二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶Ⅰ  ( No.181 )
日時: 2013/01/30 14:46
名前: フレア (ID: qoiSEBdw)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=23009

彼女は暗き洞窟の奥底に居た。
《運命の二人とその仲間達》をこの世から葬る為に。
彼女は泣いていた。
なぜ《人間》は罪も無い魔物を殺すのだろう、と。
そして誰に聞かせる訳でもなく呟いた。
「僕は人間を滅ぼす。たとえそれが《私》の意志で無くても……。たとえ、この身が滅びても」
ただ、彼女の胸には虚しさだけが在り続けた……。


早朝。
少女は森で俯せに倒れていた。
銀色の髪を背中に流し、とても美しく、その姿は《森の妖精》のようだ。
そのすぐ傍でメタルスライムが盛んに飛び跳ね、鳴いていた。
「ピキーッ!ピキーッ!」
しかし、彼女は一向に起きる気配は無い。
「……ピキ?」
メタルスライムは《人間》の気配を感じ、素早く彼女の長い髪の間に隠れた。
「…………?」
しばらくすると、少年が現れた。
赤いバンダナに、青いシャツ、そして黄色いコートで奇抜な服装だ。
背中に剣が有る事から冒険者なのだろう。
「…………!!」
メタルスライムは叫びそうになったが、辛うじて堪えた。
なぜなら、その少年は、彼を助けてくれた、エイトだったからだ……。
だが、彼は無闇に話しかけたりはしない。
何となく、少年が《エイト》であって《エイト》では無いと感じとったからだ。
流石、いくつもの死線を潜り抜けてきただけある。
「…………」
少年は少し不思議そうな顔をし、何かを考えてから彼女を抱きかかえた。
そして、少年は向かう。
彼の、仲間の元へと。


