二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第94話 ( No.256 )
- 日時: 2013/04/08 14:50
- 名前: フレア (ID: yIE1Hsuy)
彼らは信じたくなかった。
彼女が、関所の人間を殺してしまったこと。
そしてまた、目の前の男を殺そうとしていたこと……。
「どこの誰だか知らんが、もちろん儂が誰だか知っておるだろう」
目の前の男は、得意げな顔をしてにやけた。
サフィラはもちろん全く知らない。
先程ゼシカが話していたことが断片的に聞こえた。
確か……四人の賢者の魂を得たこの杖の前では結界は何の意味も成さない……だったと言っていた。
四人の賢者とは何なのか、今の彼女には分からない。
ただ、これだけははっきり言える。
ゼシカがこの男の命を狙っていること。
そして……この男は偉そうにしている割には大したこと無い、ということだ。人間性の問題で。
「儂が偉大なる大魔術師、ハワードじゃ」
訊いてもいないのにその男は自らの名前を言った。
しかし、何かを考え込んでいるエイト、ヤンガス、ククールは全く聞いていない風に見える。
「まぁ、儂のことは気軽にハワード様とでも呼ぶがいい」
サフィラはハワードの態度に苛ついた。
仮にも大国の王女であるミーティアの事を話したら腰を抜かすだろうか。
「……では、ハワード様」
サフィラはなんか様を付けなければ話が進まなそうなので様を付けて呼ぶことにした。
もちろん彼女にもプライドというものは存在する。
この男が先程の青年に対して酷い扱いをしていたのを覚えている。
そんな人間の屑に様など付ける事なんてプライドに反するのだが……。
「なぜ貴方はゼシカ……先程の女に襲われたのですか?何か心当たりは?」
「無い。儂が人の怒りを買うことなど無い」
即答ですか……。心の中でミーティアは呆れる。
「お前達に頼みがある」
「……何ですか」
「クラン・スピネルという宝石を持ってきて欲しい」
「「……は?」」
言葉の意図が掴めないサフィラとミーティアは揃って間の抜けた声を上げた。
「……おっしゃる意味が分かりません」
「クラン・スピネルは強力な魔力が込められていてな。強力な結界を作り、あの女に対抗するにはそれが必要不可欠だ」
「貴方ならそんな小細工抜きで作れないのですか?《偉大なる大魔術師》ハワード様?」
意外にもミーティアが挑発する。
流石にカチンときたのかハワードは額に青筋を浮かべるが、なんとかキレるのを堪える。
「結界を張ろうとしたのじゃが、あの女がこの杖の前では結界はなんも意味を成さないと言っていたのでな」
「鵜呑みにしたんですか。情けない」
サフィラはハワードに対してかなり辛辣だ。
「っていうか、強力な結界を作ったって効かないのでは?」
「クラン・スピネルは聖なる宝石じゃ!魔の者を封じ込める程の魔力がある!」
ゼシカは魔物じゃないのだが、もう押し問答していたって始まらない。
「……で、そのクラン・スピネルとやらはどこにあるんですか」
ハワードは頷き、サフィラが一度行ったことのある場所の名を口にした。
「リーザスの塔、じゃ」