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ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第81話  ( No.155 )
日時: 2012/12/27 12:57
名前: フレア (ID: 8APypGif)

「はぁ…………」
エイトはサフィラ達を探し歩きながら手に持ったアルゴンハートを見る。
あんなに苦労して手に入れたのに早々にチャゴスに捨てられたアルゴンハートは、変わらず美しい輝きを放っていた。
「どうする?クラビウス王に言う?」
エイトは隣に居たククールに訊いた。
「んなことしたら魔法の鏡を手に入れられねぇだろ。我慢するしかねぇよ」
「悔しいでがす……。エルニスとかいう王女さん負けちまうんでないでがすか?」
「仕方がないよ。残念だけど、あの娘には諦めて貰うしかないんだ……」
本音を言うと、エイトは今、このバザーで沢山の人が居る前でチャゴスの不正を公にしたい。
しかし、その様なことをすれば、色々難癖を付けられて鏡を手に入れられなくなる。
ここは我慢するしか無いのであろう。
「ん?エイト!」
遠くの方からサフィラが手を振っている。
ゼシカとミーティアも居た。
「あの糞王子が何の不正をした?」
サフィラが不快感を露わにした表情で三人に訊いた。
どうやらサフィラの人一倍良い耳が先程の会話を聞き取っていたようだ。
「闇商人らしき男から散々人を振り回して手に入れたアルゴンハートより大きいアルゴンハートを買い取ってた。多分エルニス王女は負けちゃうんじゃないかな」
エイトは顔をしかめて言った。
「もうどうしようも無いわね……。そういうの人間の屑って言うのよね。ドルマゲスの二番目にタチ悪いわ」
「…………」
ゼシカは隣にその《人間の屑》の婚約者が居るのにも関わらず思ったことをズカズカと言う。
「ゼシカは容赦がないね……。でも私もその意見に同意するよ。あの王子が国王になったら我を崇めよとか言いかねないし。そもそもあの王子が一国を纏めるのは無理だと思うなぁ」
「王ってそんなに大変なんでがすか?」
「そりゃあもう。最近はマスタードラゴンに時空の守護者とかいう役職?に着かされているから仕事は私の次に位の高い魔族に押しつけているけど本当に大変なんだよ?」
「すげー……今一息で言ったよな?」
ククールは別の部分に驚いている。
内容はどうでも良いようだ。
「時間無駄だから早くチャゴス王子の不正がばれる前に早く鏡を受け取りに行こう」

エイト達が無駄話をしている頃。
城ではチャゴスとエルニスが王と城の者達にアルゴンハートを見せようとしていた。
エルニスはアルゴリザードと戦ったときの服は既に脱ぎ、結ったりとしたドレスを身に纏っていた。
よく見ると手や足に包帯がチラリと覗いている。
城にエイトの様に回復呪文を使える者が居ないのか包帯で一応手当をした、といった感じだ。
二人の前にはアルゴンハートが載せられた台に布がかかっている。
「では、チャゴス王子。エルニス王女。我らに持ち帰ったアルゴンハートをお見せ下さい」
二人は台の上の布を取る。
「おお!なんて大きさだ!」
めがねを掛けた男が感嘆の声を上げる。
二人の前にあるアルゴンハート。
エルニスの物もかなりの大きさであったが、やはりチャゴスが闇商人から買い取った物の方が勝っていた。
「これほどの物は見たことが無いわ」
「チャゴス王子のアルゴンハート、歴代の王が持ち帰った物の中で一番大きいんじゃない?」
「あれだけの大きさだ。双方かなり大きいアルゴリザードだったに違いない」
中にはチャゴスよりエルニスの物が小さかったことを心の底から残念がっている者達も居た。
「そんな……エルニス様が………」
「エルニス様も所詮女だったって事か……」
その言葉を聞き、エルニスは拳を握りしめる。
悔しいという気持ちが胸の中に延々と回る。
「儀式の勝者はチャゴス・サザンビーク!ささ、チャゴス王子。貴方の勇気と力の証たるアルゴンハートをクラビウス王にお納め下さい」
「いや、その必要は無い」
クラビウスは傍らにいた大臣の言葉を遮る。
「チャゴスよ。これはお前が倒したリザードから得た物であると神に誓えるであろうな?」
「……?お父様、どういう意味でしょうか?」
父の真意が分からないエルニスは堪らず訊く。
「エルニス。黙っていろ。儂はチャゴスに訊いているのだ」
「……はい」
エルニスは素直に引き下がる。
「……チャゴス。答えろ」
「も、もちろんです父上」
チャゴスは少し怯んで答えた。
「仮に協力者が居たとしてもお前が戦ってこれを手に入れたのであれば、儂はお前の力を認めるだろう。だがそれ以外の方法で手に入れたのであれば儂はお前を認めん。今一度問う。戦って得たのだな?」
「は、はい。その通りです!これは僕が戦って勝ち取った物です!」
クラビウスはそれを聞き、表情を緩めた。
少しばかり、その表情に悲哀が隠っていることを気づく者はエルニス以外誰も居なかった。
「……そうか。大儀であった。半刻後に後継者を城下町の者に伝える。……準備をしていろ」
クラビウスはそれだけ言って王の間へと歩いていく。
「お父様……?」
エルニスは少しばかりクラビウスの言動を不審に思った。
そしてしばし考えた後、その考えに辿り着いた。
「(……まさか兄様、不正した…………?)」