「……はぁ?《世界の理》?」
別の世界で、ククールが素っ頓狂な声を上げる。
「ゼシカの姉ちゃん、《理》ってなんでげすか?」
ヤンガスが隣に居たゼシカに訊いた。
「理って世界の決まり事みたいなものよ。で、何でいきなりそう言う事言うの、フレア?」
「もしかしてサフィラが消えた事に関係しているのかい?」
この世界の《エイト》は作者ことフレアに厳しい表情を向けた。
『あ……、うん。まぁ、そうだね』
「フレア、口調変わっていますよ」
腕組みをしてフレアのホログラムをジト目で見るミーティア。
実は、朝、ミーティア達が起きると、部屋にサフィラが居なかったのだ。
ついでに言うと、メイルも。
「というか、この世界に来るには《器》が無ければいけなかったんじゃないでしたっけ?」
『あー、先日のあさんにホログラムっていう便利なもんを教えていただきまして……って話がそれました』
フレアはコホンっと一つ咳払いをすると話を続けた。
『この世界の理が乱れた事によって、サフィラとメイルが消えたんです』
「ちょっと待て。何で決まり事が乱れんだよ?」
『原因は多分……私が獏を倒すために銃を持ち込んで撃ったからじゃないんですかねぇ……って皆さん目つき、怖いですよ?凄い殺気が伝わってくるのですが?』
「「「「原因はお前かぁぁっ!!」」」」
『やれやれです……。……あの時、本来なら出会うはずの無い者が出会ってしまった。私が徹夜で偽の情報を送らなかったらいくら、ウイルスのせいだとはいえ、マスドラにばれてたらえらいことになっていたんですよ。それに比べればサフィラとメイルが消えた事なんてあまりにも些事だと思いますが』
「些事……だって?」
エイトは怒りの形相でフレアの首元を掴む。
『ええ。まぁ、マスドラにばれてたら良くてサフィラという存在は抹消。悪くてこの世界は消えていたでしょうね。……この世界だけでなく、レーナさんも。それだけ《理》というものは重いのです』
「そんな……。どっちにしてもサフィラは消える運命だったというのか……?」
エイトは呆然とした様子でフレアから手を放した。
『まぁ、私もあの時軽はずみな事をしたんで責任が無いとは言い切れません』
フレアはエイトからくるりと背を向け、言った。
『……恐らく、彼女はどこか、別の世界に行ってしまったのかと。あの事件で理は綻び、何者かが別の理を植え付けることで運命を変えようとしているのだと思います』
「何者かがって……それは誰なの?」
『分かりません。ですが、大方サフィラを目障りだと思っている者に間違えないでしょう。私のパソコンがハッキングを受けて、色々情報が手に入れられないんです。恐らくその犯人……。奴の進入経路を辿っていき、犯人を押さえれば全て元通りになるはずです。……今度は完璧に隠蔽しますので……』
そして、エイト達の方を向いて、フレアは言った。
『恐らく、犯人はレーナさんの世界にいます』
「え……?」
『先程、犯人を追跡してみたのですが、逃げられてしまいました。しかし、細かいところまでは分かりませんでしたが、レーナさんの世界だと言うことだけ分かりました』
「じゃあ、早く僕らをレーナの世界に送ってよ!」
『無理です』
僅かな希望が見えてきたというのに、フレアはエイトの言ったことを却下する。
「何で……!」
『全員で行ったら流石に私も後始末出来なくなります』
「けれど……!」
『……一人だけならいいですよ。ミーティアさん。貴方がレーナさんの世界に行ってください』
「私が……?」
ミーティアは自分の事を指差し、尋ねる。
『はい。あちらではまだミーティアさんは馬ですし。まぁ、本来ならば呪いが解けるのはエンディングの時ですからね。若干の理の乱れはあるものの、大丈夫だと思います』
「では、早く私をあちらの世界に送って下さい。サフィラとメイルが心配なので」
『はい。では、これを渡しておきます』
フレアが差し出したのは携帯電話だ。
「大丈夫なんですか?理は」
『非常事態なんであーだこーだ言ってられないでしょう。では、行きますよ』
いつの間にやら、一つパソコンが置かれていた。
フレアはそれに向かい、キーボードを打つ。
『Transfer preparations……Ok!Transfer start!』
掛け声と同時に、ミーティアの足下に魔法陣が現れる。
「ミーティア、絶対無事で帰ってきてよ!」
エイトの言葉に、ミーティアは頷いて、そして碧い光と共に消えた。
ほうっとフレアが溜息を吐き、エイト達に振り返った。
『さて、貴方達にもやって貰う事があります。ただじっと待っている事なんて性に合わないでしょう?』

ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶Ⅱ  ( No.182 )
日時: 2013/01/30 14:44
名前: フレア (ID: qoiSEBdw)

