二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 Ⅳ ( No.199 )
- 日時: 2013/03/20 08:17
- 名前: フレア (ID: z9tQTgtp)
何度も何度も聞こえる断末魔。
勇敢に立ち向かい、返り討ちに遭って惨殺される男。
捕まり、羞恥に晒され死ぬ女。
子供を庇って死んだ夫婦。
それを泣きながら揺さぶる子供。
死体。死体。死体。死体。死体。死体。死体。死体。死体……。
数え切れないほどの人々が犠牲になった。
お願い……。
もうやめて……!
少女はその者に弱々しく懇願するが、返事は無い。
そして、次の瞬間には自身の胸に剣が刺さっていた。
「何で貴方達は…………………」
そして少女は事切れた。
「……………あああっ!!!」
レーナは勢いよく飛び起きた。
体中が汗ばんでいて、息が荒い。
「……さっきのは……………」
なぜだか分からないが、涙が頬を伝っていた。
「………………」
もう一度先程の夢を思い出そうとするが、どうも記憶がはっきりしない。
隣を見てみると、エイトが泣きそうな表情で座り込んでいた。
ミーティアも、ヤンガスも、ゼシカも、ククールも、メイルも。
ただ一人、まだ眠ったままだったサフィラは、苦しそうな表情で自身の鎧を掴んでいた。
相当な力で握っているのか、突起した部分が手に刺さり、血が流れる。
「サフィラ……!サフィラ……!!」
ミーティアがサフィラを揺する。
「うぅ…………」
サフィラが上半身だけ起きあがり、目を手で隠した。
目眩がするのか、はたまた泣いているのか。
「……心が………凄く、痛い……」
それは、レーナも同様だった。
そして同時に、先程の夢は何だったのだろうと考えた。
恐らくみんな同じ夢を見たのだろう。
誰かの強い思いが反映すると夢に出てくる事がある。
だが、だとしたら誰のものなのか?
「……みんな、取り敢えず考えるのはよそう」
エイトが顔をしかめて言った。
確かに今それを考えていても仕方がない。
まるで知ってはいけないことを知ってしまうような……そんな感じがした。
七人は立ち上がった。
キョロキョロと辺りを見回すと、空は晴れ渡っていて、周りは樹に囲まれていた。
『……もしもし?』
例のミーティアのスマホからフレアの声が聞こえてきた。
『どうやら無事に転送出来たみたいですね』
「……はい」
答えるミーティアの声は元気がない。
『……このダンジョンはテリーのワンダーランドと同じように井戸で移動……プッ。失礼。井戸で移動するように変更されているようです。つまり、井戸から落ちて次の階に行くように変更されていますね』
彼らの気持ちを知ってか知らずか、フレアは親父ギャグまで浴びせかけてきた。
「……はい」
『では、健闘を祈ります。それと……』
「はい?」
『……何があっても、仲間割れだけはしないように。以上』
「……え?それはどういう……あっ」
ミーティアが聞く前に、すでに電話は切れていた。
「……どういう事でしょう……」
彼らの胸には、次第に不安が広がっていった。
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 Ⅴ ( No.200 )
- 日時: 2013/03/20 08:16
- 名前: フレア (ID: z9tQTgtp)
例のフレアが言っていた井戸を探し、七人+一匹は歩いていた。
正確に言うとメイルは戸惑うサフィラの肩に乗っているのだが。
そして、ミーティアは全ての事情を理解出来ていないレーナ達に説明していた。
「……って事は、本来なら交わることのない私達が関わったことで、世界の《理》は崩れ、作者が修復する前に第三者が別の《理》を……主人公は記憶を無くしてトリップするというものを植え付けたってことだよね?」
レーナが先程のミーティアの説明をまとめた。
「へぇー。不思議なこともあるもんでがすなぁ」
パーティ内で一番頭の悪いヤンガスもようやく理解したらしい。
「ちょっ、ちょっと待って。転送される前にレーナが言いかけていたけど、作者以外の人物が《理》を変える事なんて不可能でしょ?」
「ゼシカの言う通りだ。ましてや小説内の人物が変える事なんて無理だろ」
「フレアのパソコンが何者かによってハッキングされました」
ミーティアは静かに真実を述べた。
「遠隔操作をされたのかもしれません。……もしかしたら、ちょうどそちら側の……確かのあさんといいましたか。のあさんが学期末テストで居ない時期でもあるのでそれを狙って今やったのかもしれませんね。とにかく、そのハッキングをした者の出所がここだということです」
