャゴス達を見ているとある事に気が付いた。
そういえばヤンガスとエルニスがいない。
「ねえ、ヤンガスとエルニス王女は?」
「起きてたんだ。エルニス王女は朝早くからアルゴンハート取りに行ったよ。ヤンガスは知らない」
一番近くにいたサフィラは答えた。
一方馬に乗っているチャゴスは……。
「ええい!馬のしつけがなっていないようだな。この僕が直々に人を乗せる作法ってものをビシバシ仕込んでやる!」
パトリシアから振り落とされたチャゴスは忌々しげにパトリシアを睨み、その手にはいつの間にか鞭が握られていた。
「待てい!まだこの馬を苦しめるつもりか!そんな事はさせん!
どうしても気が済まぬと言うなら馬ではなくこの儂を打てい!」
「ふん、そんなに馬が大事か。ならば望み道理鞭をくれてやろう。尻を出して後ろを向け!」
「お父様にそんな下劣な行為を働く事はこの私が許しません。叩くなら私にしなさい」
今まで黙って見ていたミーティアがトロデを庇うように立つ。
おいお前ら何プレイだよ、と聞きたくなるような描写である。
「王子、落ち着いて下さい」
流石にエイトはチャゴスをなだめる。
「黙れ下衆が!貴様らに指図される覚えは無い!」
しかし、それはすぐに終わった。
「兄貴ぃー!兄貴ぃー!」
ヤンガスが手を振って駆けて来る。
「てぇへんでがす!あっしが気持ちよく野……!」
肩を切らして言うヤンガス。
言葉の途中で思いっきり女性陣から睨み付けられ、慌てて言い直す。
「あ、いやいや!あっしが花を摘みに行ってたらすぐそばにとんでも無くでかい……」
うぉぉぉぉぉぉぉん!
雄叫びがすぐ近くから聞こえた。
「……奴でがす」
「今のはアルゴリザードの鳴き声だぞ!」
チャゴスが瞳を輝かせて言うが全く子供らしさというものは感じられず、瞳に映っていたのは欲望のみ。
「ヤンガス、それはどれくらい大きかったのよ?」
「昨日戦った奴の3倍位でがす」
ゼシカの質問に少し青ざめた様子で答える。
「相手にとって不足無しだな!」
「よくいうぜ……」
チャゴスを睨みながらククールは苛立ったような声で言った。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第79話 ( No.151 )
- 日時: 2012/12/26 14:48
- 名前: フレア (ID: E6XmDPFs)
「はあっ……はぁっ……」
傷だらけの身体で、サフィラは再び剣を構える。
前に唱えたマダンテの後遺症で体中が軋む。
チャゴスはすでに逃げていて、エイト達もボロボロだった。
状況は極めて不利。
それでも負けるわけにはいかなかった。
太陽の鏡を手に入れ、ドルマゲスを倒し、世界に平和をもたらすために……。
「はぁぁぁぁっ!」
隼の剣は闇の光を纏い、サフィラの手の中で猛り狂う。
そしてアルゴンファッツと呼ばれるアルゴリザードのボスへ刃を振り上げる。
しかし。
「しゃぁぁぁぁぁ!!」
「きゃ……!」
「サフィラ!」
アルゴンファッツがやいばが届く前に巨大なしっぽを振り、サフィラにそれは命中し、近くの木に思い切り叩き付けられる。
「こうなったら奥の手です!時空よ、裂けよ!カラミティブラスト!!」
「あ!ミーティア!!」
ミーティアは巨大な鎌を空に向けて振り下ろす。
サフィラの制止の声はミーティアには届かなかった。
高らかに唱えられたその呪文は、時空に亀裂を生じさせ、不可逆の力で敵を撃つ強力な技。
だが、それと同時に《世の理》を歪めてしまうほどの危険な魔法である。
「ぐぉぉぉぉ!!」
アルゴンファッツはそれをかわした。
「そんな……」
ミーティアは絶望的な声を漏らす。
「くそっ!もうやけくそだ!!」
エイトは剣に炎を灯し、アルゴリザードに向けて一直線に走る。
「バイキルト!!」
ゼシカはエイトに補助呪文を唱える。
バイキルトは剣を隼の如く速く切れるように軽くする呪文だ。
「大丈夫なんかよ……。ピオリム!」
ピオリムは対象を速く動けるようにする呪文だ。
ククールが唱えた魔法はエイトを緑色の光で包む。
「秘剣ドラゴン斬り!!」
避ける好きも与えず、エイトはアルゴンファッツを切り刻む。
「グルォォォォォ………」
遂にアルゴンファッツは倒れた。
口からコロン、と音を立てて宝石が出てきた。
エルニスが持っていたものより一回り大きい。
「ふむ、これであいつにも勝てるだろう」
満足げな表情で言ったのはチャゴスだ。
いつの間にか戦闘から逃げ、いつの間に帰ってきたチャゴスはアルゴンハートを拾い上げる。
「じゃあもう帰りやしょうや。あっしらは急がなきゃいけないんで」