「お、エイト。お前美人なねーちゃん気絶させて連れてくるなんて大胆な事するなぁ」
「……叩っ斬られたい?」
「いや、ホントすいません。頼むから明らかな殺気出すの止めてください」
エイトに睨み付けられたククールは速攻で謝った。
無論、ここはレーナ側の世界だ。
「レーナはまだ起きてないの?」
エイトは少女を地面に横たわらせてから仲間達に訊いた。
「ええ。何か時々悪夢を見ているのかうなされてるけど……」
朝食の用意をしていたゼシカは手を止めて言った。
彼らは今、野宿をしていて、2つテントを張って寝泊まりしていたといった状況だ。
トロデ&ミーティア(馬)も未だに寝ている。
「で、この姉ちゃん誰なんでゲスか?」
エイトはヤンガスの質問に顔をしかめた。
「それが分からないんだよ。眠気覚ましに森で散歩していたらこの娘が倒れていて……」
「へぇ……ってこの娘良く見たらエルフじゃない!?ほら、耳の辺りとか本で見たのとそっくり!」
「え……あっ!」
「本当でがすな……」
「エルフって童話の中だけだと思っていたが……」
「でもエルフって決まった訳じゃ……」
エイトは少し首を傾げる。
「確かにエルフは人目の付かない森の中とかに住んでいるって言うけど……」
「あっ!!サフィラ!?」
いきなり背後から声が聞こえて、少し四人はたじろぐ。
この世界の主人公、レーナだった。
「レーナ……いつの間にか起きていたんだ。この娘を知っているの?」
「知っているも何も……一緒にあの世界で戦ったんだもん!」
「この娘は何者なの?」
「サフィラ。……魔族とエルフの娘だよ。ほら、サフィラ起きて!!」
レーナはサフィラの身体を揺する。
「うぅ……」
サフィラは僅かに呻いて……やがて目を覚ました。
紅蓮の瞳が、戸惑いを映し出している。
「……?君達は……誰……?私は……?」
「はぁ……?」
エイトは前にも似たような感覚があったような……と記憶の糸を手繰り寄せる。
「……まさか記憶喪失?」
「みたいですね」
いつの間にか、エイトの隣には長い黒髪で、翡翠の瞳を持つ少女が立っていた。
エイトがよく知る、幼なじみが。
「ミーティア姫様!?」
エイト以外の仲間達も、みんな面食らったような顔をしている。
「え……っ!?何で!?」
未だに眠っている馬と目の前にいる少女を見比べる。
「私はこのサフィラの世界の者です。やはり色々ここまで来る途中に考えていましたが、《理》が主人公は記憶喪失になって別世界にトリップするというものに変更されているようですね」
「へ……?ちょっと姫様、どういう事が起こっているのか教えて下さい!」
ミーティアはエイトに向かって微笑んだ。
「分かりました。でもエイト。その呼び方と敬語はやめて下さい。堅苦しいのは苦手なので」


一方その頃。
サフィラ側の世界のエイト達。
『よし、いきますよ。アインス、ツヴァイ、ドライ♪』
ポンッ
宿屋の一室に機種様々なコンピューターが現れた。
『これからハッキングをした奴の出所を探ります』
「あー、ちょっといいか?」
『何ですか?ククール』
「ミーティア姫さんにあんな回りくどい事させなくて良かったんじゃないのか?それにレーナの世界にサフィラが居るのかも分からないんだし」
回りくどい、というのはわざわざこの世界の住人であるミーティアがやる必要は無かったのでは?ということだ。
『実は……ハッキングの影響でのあさんにメール送れないんですよ。そっちの世界にサフィラは居ないかって連絡を取り合うことも出来ないんです。だからどちらにせよミーティアを送るしかなかったんですよ。では、始めます』
フレアはパソコンの前に座ると、ふぅっと呼吸した。
そしてパソコンのキーボードを打ち始める。
『……I try real-time control by the multidimensional analysis……I analyze the log of all terminals.I investigate all the suspicious access before and after a concealed trace thoroughly…….皆さん、サポートをお願いします。不審と思われるログを全て吐き出すのでチェックをお願いします』
「うん、分かった……って出来るかぁぁぁっ!!」
エイトのノリつっこみが弾けた。
そして、他のパソコンを指差しながら続ける。
「何ちょっとかっこ付けたいからって英語言ってんの!?というか、僕ら全くパソコンの知識無いんだけど!」
「エイト!ここは四の五の言ってる場合じゃ無いわよ!」
「あっし全くパソコンは使えないんでげすが……」
「やるしかねーだろ。何もしないよりはマシだ」
「何ちょっとかっこいいこと言ってるのククール!?」
あーもう!と叫んでエイトもようやくパソコンの前に座る。
カタカタカタ……と無機質なキーボードの音で部屋は満たされる。
そして……。
「あった!不正アクセスポイントは見えざる魔神の地図Lv87だ!ここからアクセスしたらしい!」
四人は歓喜の声を上げる。
なぜパソコンの知識の無い彼らが見つけることが出来たのかはあまり深く考えないで欲しい。
「よし!フレア!早速ミーティアに連絡して!」