二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 ⅩⅤ ( No.225 )
- 日時: 2013/04/03 11:52
- 名前: フレア (ID: cBJq7ACw)
鼓動が早く打ち鳴らす。
それだけで自分が酷く恐怖心を抱いていることが分かった。
「くっ……」
目の前の異形のものと化してしまった少女はもはやただの殺戮兵器。
心が完全に囚われた化物だ。
なのに……何で?
何でそんな悲しそうなの?
眼には何も映っていない。
だが……。
「サフィラ!!ねえ!サフィラ!」
自分を呼ぶ声でサフィラは我に返った。
と同時に、眼前に炎の火球が迫っていることに気付く。
「なっ……!」
「ちぃっ!」
舌打ちと共に誰かが彼女の身体を横から押した。
そして二人は一緒に倒れる。
頭を掠めて火球は後ろへ飛んでいった。
「あ、ありがとうレーナ……」
「なにボサッとしてんの!まともに戦ったら勝てないっていったのあんたでしょーがっ!!」
「なっ!私だって生きてるんだからぼーっとすることあるもん!!」
「今は目の前に敵いるんだから戦いに集中しなよ!!」
「うーっ!!ちょっとメイル!何かレーナに言ってやって!」
「ぴ、ピキー?」
「ほら、メイルだってレーナの言う通りだよっていってるじゃん!」
「いーや!サフィラが正しいって言ってるよ!」
「ピ、ピキー……。ピキ、ピキー……。(あのー、勝手にアフレコするの止めて欲しいんだけど……)」
「ちょっと二人とも!今はそんなことやってる場合じゃないでしょ!!」
エイトが叫ぶと同時に竜のかぎ爪がサフィラとレーナの身体に掠めた。
ごうっと風が過ぎる。
「……一回停戦だね」
「しょうがない。メイルは後で覚えときなよ」
「ピキー!?ピキ、ピキーッ!?(ぼ、僕!?何かやった!?)」
戸惑うメイルを無視し、サフィラとレーナは武器を構えた。
「ポケモンってドラゴンタイプは氷に弱いよね?だったらあの竜もダメージ結構与えられるかも……。貴方、あの竜を足止めしてて。」
「エイト!ヤンガス!!私と一緒にサティアを足止めして!ゼシカはバイキルト!ククールは……取り敢えずタンバリン!!」
「俺の扱い酷いな!つーか、まだタンバリン練金出来るところまでいってねーからタンバリン持ってねーよ!」
「タンバリン無いなんて演奏家として恥ずかしく無いの!?」
「むしろ戦闘中にタンバリン叩いてるほうがおかしいです!つーか演奏家じゃねえし!騎士から転職したおぼえはねぇー!!」
「取り敢えずククールは五月雨打ち!」
「レーナも悪乗り止めろ!俺はエイトがスキルカリスマにふっちまったせいで弓スキル持ってねーし!」
「ピキーッ!ピキピキーッ!!(みんな!そんなことやってる場合じゃないって!)」
エイトはそんな彼らを見て溜息を吐いた。
今のとこ真面目に現在進行形で戦っているのはヤンガスとゼシカぐらいであろうか。
ヤンガスは斧を振りかぶって竜に斬りつけ注意を引き、ゼシカは黙々とヤンガスにピオリムを掛け続けている。
そんな彼らに気付いたサフィラ達は何となくバツの悪くなったような顔で顔を合わせた。
「……とにかく!私が呪文を唱える間、みんなあいつの注意引いてて!」
「分かった」
サフィラは何かもう諦めたような顔付きでレーナに背を向けた。
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 ⅩⅥ ( No.226 )
- 日時: 2013/04/03 10:26
- 名前: フレア (ID: cBJq7ACw)
「ふん……あいつもずいぶん落ちぶれたものだな」
悪魔の鏡と呼ばれる魔物に映っている竜とサフィラ達を見て、小柄な老人は笑った。
それは自身に対する虚言だったのかもしれない。
流石にかつての《友》を利用するのには躊躇した。
だが、彼女が《友》だったのはもう10000年前までの話。
まだ老人が若かった頃。
《友》はもう、自分が殺めた。
《友》を裏切って、自分の欲望を叶えるために。
一時期、彼は《友》が死んだ後自身が魔王になったが、それを危惧した《友》の兄が彼を封じ込めた。
そして気の遠くなるような年月が過ぎ、遂に200年前、《奴》の従兄弟が彼の封印を解いてしまった。
《奴》の従兄弟を殺した後、《奴》に従う振りをして、ずっとまた自らが寝返り、魔族の王になる機会を窺ってきた。
今度はもっと確実な方法を使って。
だが、彼は敗れた。
勇者と手を組んだ《奴》に倒されて。
しかし、《奴》は完全には彼の息の根を止められなかった。
……そして。
《奴》の娘を最初見たときは驚愕した。
強く、美しく、そして何より《友》と似すぎていた。
それと同時に、自分の《もの》にしたいという感情が湧き起こった。
未来永劫、娘を屍として自分の傍に置きたいと。
