二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第99話 ( No.278 )
- 日時: 2013/04/23 18:17
- 名前: フレア (ID: ZTxzplLx)
『ねえねえ、サフィラー』
「……何?」
尋ねる彼女の声には、苛立ちが隠っていた。
「ピギャ!?」
メイルが肩から落ちそうになるのを慌ててサフィラが受け止める。
彼が驚いたのは、サフィラの横隣に半透明の彼女そっくりの少女がいたからだ。
ただ、サフィラと決定的に違ったのは蒼い瞳と飾りっ気のない白いワンピース。
その瞳は悪戯っぽく輝き、性格はかなり違うとはいえ冷たい雰囲気のあるサフィラとはまた違った感じだ。
『このスライム可愛いなー。じゃなくて』
改まった表情で少女はサフィラを見た。
『忠告しておく。君達が今、やっていることは多分無駄』
「……どういうこと?」
『そのまんまの意味だよ。よーく考えてみればわかるはず』
「もったいぶってないで教えてよ」
『……運命の歯車はもう止まらない。貴方達が何をしようと、絶対。私は傍観者に徹する。この世界の行く末はどうなるか……楽しみにしてるよ。じゃ、またね』
「ちょ、ちょっと!サティア!!」
少女は少し表情を緩め、空に溶けるように消えていく。
その表情は、憂いていたのにサフィラは気が付いた。
「……ねえ、サティア」
答えなど要らない。
ただ……それを話さずにはいられなかった。
「助けたいだけなんだよ。ゼシカを……。仲間なんだもん。ゼシカの事だから絶対何かあるはず。だから……」
偽りのない、真意。
その言葉は決意が滲んでいた。
「私は、見捨てたりなんか、諦めたりなんかしない。絶対に」
塔に吹き込む風が、笑ったような気がした。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第100話 ( No.279 )
- 日時: 2013/04/23 18:50
- 名前: フレア (ID: ZTxzplLx)
両手を広げた美しい女性の石像。
それがリーザス像と呼ばれるものだった。
両目に填められているのは赤い宝石。
その宝石がサフィラとメイルを見つめていた。
息を呑むほど光彩が美しく、汚れた心を浄化してしまいそうな程だった。
「ピキッ!?」
「貴方は……」
『私はリーザス。遠い昔に生きていた者です』
女性はにっこりと微笑んだ。
金髪の長い髪に意志の強そうな碧の瞳、身を包むのは上質なローブで、言わずもがな美人だった。
ただし先程見た少女同様、半透明。
既にこの世の者ではない印だ。
『貴方達にお教えしましょう。長い歴史に忘れ去られた賢者の血の話を……』
「賢……者……?」
『私が生まれたクランバートル家は、伝説の七賢者の血を受け継ぐ由緒正しき家系でした』
「……??」
『しかし、ある代でクランバートル家は賢者の血を失いました。継承者である私がアルバート家に嫁いだ為です』
「あ、アルバート家って……!」
ゼシカの家だ。
もっとも、今や彼女はその家族とは絶縁してしまっているが……。
『以来、賢者の血はアルバート家に受け継がれていきました』
「……はあ」
『ですが、その賢者の血も憎き魔の力により絶たれたのです。継承者であるサーベルトと共に……』
「……っ!!」
『賢者の血が絶たれたとはいえ、アルバート家が私の血筋である事には変わりはありません。アルバート家の血を絶やさぬ為なら、出来る限りの力を貸しましょう』
像の瞳に埋め込まれたクラン・スピネルが二つ、地に落ちる。
暗い中だが、赤く神秘的に輝いていた。
『ゼシカの事を、頼みましたよ……』
リーザスは、微笑んだ。
先程のサティアと同様に、淡く、宙に溶けて消える。
「……賢者の血……」
二つのクラン・スピネルを拾いながら、サフィラは呟く。
「…………ドルマゲスは何がしたかったんだろう……」
かつてここで一つの命が奪われた。
邪悪なる者によって。
ただ、ドルマゲスと戦っているとき、何か違和感を感じた。
戦いを、殺し合いを心の底から楽しんでいる風に見えた。
しかし、もっと何か、もっと邪悪な、凶悪な者と戦っているような気がするのは気の迷いのせいであろうか。
「……時空の扉が開いたことの原因はもっと別のとこに……?」
「ピキ?」
「あ……そろそろ帰ろっか」
「ピキー!」
「そんじゃ……リレミトっ!」
緋色の光がサフィラを包み、消えた。
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第101話 ( No.280 )
- 日時: 2013/04/24 16:19
- 名前: フレア (ID: Vkpu3Lr3)
とある場所の丘にある小さな小屋。
その小屋を、一人の少女が扉を開ける。
「……こんにちは」
「お……!?お前、エミ坊かっ!?」
「おじさん、お久しぶりです」
狭い部屋に入る少女は、驚いたまま固まっている大男に笑って見せた。
「相変わらずチーズばかり食べているみたいですね。栄養バランス崩しますよ?」
「お前そんな事より今までどこに……!エイトとは会えたのか!?」
「……会えましたが記憶が無くて最早私の知っているエイトではありませんでした。ま、良い仲間と巡り会えたみたいで幸せそうでしたがね……」
「そっ……そうか……」
大男は話題を変えるように少女の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「……お前、変わっとらんなぁ……。今年でいくつだ?」
「18です」
「……18だと?それなのにまだ…………」
「どういう意味ですか?顔のことですか?身長のことですか?それとも胸のことですか?」
「全部だ」
「……即答ですか」
「いやいや、まあ変わっとらんようで安心した。そうだ、亭主はいるのか?」
「……まさか。まだ18ですよ?」
「ん?お前らの両親もそん位だったろ」
「初耳です」
「とにかく立ち話もなんだし席に着け。美味いチーズがあるんだ」
「……またチーズですか」
少女は苦笑した。
大男は少女の様子など気にも留めずにご機嫌な様子で袋からチーズを取り出した。
「そういえば、お前は今どこに住んでいるんだ?」
「サザンビークです」
「……お前があんな都会に行けるようになるとはなぁ……。やっぱ長生きはするもんだなぁ」
「そんな風に言う歳でも無いでしょう。まったく……」
「はははっ!まあ今日は飲め飲め!!」
「酒は無理です。チーズは食べますが。……ってもう酔ってます?」
「ちくしょー俺もヤキがまわったもんだあああ」
「確実に酔ってますね。水を頭からかぶせないと……」
懐かしいこのやりとりに、少女は思わずはにかんだ。