「エルニス王女はどうする?」
「それなら先程帰ると言っていたぞ」
トロデに全員の視線が集まる。
「取り敢えず満足なのが手に入ったから帰るだと。傷だらけだったな。大丈夫かのぉ?」
「まあ所詮あいつは僕より遙かに劣っているからな。僕が苦労して取ったアルゴンハートにあいつは勝てないな!」
高笑いしているチャゴスに戦慄させられたが我慢する。
ここでこいつを殺したら元も子も無い。
「さあ、帰ろう。ルーラ!」
高らかに唱えられた呪文はチャゴスを置いていく事なく皆を青い光で包み、消えた。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第80話 ( No.152 )
- 日時: 2012/12/15 15:33
- 名前: フレア (ID: iIvAbzaF)
サザンビークに帰ると多くの屋台が建ち並び、城下町は賑わっていた。
「ほう、もうバザーが始まっていたのだな。エイト、城に戻るのは後にする。ここから別行動だ」
チャゴスは言うなり駆け出していった。
「はぁ……エイト、追いかける?」
「うん。王子いなきゃ鏡も受け取れないし」
サフィラの質問にエイトは頷いた。
「じゃー、バザー見ながら王子探そうぜー」
「そうね。じゃあ私はサラとミーティアと一緒に行動するから」
「いいですね。女子三人でゆっくり見たいので」
ゼシカの意見にミーティアは賛成し、サフィラも頷いた。
「闇商人には気を付けた方がいいでがすよ〜」
ヤンガスの言葉に分かった、と言って六人は別れた。
「美味しいですね……」
ミーティアは焼き鳥を食べながら呟く。
「少しタレが甘くていいねー」
「旅に出てからこんな風に行動したことが無かったから新鮮に感じるわ」
サフィラとミーティアは頷く。
確かにゼシカの言う通り旅に出てから戦いばかりだった。
「ところでさ……ミーティア」
「はい?」
サフィラはふと真顔になって訊いた。
「アルゴンファッツと戦ったとき、唱えた呪文……カラミティブラストだっけ?あれはどうやって習得した?」
「どうやってって……。実は今日初めて使ったのです。その呪文の存在を本で知って……」
「ねえ、呪文って本で覚えただけで習得出来るものじゃないわよね?」
「うん。どんな呪文を覚えられるか、もしくはどんな呪文が得意なのかは人それぞれなんだ。私は闇系、ゼシカは炎系、エイトは回復系、ククールは風系、ヤンガスはそもそも使えないといったように。多分ミーティアは時と空間を操る呪文を唱えられるんじゃないかな?」
「時と空間を操る呪文……?」
ミーティアは胸に手を当てる。
「結構凄い事なんだよ。流石に別の世界までは行けないけど、これにはこの世界でもほんの一握りも居ない位術者が限られているらしくてね。ミーティアが戦いで経験を積んでいくうちに自然と使えるようになっていくはずだよ」
「そうですか……。……皆さんの足手まといにならずに済みそうです……」
「何言ってるの〜。元々あんた結構強いじゃないの」
ゼシカがばんばんとミーティアの背中を叩く。
「足手まといになんてなっていないって。王家の山でアルゴリザードと戦ったとき、かなり助けられたんだから」
「……ありがとうございます」
ミーティアは少しはにかんだように二人に笑いかけた。
一方男達は。
「あ、あれチャゴス王子じゃないか?」
ククールの指差した方向には背の低く、肥っていて緑色の服を着ている奴が居た。
何やら男と話している。
「王子、何をしているんですか?」
エイトがチャゴスに話しかける。
「おお、エイト。丁度良いところに来た。これが何だか分かるか?」
チャゴスが持っていたものは両手で持つのがやっとだという位の特大アルゴンハートだった。
サフィラ達が全力で取ってきた物より遙かに大きい。
「そこにいるバザーの商人からたった今買い取ってな」
チャゴスは得意げな表情で話す。
「今まで手に入れたアルゴンハートはそなたにくれてやる」
「まさか王子!それを城に持ち帰るつもりですか!?」
「察しが良いな。もちろんこのことは内密に。この商人もバザーが終われば国を出るだろうから秘密が漏れる事はない」
もうエイト達は怒る気持ちすら沸いてこない。
ヤンガスとククールももうこいつ終わりだな、的な顔をしている。
「ではここでお別れだ。皆の賞賛を浴びる僕の晴れ姿を見たければ、そなたも城へ来るがいい」
チャゴスは城へと走っていった。
「……チャゴス…………」
エイト達以外にもう一人、その様子を見ている者が居た。
「お前はなんということを………」
双眼鏡を下ろし、サザンビーク国王クラビウス王は嘆いた。