二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第90話 ( No.247 )
- 日時: 2013/04/06 08:52
- 名前: フレア (ID: nA.Y1kcV)
仲間達は唖然とした表情を浮かべていた。
サフィラの肩の上に乗っかっているメイルがグルル……と唸る。
と同時に、彼の身体の色は青から銀へと変色する。
ヤンガス達はますます混乱したような顔でサフィラを見る。
「メイル、大丈夫だよ。私の仲間なんだ」
サフィラは優しげな声でメイルをさすり、なだめた。
「あのー、兄貴、これは……」
「何なんだ?この……スライム?」
「凄く簡単に説明すると、さっき盗賊みたいな人達に殺されそうになっていたメタルスライムをサフィラが助けたんだ。その時懐いちゃって……」
エイトは傍らのサフィラを見やる。
彼女の肩に乗っているメイルは、ようやく落ち着いたらしく体色が元に戻っていた。
「へぇ……。結構可愛いですね」
ミーティアがメイルに手を伸ばすが
「ピキーッ!!」
牙を剥かれてしまった。
「あー、悪く思わないで。このこ、家族を人間に殺されたみたいで……。エイト以外には気を許さないみたい」
サフィラがすまなそうに言った。
「なるほど……そういうことなら……」
「で、こいつは俺達の旅についてくるって事になるのか?」
「うん……。そういうことになるね」
「…………」
ミーティアがメイルに歩み寄る。
今度は触れずに、彼の目を真っ直ぐ見て問う。
「……私達の旅は、いつ命を失ってもおかしくないのです」
「……ピキ?」
「文字道理命を賭ける覚悟はおありですか?」
「ピキーッ!ピキーッ!」
ミーティアはふっと表情を和らげた。
「……そう」
「……兄貴、姫さんは魔物の言葉分かるんでげすか?」
ヤンガスが腕でエイトをつついて小声で尋ねた。
「……意志を伝える程度なら出来るんじゃないのかな?城の犬とか猫と話しているときあったし……」
同様にエイトも小声で答えた。
「……みなさん、行きますよ。この調子で行けば日が暮れるまでには着きそうです」
ミーティアが歩き出す。
「……うん……あれ?」
サフィラが首を傾げた。
「どうしたの?」
「……いや、今なんか悲鳴みたいのが……」
「また魔物のか?」
「いや、人間の男の声。……この先だ」
サフィラが今自分達の歩もうとしている道の遙か遠くを指差した。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第91話 ( No.248 )
- 日時: 2013/04/06 09:09
- 名前: フレア (ID: nA.Y1kcV)
「……何、これ……」
無惨に破壊された関所を前にして、サフィラは歯噛みした。
「この感じ……リーザスのと似ている……」
トラペッタからリーザスまで行くときに、これと同様に壊された関所があった。
直感だが、何かその時と同じ感覚がするというか……。
「あ…………」
よくよく見ると、男が一人、転がっていた。
「大丈夫ですか!?」
エイトが駆け寄るが、返事は無い。
見開かれたその双眸には、何も映っていなかった。
「……せめて安らかに眠ってくれ」
ククールが男の死体を前に、手を合わせた。
「ピキーッ!ピキーッ!!」
メイルが甲高い鳴き声を上げる。
「は……!?ちょっ、メイル?それ本当!?」
「何て言ってるの?」
「霊が見えるらしいんだ!その霊が、杖使い女が襲いかかってきて、俺は抵抗する間も無く死んでいたって言ってるらしい!」
「え……!?」
「ちょっと杖使い女ってまさかゼシカの……!?」
「まさかゼシカの姉ちゃんが……!?」
「いや、ありえねえよ!ゼシカが何で……!?」
メイルは先程出会ったばかりでゼシカのことは知らない。
それは即ち、そんな嘘を吐くことは出来ないというわけだ。
認めたくない現実が、彼らの前に立ちはだかる。
「……早くリブルアーチに行こう。とてつもなく嫌な予感がする」
サフィラは彼らの思いを代表するように呟いた。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第92話 ( No.249 )
- 日時: 2013/04/06 10:09
- 名前: フレア (ID: nA.Y1kcV)
「くぅ……あっ……」
リブルアーチに着いた。
ここは海峡に掛かる橋上の町で、石像造りが盛んである。
なぜか町の人々が尋常ならざる様子だ。
サフィラは頭痛がするのか頭を押さえる。
「凄い邪悪な魔力……。早くしないと手遅れになる……」
「その魔力の根源は?」
「あそこ……」
サフィラが指差した方向には屋敷が見える。
「おや、皆さん」
聞き覚えのある女声がした。
振り返るとその少女は本来大国サザンビークの姫であるはずの……
「エルニス……!?」
その少女は、旅人が普段着るようなマントの付いた、麻製の蒼い服を纏っていた。
武器は所持してない風に見える。
「まさか城を追い出されて……!?」
「違う。私が旅に出たいってお父様に頼んだ。ただそれだけ」
エルニスはぶっきらぼうに言った。
女一人でこのご時世に旅に出る理由は見当も付かなかった。
何か重大な理由でもあるのか。
「杖使いの女はハワードの屋敷にいる。ハワードは人間の屑みたいな奴だけど兄様よりはマシ。早く行って。早くしないと殺されるかもね」
無表情で喋るエルニスの言葉を聞き、サフィラ達は駆け出した。
「それ以上近づくなっ!!」
青年は自分より年長者と思われる怪しげなローブを纏っている男を後ろに庇い、叫んだ。
「何者だか知らないがハワード様に手を掛けようとするのなら、この僕が容赦しないぞ!」
しかしそれに噛み付いたのはその庇われている男だった。
「なーにがこの僕が、じゃ。お前が容赦せんかったからと言って何が出来るんじゃ。このボケナス。チェルスよ。そこをどけ」
男はチェルスと呼ばれた青年を突き飛ばす。
「ハ、ハワード様!?」
「……女よ。儂を大呪術師ハワードと知っての狼藉じゃろうな」
ハワードの目の前のその女はくすりと笑った。
「ふふっ……。だったらどうするの?結界を使おうったって、四人の賢者の魂を得たこの杖の前では結界は何の意味も成さないわ」
「何……だと?」
女の持っている杖が紫に輝き、じりじりと女は二人に迫っていく。
その時、ドアの軋む音がした。
「……あら?意外と早かったわね。やっぱりちゃんと《私》を押さえつけとかなかったのが悪かったかしら?」
「ゼシカ……!」
サフィラはやっと堪えるように彼女の名前を呟いた。
ゼシカは肌の色は白を通り越して緑にすら近くなっている上に、オレンジ色だった瞳は血のように赤い。
「何で……!?ゼシカ……!!」
エイトの問いには答えずにゼシカは
「今日の所は退散してあげる。この人達を相手にしながらじゃ、流石に私も分が悪いもの。今度来るときまでにはもっと守りを万全にしておくといいわ。それじゃあね」
ハワードに忠告をして、自身は空に溶けるように消えていった。
「ハワード様!お怪我はありませんでしたか!?」
チェルスはハワードに寄るがハワードは無情にも手を払い除けた。
「ええい!寄るな!汚らわしい!」
なるほど、確かにエルニスが言った通りにかなり性格が悪いみたいだ。
「お前はレオパルドちゃんにでもご飯をやってこい!儂はそこの御仁と話がしたいのじゃ!」
「は……はい……」
チェルスは悲しげな顔で部屋を退出した。
「……ゼシカ……何で貴方は……」
「何が起こってるんでがすか?」
「ゼシカが人を殺そうとするなんてありえねぇ……」
ゼシカが去ってからも、彼らは硬直している状況だった。