二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 ⅩⅣ ( No.221 )
- 日時: 2013/04/01 09:47
- 名前: フレア (ID: siqlwJMj)
腰に差している剣をサフィラは抜いた。
パルミドで手に入れてから幾万の命の血を吸ってきたその剣は、怪しくぎらついている。
チラリと後ろの方に眼を向けるとゼシカとククールが呪文の詠唱を始めていた。
「はぁっ!!」
レーナがサティアに斬りかかった。
しかしサティアはそれを軽々と避けると、またハープを奏でる。
「コーラルレイン」
足下の水が、幾つもの粒状に浮かび上がる。
水の粒が集まり、一つの刃の形になる。
「なっ何……っ!?」
「危ねぇ!!マホステ!!」
咄嗟にククールが唱えると共に、レーナは淡い光に包まれる。
その直後、水の剣はレーナを勢いよく突こうとするが空中で止まって破裂した。
「流石〜♪」
「よそ見している暇はあるのかなっ!!」
武器を構えたサフィラとエイトとヤンガスがそれぞれ別の方向から突進した。
「シャラールマクド」
水の膜がサティアを覆い、剣が弾かれる。
一見すぐに割れそうな膜だが、とんでもなく堅く、剣が少し欠けた。
「くうっ……」
「シャラールマクドは全ての攻撃を防ぐ呪文。僕にそんなの効かないよ」
ハープを持ち、白いワンピースを纏っている少女。
軽装に近いが無防備にはほど遠い。
「エイト!!ゼシカ!!炎属性の呪文を唱えてっ!!!!」
叫んだのはレーナだった。
「う、うんっ!!分かった」
「やってみるわっ!!」
戸惑いつつもエイトとゼシカは目を閉じ、詠唱を始めた。
「ん……?魔法も僕には効かないけど……?」
「ごちゃごちゃ五月蠅い!!そらぁっ!!」
キィィン……
耳障りな音が響いた。
レーナの振り下ろしたレイピアと水の膜が火花を散らして競り合っている。
その時、エイトとゼシカが呪文を高らかに唱えた。
「ベギラゴン!!」
「メラゾーマ!!」
炎熱魔法がサティア目掛けて飛んでいく。
レーナが後退して、サティアから離れた。
炎が、サティアを包んだ。
足下の水が、シュゥゥゥと音を立てて蒸発していく。
「なるほど……!そらぁっ!!」
サフィラの気合いと共に指先から放たれたのは波動。
水が全て凍り付いていく。
蒸発したものはキラキラと白い結晶と化して足下に落ちた。
「くっ……こんなもの……!あれっ!?」
無傷で全ての呪文を防ぎきったサティアは明らかに動揺していた。
それは水の膜が消えてしまったからではないようだった。
「やっぱり……!合っていたんだ!」
「レーナの割にはやるじゃん」
「……それ私を馬鹿にしている?」
「いや?素直によく気づいたなーって思っただけだよ。それにしても私もあのこと忘れていたなんて情けないなー」
サフィラとレーナは目の前に敵がいるのにも関わらず呑気に会話している。
「どういう事……?二人とも」
エイトが訊いた。
「ああ、さっきサティアがコーラルレインを唱えたとき、この足下の水から剣が出てきたじゃん?だからさー、私達の場合は零から呪文を唱えられるけど、サティアは特定の物質が無いと呪文が唱えられないって思ったんだよ」
「正しく言うと特定の物質の状態変化したものが無くちゃ駄目って言えばいいのかな」
「うん、サフィラが正しいね。水を蒸発させて凍らせちゃえばサティアは全く呪文を使えないことになるからこうしたんだ」
特に二人は得意げでも無く仲間達に説明した。
エイト達はただただ感心するしかなかった。
「……ふぅん……。中々そっちの主人公も侮れないな」
サティアは笑みを口元に浮かべているが、目は全く笑っていない。
「僕はどうしても勝たなきゃいけないからね。手段は選ばないよ」
サティアはハープを持っていない左手を胸に当てる。
オレンジ色の宝玉が手に現れた。
「なっ……!何で君が……っ!!」
サフィラが眼を剥いた。
「君がエビルプリーストと戦ったとき、奴は君の動きを封じただけでなにもしなかっただろう?あれは封じの宝玉といって、すりかえておいたんだ。本物の進化の秘宝はこっちさ。奴より僕の方が遙かに上手く使えるからね」
「やめ……やめて……!それは……!」
「言っただろう?手段は選ばないって。それに……もう遅い」
宝玉がひときわ明るく輝いた。
サティアはその光に呑み込まれて……。
光の中に影が見え、その影が徐々に大きくなってくる。
「グルォォォォォォッ!!」
大地を裂くような、咆哮が響いた。
光が晴れ、巨大な、禍々しいドラゴンが現れた。
サフィラ達を見下ろすその双眸からは、感情も映し出されていなかった。