「……一体誰がそんなことを……」
「それは実際にその者と対峙してみないと分かりません……。あれ?井戸ですね」
森に急に広場が現れ、ぽつんと中央に井戸があった。
「これか……」
エイトが果敢にも飛び降りた。
「兄貴!どこまでもついていきやすよー!」
「あっ、ちょっと!ったくしょうがないわね!」
「お前らちゃんと調べずに危険だろっておああああぁっ!!ゼシカ!何で鞭を器用に巻き付けて俺までぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「レーナ!私達も行きますよっ!」
「うんっ!早く行かないと置いてかれちゃう!」
後にも続く、ヤンガス、ゼシカ、ククール、ミーティア、レーナ。
「えぇ……?みんな、流石に危険じゃないかなぁ……?」
ただ一人、取り残されたサフィラは井戸を覗き込む。
しかし、そこには深淵よりも深い闇が続くだけだ。
「あれ……?」
いつの間にか肩のメイルが消えている。
「えっ、ちょ、一人にしないでぇぇぇぇっ!!」
サフィラも、目を固く閉じ、思い切って飛び降りる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ピキー」
サフィラの悲鳴が響いた後、どこからともなく現れたメイルが後に続き、飛び降りた。
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 Ⅵ ( No.201 )
- 日時: 2013/03/20 09:17
- 名前: フレア (ID: z9tQTgtp)
耳に轟々と音を立てながら風が通りすぎていく。
長い銀髪がはためく。
落ちれば落ちるほど、速度が増していく。
怖い怖い怖い怖い……。
少し前の彼女なら、こんな事は慣れていただろうが、今は違った。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
心細さもあった。
周りは深い闇で、相変わらず仲間達は見えない。
心細く、とても虚しい。
こんな事、前にもあったような……。
みんな、どっかいちゃって……。
また私を置いて行っちゃうんじゃないかって……。
今の彼女には記憶は無い。
しかし、あの映像が鮮明に蘇っていた。
兄と親友が、行方不明になり、慟哭したことが。
すると突然、光が見えた。
「えっ!?きゃぁっ!!」
短く悲鳴を上げると共に、身体に強い衝撃が生じた。
「うぅ……痛ったぁぁ……」
下にいたレーナが顔をしかめた。
下を覗き込んでみると、エイト、ヤンガス、ゼシカ、ククール、ミーティア、レーナの順に折り重なっている。
「ピキーッ!」
「痛っ!なになになになに!?」
思いっきりメイルがサフィラの胸の辺りに降ってきた。
「あ……あのぉ……。みんなぁ……重い……」
一番下にいたエイトがぴくぴくと腕を痙攣させた。
一方そのころサフィラ側のエイト達。
『あのー、もう少し静かにしてくださいませんか?』
フレアがジト目で見た先には、壁を殴っているエイト、テーブルを持ち上げているヤンガス、ククールに向かってメラを放つゼシカ、逃げ回っているククールが居た。
『……生粋の馬鹿ですね。本当に静かにイライラしてくださいよ』
「ついでに喰らえ!メラゾーマ!」
『えっちょ、ゼシカ!?何してんですかぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!』
「へんじがない ただのしかばねのようだ」
『勝手に殺すな!』
黒焦げ状態のフレアはシャウトした。
「ふぅ、大変な目に遭った」
「もう嫌だぁ……」
泣き言を言うのはサフィラである。
記憶を無くしてからずいぶんと気が弱くなってしまったものだ。
「……っ!!魔物の匂いがするでがすっ!!」
野生児、もとい盗賊のヤンガスが敏感に匂いを嗅ぎつけた。
サフィラ以外は戦闘態勢に入る。
「へっ!?え?なに!?」
サフィラはただオロオロするだけだった。
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 Ⅶ ( No.202 )
- 日時: 2013/03/21 15:12
- 名前: フレア (ID: 5lF/2wvj)
……私はなぜこの物語を書こうと思ったのだろう。
部屋の中で暴れ回るアホ共がちらちら見えるが、焦点は完全に合っていなかった。
心は完璧に考え事の方にいっていた。
最初はただの気紛れで。
でも、次第に何かを伝えなきゃって想って。