「そぉらっ!!」
サフィラは思いっきり剣を竜の左目に刺した。
「グルォォォォオオオッッ!!」
サフィラは剣を抜き、竜の眼から血飛沫が上がる。
返り血を浴び、サフィラの頬は赤く濡れる。
「よしっ!!これで左は死角になるっ!!」
エイトが地を蹴り、次は竜の左手を切り落とそうと振りかぶる。
「バイキルトぉっ!!」
ゼシカが攻撃力倍増の呪文を唱えた。
「はぁぁっ!!」
エイトが剣を薙ぐ。
竜の左手が落ちた。
だが、それと同時にその左の傷口が疼いた。
「……な、何だ……?」
「あっ!!まずい!ヒャド!!」
サフィラが傷口を凍らせようと試みた。
しかし、血が混ざった氷が砕け散る。
「あ……!!」
手が、またそこに生えていた。
「まさか目も……!?」
視線を左目に向けると、竜の眼は何事もなかったのように傷口が塞がっていた。
「そんな……!」
「大気に満ちる空気よ、凍れ、氷の刃となりて、切り刻めっ!!ヒャダルコ!!!」
レーナが氷結呪文を唱えた。
竜の周りに鋭い氷の針が集い、全方位から竜の身体を貫く。
「効いた……!?」
「いや、まだっ!!」
「ちぃっ!!天駆ける光の精霊達よ!我が元に集いて光の陣と化せ!グランドクロス!!」
「蒼天魔斬んんんんんっっ!!!」
ククールが十字を宙に刻み、その光が竜の身体を切り刻む。
ヤンガスの放った蒼く輝く髑髏が竜を噛み砕く。
「駄目か……!?」
「いや!!見て!傷が塞がるのが遅くなってる!!」
サフィラの言う通りだった。
絶望の闇の中に、微かに差し込む希望が見えてきた。
- ドラゴンクエストⅧ 失われた記憶 ⅩⅦ ( No.227 )
- 日時: 2013/04/04 10:20
- 名前: フレア (ID: OtfUnLOH)
痛い……。
ああ、分かってる。
自分のした事の報いだって。
今更許して貰おうだなんて思ってない。
むしろ、私を殺して欲しい。
これ以上、私達が罪を重ねる前に。
進化の秘宝も、私達も、永遠に蘇らないように屠って……。
もう、誰も死ぬのは見たくないんだ。
「きゃぁぁぁぁっ!!」
「レーナっ!!」
竜のかぎ爪が振り下ろされ、真空波で思いっきり吹き飛ばされたレーナはエイトに受け止められた。
「こいつ……!さっきより断然強くなってる……?」
「うん。進化の秘宝を使った者は肉体的ポテンシャルを限界まで引き延ばすと共に、まぁあれだよ。背水の陣とでも言えばいいのかな?追いつめられれば追いつめられるほど強くなるってそんな感じかな?どっちにしろ、このまま戦闘を続ければ確実にこっちが全滅する」
サフィラは迫り来る剣よりも鋭い爪をかわし、隙を窺いながら斬りかかりながら淡々と言った。
その額には汗が浮かんでいる。
先程からずっと出口の見えない戦いが続いている。
ヤンガスも斧を振るい続けているが明らかにスピードは落ちている。
ゼシカも、ククールも魔力の限界が近づいてきていた。
「メラミ……!」
弱々しく唱えられたその呪文は、両手で制御しないとどこへ行くか分からない程だ。
「ピキーッ!!」
メイルが、デインを唱えた。
だが、所詮メタルスライム。
小さな光が降り注ぐ程度だった。
「……っ!!」
気が付くと、サフィラの身体は爪で抉られていた。
オリハルコン製の鎧も、呆気なく貫通している。
彼女は、地に膝をついた。
剣が近くに転がり落ちる。
視界が暗くなっている。
傷口からの出血が酷い。
これではいずれ失血死してしまう。
「………はぁっ……はぁっ……!!」
「くっ!ベホマ!」
ククールが遠くから回復呪文を唱えたが、それでも傷が癒えない。
「ベホマ!ベホマ!」
何度も呪文は繰り返されるが、治る気配は無い。
「ヒャドっ!!」
「えっ……!な、うぐっ!」
突然、ひんやりとした感覚が襲った。
傷口に手をやるが、血が止まっている。
恐る恐る見てみると、傷口は凍結していた。
「感謝しなよ。止血してやったんだから」
「はぁ……っはぁ………っ!君、だったの、か……」
レーナがサフィラの剣を拾い上げた。
「だらしがない。ほら、立てる?」
「ははっ……。まさか、君、に、助けられる、とは、ね……」
「私達、あんたの事情に巻き込まれてるだけだから。あんたが死んだら勝てないかもしれないし」
レーナは隼の剣の柄をサフィラの方に向ける。
サフィラは微笑みながらその柄を握り、立ち上がった。
ちょっとレーナの手が剣で切れたが、それは後でエイトかククールに直して貰うつもりだ。
「さて、そろそろ終わりにしよう」
「よし……。行くよ!!」
不思議と、サフィラの傷口は痛まなかった。
それどころか目眩も、疲労感も無い。
エイト達も、それぞれ顔を見合わせ頷く。
エイトが武器を握りしめる。
ヤンガスが腰を深く落とす。
ゼシカがピシャンっと鞭を打ち鳴らす。
ククールがキザな笑いを浮かべる。
メイルがピキーッと鳴いた。