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ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第87話  ( No.164 )
日時: 2013/04/06 09:11
名前: フレア (ID: nA.Y1kcV)

ロウェンは握りしめている剣を振るう。
ドガガガガッッッッ!!
間一髪、ドルマゲスが避けた。
壁が破壊され、土煙が舞う。
驚くことに、ロウェンはその場に居ながらそれを破壊した。
真空波というやつだ。
「くっ……面倒だがどうやら全力を出さなければならないようだな」
ドルマゲスが持っている杖が不気味に輝く。
「何……?」
エイトは少し身を引き締める。
ドルマゲスは黒い靄に包まれ……
怪鳥のような、青い魔人の姿となった。
手元から杖は消えていた。
「あっひゃ!あっひゃ!あーっひゃひゃひゃひゃひゃ!」
エイト達はその笑い声に、背筋が凍る。
「この虫螻共め!二度とうろちょろ出来ないようバラバラに引き裂いてくれるわっ!!」
「ふん……。じゃあ俺も本気を出さないとなー」
唯一ロウェンだけは動じなかった。
剣が青い炎を上げる。
その直後、ロウェンが地を蹴った。
高く跳躍し、ドルマゲスに斬りかかる。
ドルマゲスは翼を動かし、宙へ逃れる。
「ククール!私達もやるわよ!」
「応!」
ゼシカとククールは頷き、唱えた。
「「メドローア!!」」
炎の宝玉と氷の刃は確かにドルマゲスに命中した。
不意をつかれ、ドルマゲスは無様に地面に落ちる。
「森羅万象斬!」
ヤンガスが振り上げた斧の周りに紋章が刻まれ、斧は炎を上げてドルマゲスを叩き付ける。
「はぁっ!」
ミーティアは思いっきり鎌を投げる。
鎌はドルマゲスの翼を斬り、弧を描いて手元に戻った。
「貴様らぁぁぁっ!」
地獄の底からのような声にもう彼らは躊躇しない。
ドルマゲスの唱えた最強氷呪文のマヒャドの刃はロウェンに襲いかかる。
宙へ逃れたロウェンは身体を捻りながらかわす。
その姿は、さながら人魚のように美しい。
「な……かわした、だと?」
「俺はサフィラほど甘くはないんでな。容赦はしないぜ……?」
ロウェンの掌には光が集う。
「4練イオナズン!!」
爆破呪文はドルマゲスの体制を崩した。
「エイト!」
ロウェンが叫んだ。
「全てを終わらせろ!テメー自身の手で!!」
その言葉に、コクリと頷いてから剣を構え、ドルマゲスへと一直線に走った。
剣に光が帯び始める。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
エイトは剣を振り下ろした。
ゼシカの悲しみ、ククールの怒り、そして何よりトロデやトロデーンの人々の苦しみを刃に載せて。
「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!」
絹を引き裂いたような叫びが、遺跡中に響き渡った。
「……にはまだ足りぬぅっ…………」
ドルマゲスは血を吐きながら呻いた。
「……こんな場所で………朽ち果てるわけにはぁ………」
ドルマゲスの身体は灰と化し、崩れ落ちた。
その中心には杖が横たわっていた。
「やった………?」
「……ええ。やったみたいです………」
信じられないような表情をしていたエイト達は、すぐに笑みを浮かべた。
「兄貴!やったでがすよ!あっし達、遂にドルマゲスを倒したでがす!」
「これで晴れて自由の身ってわけだな」
「兄さん……!私、兄さんの敵を討てたよ……!」
「これでお父様も……!」
「うん。トロデーンの国民達も茨から解き放たれただろうね」
「おーい!!」
どこからか、声が聞こえてきた。
あの聞き慣れた、トロデ王の声だ。
「おっさん!遂に人間の姿に戻ったでがすな!!」
しかし出てきたのは相変わらず緑が眩しいトロデ王。
「お父様……?呪いは解けたはずでは……?」
「何を言っておるんじゃ?ミーティア。冗談を言うでない」
「冗談じゃなくて俺達はドルマゲスを倒したんだ。奴が死ねばあんたの呪いは解けるって……」
エイトの胸に、小さな不安が過ぎった。
バタッ
その時、何かが倒れる音がした。
音がした方を見ると、ロウェンが……。
「ロウェンさん!?」
慌てて抱きかかえると、それはもういつもの少女へと戻っていた。
今はすぅ……と寝息を立てている。
剣と鎧もいつも身につけている物に戻っていた。
「結局……あの人は誰だったんだろう……?」
「サフィラの兄だって言っていましたが……」
「何を言っておるんじゃ?お主ら」
「早くここからでやしょうや」
ヤンガスに言われ、エイトがリレミトを唱えようとする。
「あ!杖を忘れていた!」
「杖ってこれのことかな?」
ゼシカがドルマゲスの居た場所に横たわっている杖を拾い上げる。
「おお、それじゃ!その杖じゃ!」
「じゃあみんな、行くよ。リレミト!!」

「ふぅん……。まさかあの道化師を倒しちゃうなんてなー」
一部始終を陰から見ていた者達がいた。
二人の陰は先程までドルマゲスだった灰を見下ろす。
「ドルマゲスを買い被り過ぎていたのかな?」
「いえ……。あの者達のまぐれだと私は思います」
「そうかもね。でもドルマゲスが破れたところで何も変わらない。もう時の歯車は動き始めたんだ。全てを闇へと葬るまでもう止まらない……」
その声の主は、中性的な顔立ちの10歳位の子供だった。
そしてその子供に敬語で話しているのはまだ少女のあどけなさを残した娘。
「……次はあの女だ」
「左様でございますね。魔王様」
少年は壁画へと振り返った。
「もう少しです……。もう少しでこの世界を我々のものに……」
少年は残虐な笑みを浮かべ、言った。
「暗黒神ラプソーン様」

サフィラ達はサザンビークの宿屋に泊まった。
もうエイトの残りの魔力が残り少なく、近くにしかルーラ出来なかったからだ。
そして朝……。
「大変です皆さん!!」
エイト、ヤンガス、ククールはミーティアのけたたましい叫び声で目覚めた。
男と女で部屋を分けているからドアを思い切り開けてミーティアは入ってきた。
「ゼシカさんがいないのです!!」


やっとの想いで倒したドルマゲス──しかし呪いは解けなかった。

ドルマゲスを共に倒してくれたロウェンと名乗る者は?

戦いを傍観していた二人は何者なのか?

──そしてゼシカの失踪。

空白だらけの解けないパズル。

そのピースが集う日は来るのだろうか。

そして……彼らの旅の終わりは──


第9章 完