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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第93話 ( No.254 )
- 日時: 2013/04/10 17:54
- 名前: フレア (ID: apcZh59o)
雨が降ってきた。
しかし、少女は気にも留めずに川の流れを眺めていた。
リブルアーチという名の橋から見ると、切り立った二つの断崖の間に大きな大河が流れている。
ぴちょん……ぴちょん……
雫が、水に溶けていく。
「……エミリア」
少女は背後から声を発したのがその《ネズミ》だと瞬時に理解した。
その《ネズミ》が老人へと変化していく。
少女はその老人に言う。
「……その名で呼ぶな」
ぞっとするような冷たい声だった。
ブラウンの瞳は殺意が込められていて、物理的なものが備わっていたとしたら老人はただではすまないだろう。
「……なぜ貴方がエイトと一緒にいる」
殺意を剥き出しにしたまま、少女は続ける。
「私達の人生を滅茶苦茶にして。それなのになぜ貴方はエイトの傍にいる!」
それは問いというよりも老人を責めていた。
「父さんと母さんを引き離して!エイトの記憶を奪って!《里》の対面ばっかりを気にして!貴方は最低だ!」
老人はうつむいて、少女の言葉を甘んじて受け止める。
「……そうだ。私達は本来交わるべきではなかった者達から生まれ出た《化け物》。私達は生きているべきではない!それなのに……っ!」
少女は手で顔を覆った。
言葉とそれで、彼女が泣きそうになっているのが老人には分かった。
「それなのにっ……!何で……!エイトは幸せそうなの!?私はこの十年間、ずっと……!《記憶》があるせいで簡単に信じられる人がいなくて……!」
「…………」
「何で……っ!!何で私はここに存在してるの!?私を何で殺してくれなかったの!?」
「…………」
とうとう少女は泣き崩れた。
雨が強まり、少女の身体を濡らす。
老人は、しばし少女を見つめて、その場を去った。
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