二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第88話 ( No.165 )
- 日時: 2013/01/07 09:50
- 名前: フレア (ID: 5lF/2wvj)
「ゼシカー!!いるんなら返事してー!」
エイト達は宿の中にゼシカがいないか確認していた。
ちなみにエイトは女性陣が泊まっていた部屋を調べている。
まさか……と思いつつベッドの下とかクローゼットの中とか調べるが、もちろん居るわけがない。
そして風呂場のドアへと手を掛ける。
「………………」
居た。
「………………」
浴槽に浸かっているサフィラが。
「………………」
何とも言えない沈黙が降り、双方言葉を発せないまま顔を徐々に朱色に変化させていく。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
サフィラの悲鳴と共に放たれたのは手近な場所にあった桶。
「あっ…………………」
それは見事に顔面に当たり、エイトは小さく悲鳴を漏らすと倒れ、気を失った。
「サフィラ!?どうなさいまし……え?」
サフィラの悲鳴を聞きつけ、部屋の入口からミーティアは顔を覗かせる。
浴槽に浸かっているサフィラと入口に倒れているエイト、そしてエイトの近くに転がっている桶を見るとすぐ状況は分かった。
「どうしたんでがすか!?」
「サフィラの悲鳴が聞こえたんだが……」
悲鳴を聞きつけたヤンガス、ククールも駆けつける。
「あ、ちょっと!」
ミーティアは慌ててドアを閉める。
「えっと……ゼシカは見つかりました?」
ミーティアは無理に笑いを作って全く別の質問を投げかける。
ヤンガスとククールは顔を見合わせると、言った。
「どこにも居なかったでがす……」
「あ、でも一つ収穫はあった。宿屋の女将に訊いてみたところ、杖を持ったゼシカがリブルアーチに行くって言っていたらしい」
「ごめんなさい。不可抗力だったんです………」
「……………………」
五人は泊まった宿の個室に集まっていた。
エイトはひたすらサフィラに謝っている。
サフィラは鎧の下に着るインナーのみ着ていてエイトをどぎまぎさせるがそうも言ってられない。
当のサフィラは若干目を潤んでいる様な気がする。
今「くすっ……女の子らしいね」なんて言ったら今度は気絶させられるどころか三途の川のほとりに立つはめになりそうな雰囲気だ。
「サフィラの気持ちも分かりますが、今はゼシカを探すことが先決ですよ?」
ミーティアはサフィラをたしなめる。
「……何でゼシカはリブルアーチに………?」
ククールは一人で何やらぶつぶつ言っている。
「……何が目的なんだ?それに何で杖を……」
「分からない」
急にククールに言ったのはサフィラだ。
「……ドルマゲスを倒したとき、時空の扉は閉まらなかった。そしてあの杖……。……何か嫌な予感がする」
ひたすら謝罪の言葉を言っている……というか、もうそれはサフィラに対する謝罪と言うより自分に対する呪詛に近い……エイトから視線を外す。
「それって……何か別のものに原因があるということですか?」
「ご名答。時空の扉は強大で邪悪な力に反応して開いちゃうんだ。原因がドルマゲスでないとすると……」
部屋に沈黙が降りる。
「……考えていても埒があかないでがす!!取り敢えずそのリブルアーチにいきやしょう!!」
「……うん。そうだね」
ヤンガスの意見に四人は頷く。
「エイト、リブルアーチの場所は?」
サフィラはもう先程の怒りは消えているのかエイトにいつもの調子で尋ねる。
「えっと……王家の山から北西に進んでいくとリブルアーチの関所があって……そこから後は一本道だね」
エイトは地図を見ながら答える。
「じゃあみんな!早く支度を調えて行くよ!」
数分後、五人は宿の朝食も食べずに急いでサザンビークを出た。
「何……?ゼシカが失踪したと……?」
トロデはもちろん驚愕した。
「しかも家宝の杖まで持って行ってしまったと……」
「うん。まあ取り敢えずリブルアーチに行こう。ゼシカはそこに居るはずだから」
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第89話 ( No.166 )
- 日時: 2013/01/19 13:14
- 名前: フレア (ID: S34N07sC)
一行は王家の山へルーラし、麓の当たりから北西へ進んでいく。
「というか、ヤンガスはともかくククールは敵は取れたんだし同行しなくてもいいんだけど……」
サフィラはククールが目障りだからではなく、気遣っているからこそその言葉だった。
「敵討ちが済めば俺は一人で旅に出るつもりだったんだが……。やっぱりゼシカの事は心配だしな。……なぜだか俺もサフィラと同じように悪い予感しかしねぇんだ」
「そうですね……。なんでしょうこの、胸に広がるモヤモヤ感は……」
悪い予感、というのは他のエイト、ヤンガス、トロデも同様だった。
「…………!」
タスケテ……!
