二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第83話 ( No.159 )
- 日時: 2012/12/27 14:58
- 名前: フレア (ID: 8APypGif)
トロデと合流して闇の遺跡にやってきたサフィラ達。
「太陽の鏡の元有った場所は……」
「ここ、とか?」
サフィラが指差した方向には、祭壇。
よくよく見てみるとくぼみがあった。
丁度鏡と同じ大きさのくぼみだ。
「私が試しにやってみるよ。貸して」
「う……うん」
サフィラが伸ばした手に鏡を載せると同時に。
「痛っ!」
まただ。
また、電撃が走った。
サフィラは手を押さえ、太陽の鏡は足下に落ちる。
ある程度衝撃に強いのか鏡は割れなかった。
「何で……」
サフィラは手を押さえながら落ちた鏡を見る。
本人は気づいていないようだが、うっすらと手の甲に重なった二つの剣の紋章が現れた。
「サフィラ、それ……」
「え?」
指を指され、手の甲を見るサフィラ。
しかし紋章は消えていた。
「もしかしたら、太陽の鏡は魔族が触れると拒絶されるのかもしれませんね……」
ミーティアはなるべくサフィラを傷つけないように控えめに言う。
「なるほど……」
エイトは落ちた鏡を拾い上げ、くぼみに填める。
ごごごごごっ!!
地面が揺れる。
どうやら正解みたいだ。
「みんな、端に寄って!」
サフィラが言い、全員が言う通りにした後、太陽の鏡が輝きだし、入口の闇を貫く。
そして、一瞬静まり、遺跡の内部から光が溢れ、そして止んだ。
「消えた……」
あまりの光景にサフィラはそれ位の事しか言えなかった。
入口の闇の結界は消えていた。
太陽の鏡はその名に恥じぬ働きをしてくれた。
「ついに……ドルマゲスとの決戦の時が来たようじゃな」
トロデが遺跡を見、言う。
「思えば長い旅路じゃった……。今となっては苦難の道のりも懐かしく思えるわい……」
いや、あんたは殆ど何もやってないだろ!とか野暮なことは誰も言わない。
「儂はお前達の勝利を信じ、ここで待っているからな」
サフィラ達はトロデに向かって頷く。
「必ずやドルマゲスを倒し、城の者達の呪いを解いて見せます」
エイトは言い、入口へと入っていった。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第84話 ( No.160 )
- 日時: 2012/12/27 15:58
- 名前: フレア (ID: 8APypGif)
エルニスが言っていたかつて邪教の聖地というのは本当らしい。
現に、遺跡を彷徨い歩いている魂が
「ラプソーン様……」
とか誰かを讃えているのだから。
「可哀想……。未だにこの世に縛られているのか……」
サフィラはその魂を見て、哀れむ。
そして静かに呪文を唱えた。
「……魂は天へ、肉体は土へと還れ。この者に冥福を。トヘロス」
青白い光が魂を包み、それは消えた。
「……この遺跡は気分が悪くなる」
「そうだね。何か粘ついた邪悪な魔力が漂っているし……」
魔物は出てこない。
太陽の鏡で焼き尽くされたのだろうか。
実態の持たない霊だけが残っていると考えれば辻褄が合う。
「………」
緊張していた。
この状況でしない方がおかしい。
ただ黙って進んでいく。
この張りつめた空気を我慢できなくなったのかヤンガスが口を開いた。
「ドルマゲスがここに閉じこもっている理由ってなんでがすかねぇ」
「カミさんと待ち合わせしてるとか?」
答えたのはククールだ。
本人は真面目に答えたらしく、表情が物語っている。
「奴が妻帯者だったとは!?な、なんでがしょう……この劣等感は……」
「いや、違うと思うよ……」
サフィラは少し退き気味に言った。
「ふざけるのはよして!奴がここに隠ったのは暗い場所が好きだからよ、絶対」
「そこで断言しちゃうんだ……」
「ドルマゲスはモグラかよ……」
サフィラとククールが呆れたように言う。
ヤンガスの疑問から先程より和やかなムードになったが、ただ一人、黙々と歩く者が居た。
「エイト!」
「わっ!」
いきなり背中を叩かれ、エイトは危うく転びそうになる。
「ミーティア……」
「気持ちは分かりますがもう少し力を抜いた方が良いですよ?」
そう言って笑いかけるミーティア。
「うん……」
なぜかほんの少し、気が楽になったような気がした。
「もしドルマゲスが土下座して謝ってきたらどうしやす?」
ヤンガスはなおもおかしな質問を仲間達に投げかける。
「そっそれは問題だな。俺だって騎士の端くれだ。無抵抗の敵に手を上げるのは騎士道に反するしな」
またも真面目に答えるククール。
「何が騎士道よ。バッカじゃないの?」
