二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 翡翠の首飾り Ⅱ ( No.244 )
- 日時: 2013/04/05 14:46
- 名前: フレア (ID: M2xow4LM)
逃げる。逃げる。とにかく逃げる。
後ろから追ってくるのはデュラハーンと呼ばれる首無しの命の宿った鎧。
手に持っているのは長い鎖の先端に巨大な鉄球が付けてある禍々しい武器と、顔がある盾だった。
盾に関しては、まるで人間のめまぐるしく変わる表情のように、瞬きをし、口が動く。
距離がどんどん詰められている。
一年前まではこんなこと無かったのに……!
ポケットから出たネズミの友達、トーポを素早く掴んで、またもとのポケットに戻す。
「あっ!!」
こけた。
こんな時に小石に躓いて転んでしまった。
「うぐっ……!」
慌てて起きあがると、魔物はすぐ目の前に居た。
盾が不気味に自分を見つめている。
これからこいつに喰われるのだろうか。
そう想うと悔しくてたまらない。
……結局僕はいつまで経っても護られてばっかりだ……!
デュラハーンは鎖を持ち上げる。
もう駄目かと覚悟したその時……
「……伏せてっ!!」
「ふぇっ!?」
頭を抱えて前のめりに倒れると、ひゅんっ!と頭の上で空気を斬る音がした。
デュラハーンの鎧が、横一文字に崩れ落ちた。
その崩れ落ちた鎧の後ろに、鎌を構えるエイトのよく知る少女。
「……ミーティア……!」
「貴方、馬鹿ですか!?」
エイトは胸ぐらをミーティアに掴まれる。
そして、凄い気迫で捲し立てた。
「最近魔物が凶暴化しているのはご存じですよねそれでも何で貴方は外に出るんですか世間知らずもいいとこです何で貴方が外に出たのか知りませんがそこまで大切な用事だったんですかそもそも今日私の誕生日ですよ何でそんな日に私がこんなことしてるんですか私貴方を捜すために黙って城を抜け出したので絶対後でお父様に怒られますね色々時間とカロリー無駄に消費しましたあと……」
「ストップストップ」
エイトは両手を振って制止した。
「えっと……。とにかく何も言わずに城を出て行ったのは悪かったよ。どうしても君を驚かせたくて……」
「……?」
「えっとね……」
エイトはゴソゴソとトーポが入っているのとは反対側のポケットを探った。
ミーティアは何だろうと首を傾げた(超鈍感)。
「あ、これ!」
エイトの手の平に載せてあったのは綺麗な翡翠の宝石がはめ込まれたネックレス。
「これね、トラペッタまで走ってきて買ってきたんだよ」
「へ!?トラペッタまで!?」
ミーティアが驚くのも無理は無い。
トラペッタめで大人の足でも半日以上掛かる。
それを子供がトラペッタまで行ったとすると、昨日の夜から全速力で走ってやっと朝に着く位だ。
「……ずるいですね。怒れなくなるじゃありませんか………」
照れる自分を誤魔化すように、エイトから視線を外す。
「えへへ……喜んでくれた?」
「……嬉しいです。ありがとう。エイト」
ミーティアはその首飾りを付け、笑ってみせる。
純真無垢な子供の笑顔が、そこに在った。