私達がドラゴンクエストというゲームで行っている事は単なる殺戮。
これが現実だとすれば、魔物にも《命》というものが在る。
魔物にも、ただ偶然に森から飛び出してしまってそのまま勇者に殺られる者もいるだろう。
もちろん自分の意志で襲いかかってくる者もいる。
しかし、彼ら自身の家族や友達を護るために自らを犠牲にして人間に立ち向かう者もいるはずだ。
その《命》を勇者という選ばれし者が簡単に消してしまっていいのだろうか。
その未来を絶ってしまって良いのだろうか。
私の言っていることは全て《綺麗事》。
そんな事は分かっている。
……人間は必ずしも正しくなんか無い。
常に自分に都合の良く在ろうとしているだけだ。
エイトは剣を構え、深く腰を落とす。
偶然にも出てきた敵はメタルキング。
相手も逃げるどころか攻撃しようとしている。
メタル系の魔物にしては珍しい。
エイトは一気に距離を詰めてメタルキングを斬るつもりだ。
「……はぁっっ!!!」
気合いの声と共に勢いよく飛び出した。
「……やめてっっっ!!」
キィンッ!!
耳障りな音が響いた。
「きゃっ!」
サフィラが剣を持ったまま尻もちを付いた。
隼の剣を不器用に持っているサフィラは構えが素人そのものだ。
メタルキングがぱちぱちと大きな丸い目をしばたかせた。
なぜ、彼女が自分を庇ったのかが不思議でたまらないみたいだ。
しかも、人間(あくまで見た目)が。
「……サフィラ、何で……?」
「聞きたいのはこっちの方だよ……!!」
サフィラは痺れる手を押さえながら嫌悪と軽蔑と侮蔑の眼でエイトを見上げた。
「このこは何にもやってないのに……!何でみんな殺そうとするの……!?」
「…………」
「最低だよ……。お前達にとって命なんてそんなものなの!?結局お前達はその辺の悪党共と同じじゃないか!!勇者なんて所詮正義というものを盾にしているだけの殺人鬼じゃんか!!」
「ちょっとあんた……!エイトが今までどういう気持ちで」
「黙って、レーナ」
怒りに燃えるレーナを静かに制したのは紛れもないエイトだった。
「プフゥーーッ!!」
突如、メタルキングの足下に魔法陣が現れた。
そして、炎が少しずつサフィラの真上に集まっていく。
「なっ!メラゾーマ!?」
「サフィラ!」
「ちぃっ!」
「間に合うか!?」
ゴォォォッと巨大な火球が唸りを上げて、サフィラに振り下ろされた。
徐々に地面が捲れ上がり、温度が急上昇する。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
今まで聞いたことのない、恐怖の叫びだった。
「サフィラーー!!」
土煙が晴れると、サフィラが横たわっていた。
しかし、その身体には傷一つ無い。
「え………?」
代わりに、メタルキングがドロドロと溶けていて、王を象徴する冠が液体の上に残っていた。
「ピキーッ……」
冠の後ろ辺りからメイルが跳ねてきてサフィラに駆け寄った。
どうやら、メイルがメタルキングを倒したらしい。
その証拠に、レーナ達のレベルがぽんぽん上がっていた。
メイルが同族であるメタルキングを倒したとき、彼はどんな想いでいたのだろうか。
命の恩人であるサフィラを助けるためだとしても、辛かったであろう。
「……気絶しているみたいだ」
エイトが抑揚のない声でサフィラを見て言った。
「しばらく休んだら目を覚ますと思うよ」
「…………」
ミーティアが無言でサフィラを背負った。
彼女は見た目に反して身の丈ほどの鎌を振るうほどの力持ちだ。
それはともかく。
サフィラは記憶だけでなく、力も、精神も失ってしまったのだろうか。
先程のエイトの剣を受け止めたときのサフィラは明らかに弱かった。
それに、サフィラがあそこまで感情的に、しかも相手を傷つけるような罵倒をしたことは無い。
どちらにせよ、胸に過ぎる何とも言えない不安だけは否めなかった。
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 Ⅷ ( No.203 )
- 日時: 2013/03/23 10:09
- 名前: フレア (ID: 7c/Vukd1)
タン……タン……タン……
澄んだハープの音色は、洞窟内に反響して心地よく響いた。
「月は大地を照らし……そして光へ消える……」
静かに、小さな女声がハープに合わせて歌う。
『時の軌跡』。
それが曲の題名だった。
「祈りを空へ……捧げた……全て運命だと……信じて……」
少女が小さい頃から《彼》に聞かせて貰った曲。
少女が幼い頃から一緒にいた《彼》に。
なのに……何で私を裏切ったの?