「ゼシカ……騎士の生き方、全否定しちゃうんだ……。確かにククール仲間になる前は酒場とか平気で行ってたけど……」
またも退き気味でサフィラは言う。
「もしドルマゲスが無抵抗なら、奴を挑発して攻撃させればいいのよ。だったら問題ないでしょ。フン!」
「こえー。ゼシカこえーよー」
「何が何でもドルマゲスを殺したいんだね……」
「敵討ちの事になると人が変わるでげすな」
そんな仲間達の様子を見てくすりと笑うエイトとミーティア。
「……絶対、負けませんよ。みんなの、未来の為にも」
小さなミーティアの呟きが、エイトの耳に届いた。
ミーティアの瞳には揺るがない信念があった。
本音を言うと、エイトは怖かった。
ドルマゲスと対峙して、自分達は負けてしまうのではないか、と。
だが、その不安も無くなった、訳ではないが少し軽くなった。
この愉快で、それでいて頼もしい仲間達が共にいるのならば、ドルマゲスにだってきっと勝てる。
きっと……。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第85話 ( No.161 )
- 日時: 2012/12/28 10:41
- 名前: フレア (ID: A0pjLufI)
魔物達が人間を虐殺している壁画が刻まれた大部屋に、そいつは居た。
魔法陣の中心に片膝を付いているドルマゲスは、サフィラ達に気づき、顔を上げる。
「おやおや……。こんな所までやってくる者がいようとは……。なるほど。この私を倒し、主の呪いを解きにきたのですか」
そこまで言うとドルマゲスはまたあの不気味な笑いを口から漏らす。
「くっくっく……見上げた忠誠心だ……。しかし今の私には迷惑極まりない!身に余る魔力に身体が耐えきれなくなったのでここでこうして癒していたのに……。これも絶大な力を手に入れた代償なのでしょうかねぇ……」
ドルマゲスは立ち上がり、魔法陣から出た。
粘ついた殺気と邪悪な魔力が一気に溢れ出す。
「御託はいい。トロデーン城の人々を茨に封じ込めた罪……、ゼシカの兄ちゃん殺した罪……、院長さんを殺した罪、命で償って貰う!」
サフィラが剣を抜き、後ろにいた仲間達も構える。
「……まあいいでしょう。けれど……悲しい。悲しいなぁ。だって折角こんな所まで来たというのにその願いも叶わぬままに……みんな私に殺されてしまうのですから!!」
言葉と同時に杖から放たれた無数の茨が、六人に襲いかかる。
「させませんっ!」
ミーティアがいつの間に巨大な鎌を振り回して茨を引き裂いた。
「おやおや……たしか貴方はトロデーンの姫君……。私が呪いを掛けたはず……」
少々驚いた顔をするドルマゲス。
「よそ見してんじゃないわよ!メラミ!!」
「ベギラマ!!」
ゼシカとククールの連携技。
上空からの火球と地面からの業火がドルマゲスを容赦なく襲う。
詠唱無しで唱えたのはドルマゲスに隙を与えない為だ。
本来詠唱は呪文の効果を高めるものだが、ドルマゲスを相手取っている今はそんなもの使う余裕は無い。
「蒼天魔斬!!」
ヤンガスはドルマゲスに青い光を帯びた斧を叩き付ける。
「ギガスラッシュっっっ!!」
光を纏ったエイトの剣が、ドルマゲスを薙ぐ。
「とどめ!はぁぁぁぁっっ!!」
きぃんっ!!
サフィラがドルマゲスに振り下ろした剣は、杖に受け止められていた。
「まさか……生きてる?」
あれほど喰らって生きているとは、信じられなかった。
そして、それと共に胸を過ぎるのは不安と恐怖。
「魔族の王。貴方はなぜ強大な力があるのにもかかわらず、仲間などという《足枷》と共に行動しているのですか?《利用》するのならばもっと強い方がいいと思うのですが」
ドルマゲスの唐突なサフィラへの質問。
「足枷……?みんなは私の大切な仲間なんだ!!私なんていつも助けて貰ってる!!みんなを足手纏いみたいに言うな!!それに……!私は《利用》しているのではなく、私が魔王だって信じてくれて、それでいて恐れない仲間がずっと欲しかったんだ!!」
ドルマゲスの表情から笑みが消えた。
「つまらないですね……」
ドルマゲスが杖を振り払う動作をすると、サフィラはいとも簡単に壁に叩き付けられる。
「うぅ……」
全身の骨が折れたような感覚がした。
必死に起きあがろうとするが、身体が言うことを聞かない。
「もう少し私が面白くしてあげましょうかね……」
ドルマゲスの手から放たれたのは……杖。
「あああっ!!」
「サフィラ!」
それはサフィラの胸に突き刺さり、血のように紅い光が広がる。
ドルマゲスが招くような動作をすると、杖がドルマゲスの手に戻る。
「サフィラ……?」
「姐さん!?」
「おい!まじかよ!」
「返事して!」
「サフィラ!!」
ドルマゲスそっちのけで駆け寄る仲間達。
……刹那。
ぎぃんっ!!
