二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 紅蓮の追憶  ( No.262 )
日時: 2013/04/10 17:41
名前: フレア (ID: apcZh59o)

「ねえねえ!きょうはぼーけんしよーよーっ!」
無邪気に笑う少女は、手に持っているその辺で拾った木の棒を振り回す。
「ちょ、危ねーって」
「サフィラーっ、わたしたちろくに戦えないんだよー?」
「そうだよ。魔物は落ち着いたけど、悪いにんげんたちがいっぱいいるし……」
「そうそう、この前も森の魔物たちが虐殺されてたし……」
「ぼくも危険だと思うなー。もう夕方だし……。そもそもどこ行くのー?」
親友のその問いに、サフィラはにこにこ笑いながら答えた。
「せかいじゅのきに行ってみよーっ!!」


これはまだ、何十年も前の別世界の話。
まだ幼い、少女サフィラ。
その兄ロウェン。
ドワーフ族のレイジ。
オーガ族のディミア。
エルフと人間のハーフ、エリン。
大国キングレオの皇子レーヴェ。
種族は違うが、彼らはとても仲が良かった。
「おーっ!さすがに眺めがいいねーっ!!」
ディミアは世界樹の上から下を見る。
世界樹は巨大な大木で、その大きさは山よりも大きい。
「ばかかお前……。全員の腕掴んで空飛ぶ靴履くとか……」
「それで成功しちゃうのも相当な悪運だと思うわ」
呆れるロウェンと感心するエリン。
「ロウェン、いつもお前も相当な無茶やってるじゃんか」
半眼でロウェンを見るレイジ。
「レイジ……いつも言ってるがおれ年上なんだけど……」
「えんりょは無用だ。タメOK」
「それおれの台詞じゃね?」
「まあまあロウェン。心が狭いと女の子に嫌われるわよー?」
エリンは茶々を入れる。
「えー……おれ心狭いか……?」
「少なくともサフィラが君の剣いじって君が怒り狂ってたときは心狭いって思った」
「危ねーし。こいつ怪我したらおれがどつかれんじゃねーか。お前らも俺を責めるだろ?」
「ああ」
「うん」
「わたしもそー思う」
「右に同じ」
「おにーちゃんこころせまいよー」
全員、頷く。
「……お前ら……」
「冗談だよ」
「おにーちゃんこころせまいよー」
「若干一名同じ事リピートしている奴がいるのはおれの気のせいか?」
「君のヘルズイヤーで聞き取れないことなんて無いだろ?」
「おにーちゃんこころせまいよー」
「…………」
「レーヴェ、フォロー入れろ」
「えぇ!?レイジが言ってよ!ぼくはやだよ!エリン!バトンタッチ!」
「何言ってんの!そーゆうのはディミアが……」
「わたし脳筋って知ってるっしょーっ!?ここはレイジがっ!!」
「お前ら……」
「あ!みてみてーーっ!!」
サフィラの小さな手が指を指す。
その方向には、夕日が沈もうとしていた。
太陽が完全に消えるその瞬間、大地がオレンジ色に染まる。
「綺麗……」
誰かが代表するように呟いた。
「ああ、すげぇ……」
先程まで不毛な争いをしていた奴らも、食い入るようにその光景を見つめていた。
大地はやがて淡い青に包まれる。
「えへへーっ!みんなによろこんでもらってよかったー!」
「……へっ?」
「さいきんこわいひとたちのことでみんなかなしそーだったからー」
「……あぁ」
脳天気なサフィラにそのことが気づかれていたとは、かなり表情にでていたのか。
「いつかねー、わたし、みんながえがおでくらせるよーなせかいにしたいのー。わたしたちみたいに、みんながなかよくできるようなせかいにー」
ロウェン達は、一瞬あっけにとられたような表情になったが、顔を見合わせてぷっと吹き出した。
「あーっ!わたしほんきなんだからーっ!」
「ああ、悪い悪い」
レイジがまだ笑いを残したままサフィラをなだめた。
「……そうね。わたしたちがそういう世界を創っていかなくちゃね……」
「ま、大丈夫だと思うよ。ね?ロウェン?」
「おれに振るか。……みんなが仲良くなれるように、か……」
ロウェンの呟きは、淡い海の色に沈む森に溶けていった。