貴方は私を利用してただけなの?
そもそも貴方は何者なの?
ジャーコッシュ……いや、エビルプリースト。
痛い痛い痛い痛い痛い……
まるで無限地獄だった。
胸が張り裂けそうな痛み。
胸を焼き焦がすような憎しみ。
炎の嵐。血。慟哭。悲鳴。断末魔。肉が裂ける音。狂声。
「はっ………!」
サフィラは目を覚ました。
またあの夢だ。
「……よかった……。目を覚ましましたか」
ミーティアがほっと胸を撫で下ろした。
「ここは……?」
「井戸を落ちたら今度は民家にワープしまして。誰も居なかったので使わして貰っているという訳です」
「そう……」
確かに、今自分が横たわっているのはもふもふした白い布団だ。
……というか、誰も居ないからといって使うこいつらは不法侵入だが、だれもつっこまないのだろうか。
「……みんなは?」
「下の階にいます。今日はみんな疲れたのでこの家で過ごすことにします。もう外は暗いですし」
「……外にいってくる」
「あ、大丈夫ですか?無理はしないほうが……」
「……大丈夫。月が見たいんだ」
サフィラは階段を早足で降りていった。
途中、エイトとすれ違ったがサフィラはそっぽを向いた。
何か話しかけようとしていたが……エイトは手を引っ込めてしまった。
下の階では料理と格闘しているヤンガス、ゼシカ、ククールがいた。
「お、サフィラ。お前大丈夫か?」
「姐さん?顔が真っ青でがす」
「本当。無理はしないほうがいいわよ」
みんな、気遣ってくれた。
キィ……
悲鳴のような音を立てて、サフィラは入口から外へ出た。
そして、断崖絶壁のぎりぎりのところで腰掛けた。
海が月を映し出していて、中々神秘的だ。
「……サフィラ」
自分を呼ぶ声で、サフィラは振り返った。
「……レーナ………」
レーナが手を後ろに組んで立っていた。
そして、サフィラの隣に腰掛ける。
「……エイトの事だけど……許してやって」
レーナは唐突に言い出した。
「…………」
「あいつはあいつで、命を消すことを嫌がっているんだよ。でもね……。トロデーンが呪われてから、自己嫌悪に苛まれて……。強さというものに執着して……」
「…………」
サフィラは目を瞑った。
絶対に強くなるんだから……!
小さい少女が、同じぐらいの少年に向かって叫んでいた映像が流れる。
サフィラはその少女が瞬時に自分だと理解した。
「…………エイトの言う強さって何なの?」
サフィラはポツリと呟いた。
「ただ確実に生き物を殺せるのが強いって事?そんなものが必要なの?」
「……?」
「私はそうは思わない。だってそんなもの持っていたって負の感情を生むだけ!私も……!私もそうだったもん!生き物を殺すって言うことは未来を絶つこと!私は五人の人間を今までに殺してしまった!五人も!その人達は私を恨んでいると思うよっ!人間だけじゃなくて魔族も!魔物も!」
早口で言うサフィラの瞳には涙が溢れ、頬に伝う雫はルビーと化した。
「……サフィラ?もしかして記憶が……?」
「…………」
サフィラは手で顔を覆い、頷いた。