不快な金属音が、部屋に響く。
「ちょっ……危ない!」
ミーティアの首筋に襲いかかろうとしたのは隼の剣。
エイトが間一髪それを剣で受け止めた。
「サフィラ………?」
様子が明らかに変だ。
サフィラは無表情で、ルビーの様な眼には輝きが無かった。
「少々貴方達の大切な仲間を操らせて頂きますよ?この非力な王が護りたかった大切な仲間を自らの手で殺め、私がこれを解いたら魔族の王はどんな表情を浮かべますかねぇ………」
「そんな……!」
再び剣の刃は仲間に襲いかかる。
的確に、急所を狙って。
やらなければこちらが殺られてしまう。
しかたなく、サフィラを傷つけないように襲いかかる剣を武器で弾き、当て身で眠らせようと隙を窺うが、一切隙の無い。
「サフィラ……!サフィラ!!」
剣を払いながら必死にエイトは呼びかけるが返事はない。
その紅の瞳には、何も映ってはいなかった。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第86話 ( No.162 )
- 日時: 2012/12/28 11:47
- 名前: フレア (ID: A0pjLufI)
サフィラの意識はあった。
暗い闇の中にサフィラは佇み、自分の剣を必死に受け止めるエイトを眺める。
はらわたが煮えくり返るような想いだった。
自分を操っているドルマゲスへの怒りではなく、いとも簡単に操られ、仲間達を傷つけようとする自分自身への怒り。
これじゃあ人間を護るどころか仲間すら護れていない……。
私が想っていたのはこの程度だったの?
あの時の誓いは……。
『その程度だったんだよ』
魔王としての、もう一人の自分の声。
暗い闇の中からサフィラに瓜二つの少女が現れる。
『僕は心のどこかでまだ人間を疑っていた。所詮人間なんて愚かな生き物。護る価値なんて無いのさ』
「違う!確かに人間は愚かな生き物だけど、暖かい心だって持っている!」
『相変わらず頑固だなぁ。まあ僕も人のことは言えないけど』
魔王としてのサフィラはけらけらと笑う。
『……仲間達を救いたいんだったら僕に身を委ねてよ。僕なら君の身体を存分に生かせる』
もう一人のサフィラは手を差し伸べる。
「……君は何が目的なんだ?」
『何疑ってんの?だって君が精神崩壊したら僕だって消えるし困るもん』
真顔で魔王としてのサフィラは言った。
「信用出来ない」
『そっかぁ。僕も信用ないなー』
さほど残念じゃなさそうに魔王としてのサフィラは頭の後ろに腕を組む。
『ほら。仲間死んじゃうぜー?』
サフィラ本人が見てみると、満身創痍の仲間達が。
それをイオナズンでとどめを刺そうとしている自分。
「あっ……!!」
『まじで仲間死んじゃうな。早く……』
サフィラは差し伸べられた手を握る。
そして……。
「サフィラ……?」
エイトは困惑していた。
目の前のサフィラが身につけている黄金の腕輪が輝き、彼女を闇の光で包んだからだ。
そして、その光が晴れた時には彼女は手に禍々しくも美しい剣、身体には漆黒の鎧を纏っていた。
「あー、何とか間に合ったみたいだなー」
とどめを刺そうと掌に集結していた光が、すぅと消える。
「サフィラ……?」
「あー。糞重いな胸が。あの野郎よく耐えてんなー」
サフィラの、普通なら発しない言葉に仲間達の目は点になった。
「なっ……操れないだと……?」
ドルマゲスも動揺していた。
『ちっ。先に僕を妨害しに来たかあの兄貴。邪魔さえ入らなければ今頃サフィラの身体を乗っ取れたのになー』
「ちょっ、やっぱ乗っ取るつもりだったんだ!」
暗闇の中で未だ会話をしているサフィラ達。
「でも何で兄ちゃんが……?」
『さーな』
「サティラでも知らないの!?」
『お、初めて僕を名前で呼んでくれたじゃん』
「うるさい!」
挑発するようににやけるもう一人のサフィラことサティラと、少し照れて顔を赤くしているサフィラ。
『兄貴って人の身体に干渉することが出来るけど、そんな異世界の人間にまで出来るほど魔力あったっけな』
「さぁ……」
サティラの言葉にサフィラは首を傾げた。
空気が変わった。
圧倒的な魔力に反応してか、部屋の空気がピンと張りつめる。
サフィラの纏う空気が明らかに違う。
サフィラの姿をした、サフィラではない人物だ。
「ほら、テメーら立て。ドルマゲスを倒すんだろ?」
サフィラの姿をした者は最大回復呪文、ベホマズンを唱えた。
仲間達の、切り傷や打撲、骨折した箇所まで全ての傷を癒した。
「あの……貴方は………」
エイトが訊く。
「俺か?俺はロウェン・ラズルシェーナ。サフィラの兄だ」
ロウェン、と名乗ったその者は、不敵な笑みを浮かべた。