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ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第82話  ( No.158 )
日時: 2012/12/27 14:05
名前: フレア (ID: 8APypGif)

「エイトさん!」
「エルニス王女!?どうしたんですか?」
エルニスは城へ向かう途中のエイト達の元に走ってきた。
ドレスが若干はだけていたが、エルニスはそんなことは気にも留めずにエイトに問うた。
「お父様の様子が変!兄様に変な質問を投げかけてた!兄様何した!?」
エイトはエルニスから目を逸らす。
ここで言ってしまったら魔法の鏡が手に入らなくなってしまうかもしれない。
ここは何とか乗り切らなければ……。
「君の兄は闇商人から大きなアルゴンハートを買い取ってた」
「ちょっとサフィラ!」
ヤンガスはどうでも良さそうに鼻をほじり、ゼシカは溜息を吐き、ククールは頭を押さえ、ミーティアはうつむく。
「そう……やっぱり」
エルニスは悲しげな笑みを浮かべた。
そういえば、初めてこの少女の《表情》を見るような気がする。
ここまでエルニスは感情というものを見せなかった。
なぜなのかは知らないが……。
「あの……」
「心配しないで。お父様には内緒でその鏡とやらはあげる。本当の事を言ってくれてありがと」
そこまで言うとエルニスの表情はまた消えた。
「何で鏡の事を……?」
「私は鏡、取ってくる。貴方達、ここで待っていて」
エルニスはエイトの質問を遮り、城へと向かう。
エイトはエルニスの背中を見やりながら呟いた。
「何か懐かしいような気がする……。この国も、国王も、あの娘も……」
「ここに来たことあるんでがすか?」
ヤンガスの問いにエイトはいや、と首を振る。
「でも……何か、懐かしいんだ………」

十分後、エルニスが戻ってきた。
手には燃えるように赤く、透き通ったルビー装飾の施された鏡が抱えられていた。
「お父様には秘密。誰にも言わない。私が怒られるから」
エルニスは人差し指を唇の前に立てた。
「ありがとうございます」
エイトは頭を下げる。
一番エルニスから近くに居たサフィラがそれを受け取ろうとする、が。
「痛っ!」
軽く電撃が体内を駆けめぐり、慌てて鏡から手を放した。
「どうした?大丈夫?」
エイトは心配そうにサフィラを見る。
「あー……うん。エイトが受け取って」
言われた通りにエイトが鏡を受け取る。
今回は何も起こらなかった。
「それから、その鏡、元々闇の島の遺跡にあった物。私達の先祖が勝手に持ってきたみたい。名は太陽の鏡」
「ん?ってことはあの結界はドルマゲスが張ったんじゃないのか?」
エルニスの言葉にククールは頭を傾げる。
「ドルマゲスが誰なのか知らないけど、闇の遺跡は元々は邪教の聖地で、普通の人間が入れないように結界を張っていた。太陽の鏡はその遺跡の闇を晴らす物。元有った場所に置けばその力は発揮される」
「なぜ貴方がそれを……」
「分からない。自然に覚えてた。多分私はここで貴方達にこれを渡す運命……というのはおかしいけど、だったのかもしれない。そろそろ時間。私、城に帰る。……頑張って。我が王家の血を引く者、魔族の王、そしてトロデーンの姫君」
「我が王家の血を引く者……?」
サフィラ達を少し笑みを浮かべ、見てからエルニスは城へと走っていった。
色々な謎を残して。
「結局エルニス王女は謎だらけですね……なぜ私とサフィラさんの事を分かったのでしょう……」
「サザンビークの血を引く者って……」
「何かの間違えだと思うわよ」
「そんなことより早く遺跡に行こうぜ」
「うん、そうだね」
「兄貴、ルーラをお願いしやす」
「ちょっと待って」
ルーラを唱えようとしたエイトにサフィラは制止を掛けた。
「トロデ王を忘れてる」
「あ……」
「そういえばお父様……」
娘、ミーティアにも忘れられたトロデはかわいそすぎる。
……この者達がこうしていられるのも今の内だ。
ドルマゲスと戦うとき、命を、全てを賭けて戦わねばならない。
サフィラ達はまだ知らない。
ドルマゲスはドルマゲスと修道院で対峙した時より、遙かに人間の能力を超えた、《化物》となっていることを。


第9章 完