不意にそんな声がサフィラの耳に届いた。
当たりを見回してみるが、誰もいない。
「………っ!みんな!ここで待ってて!!」
言うが早いか、サフィラは駆けだした。
「サフィラ!?……ったくあの娘は!」
エイトもサフィラを走り、追いかける。
「どうしたんでしょう姐さん……」
「私達は待っていた方がいいようですね。入れ違いになったら困るので」
「ピキィ……」
多くの冒険者に狙われるメタルスライム。
銀色で水滴状の体にグミ状の物質を持ち、大きな丸い目と笑っているかのようなU字型の口を持つ。
その魔物が狙われる理由……それはメタルスライムが死ぬとメタルスライム自身の体が希少な鉱石になるからだ。
今もそのメタルスライムは冒険者に追いつめられ、瀕死の重体を追っていた。
しかもすぐ後ろは崖でもう逃げる場所は無い。
「ふん……手こずらせやがって」
やたらと肥った男は剣をメタルスライムの頭上に上げる。
メタルスライムも観念したのかもう動かない。
「しっかしこのメタルスライムはいくらになるんでしょうかねぇ」
髭面の男は肥った男に訊く。
「さあな。でもまぁ大金になることは間違えないだろう。喜べ!素早いことだけが能の役に立たないお前が俺様の役に立てるのだからな!」
肥った男は剣を振り下ろす。
ぎぃんっ!
金属音が響き、火花が散る。
「……何のつもりだ小娘」
「ふんっ……。自分より弱い者を苛めて何が楽しい」
サフィラは受け止めた剣を振り払う。
「希少価値のある鉱石になるからって人間が殺していいはず無いだろう。そういう人間の欲望や傲慢さが魔物達を変えてしまったんじゃないか………!」
その言葉には、静かな怒りと殺意が隠っていた。
「……貴様らがどうしてもこのメタルスライムを殺すというのならば私は貴様らを殺す。……さぁどうする?」
殺意が込められた言葉に、男達はびびっていた。
はったりなどではない。
この女は本気で言っている……!
「……くっ………!覚えてろよ!!」
肥った男が逃げ出す。
「あ、兄貴ぃっ!」
髭面の男も走り出し、その場はしぃんと静まった。
「……大丈夫?」
「ピキィ……………」
メタルスライムは弱々しい声を出す。
「サフィラ!急にどうしたの!?」
息を切らしてエイトはサフィラの元へ駆けてきた。
「この子の傷、癒してくれないかな?」
サフィラはメタルスライムを抱える。
そのメタルスライムは驚くほど軽く、軟らかかった。
「ん……?メタルスライム……?とっくに絶滅したと思ってたけど……」
エイトはメタルスライムに手をかざす。
淡い緑色の光が、メタルスライムの傷を癒した。
「ピキィッ!ピキィッ!」
メタルスライムはすぐに元気になり、サフィラの肩の上に自ら乗っかった。
「あ………」
メタルスライムの色は銀から青へと変わった。
「……?何……?」
サフィラは首を傾げる。
「メタルスライムって心を許せる相手が近くに居るとその色になるそうだよ」
エイトは昔読んだ本に書いてあった事を言う。
「え……?」
「ピキィッ!」
メタルスライムは肩の上で飛び跳ねる。
「……え?付いてきたい……?」
「ピキィ」
サフィラにはどうやら言葉が分かるらしい。
旅に付いていきたい、とメタルスライムは言っていたという。
「僕は別に構わないけど」
エイトは真顔で言った。
「本当に……危険な旅になるかもだけど……いい?」
メタルスライムは頷くように身体を動かす。
「君の名前は?」
「ピキー」
「メイルっていうんだ……」
エイトにはピキーとしか聞こえない。
当たり前だろう。
「じゃあメイル、よろしくね!」
「ピキーッ!」
メイルは嬉しそうに鳴き声を上げた。