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ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第102話  ( No.283 )
日時: 2013/04/25 19:19
名前: フレア (ID: R9GAA8IU)

「……ただいま」
サフィラは静かに部屋に入った。
ミーティアが静かな寝息を立てている。
「メイルはどうする?いつゼシカが来るか分かんないし……」
「ピキ!」
「分かった。……行ってきます」
サフィラ達はまら外へ出て行ってしまった。
向かった先はハワードの屋敷。
そろそろ日が昇ってくる時間で、水色の空に星が散りばめられている。
「……ん?」
「この屑めが!!」
目も一瞬で覚めるような怒号だった。
聞き覚えのあるその声は、明らかにハワードのものだ。
「貴様は恩を仇で返すつもりかっ!!」
「め……滅相もございません!」
続いて聞こえたのは気の弱そうな青年の声。
「信じてください!私はただいつも道理レオパルドにご飯を……」
「馬鹿者!レオパルド様と呼べ!」
「バウッバウ!!」
どうやらレオパルドというのは犬らしい。
威勢の良い咆哮がとどろく。
「おお、そうかそうか。お前も気分が悪いか。無理もないのぉ。毒を盛られたばかりか、あんな愚か者に気安く呼び捨てにされたのではなぁ」
「信じてください!私は断じてレオパルド……様のご飯に毒など持っておりません!」
「言葉だけでは信じられんな。ならば儂が見ている前でその皿のご飯を食って貰おうかな」
「……ピキっ!!」
「メイル!!」
事が済むまでじっとしていようとしていたサフィラとメイルだが、たまらずメイルはハワードに体当たりした。
「ぬわっ!」
「バウ!グル……グルルル……」
レオパルドがメイルに飛び掛かろうと体勢を組む。
ハワードと同じくらいの大きさの漆黒の犬。
組み合ったら勝負は見えている。
「この……糞スライムがっ……!」
「ハ、ハワード様!?」
メイルは呆気なく振り払われ、地面に叩き付けられる。
「ピ……」
「バウ!」
「せあっ!!」
「レオパルドちゃん!!」
「レオパルド……様っ!」
レオパルドがメイルに飛び掛かる寸前、サフィラが蹴り飛ばした。
柵にぶつかり、悶絶する。
「よくも……貴様!儂のレオパルドちゃんを!!」
「エルニスの言った通りだな。本当に人間の屑。多分チャゴス以上」
サフィラは矢を射るような視線をハワードに向けた。
その視線に思わずハワードはたじろぐ。
「メイル、大丈夫だった?」
「ピキ……」
メイルを拾い上げて彼の砂埃を払うサフィラ。
「貴様っ!自分がどういう事をしたか分かっておるのかっ!!」
「基本的人権を無視してる人を罰してるだけ。あんまりそういうことしてるとねぇ……これあげないよ?」
「そっ……それはクラン・スピネルかっ!!」
「ご名答。…………っ!!!」
言葉を続けようとしたサフィラに、衝撃が走った。
「凄まじい魔力の気配……!!」
魔力の渦が発生し、雷鳴が鳴り響く。
「くっくっく……せっかく守りは万全にしておきなさいって言ったのにずいぶんと無防備なのね」
ゼシカの声だ。
魔力の渦から、その少女が現れる。
持っている杖が、紅い光を放っている。
「……っ!!早くクラン・スピネルを寄越せ!!大至急結界をつくるっ!!」
「癪に障るけど……絶対戻ってきなよ!!ハワードさんっ!!」
サフィラは二つの宝石をハワードに投げる。
綺麗な放射線を描き、キラキラと輝くその宝石はハワードの手に収まった。
「儂が戻ってくるまで絶対に死ぬなよ!!」
そう言い捨ててハワードは屋敷へ向かった。
駆けていく主人の背中をちらりと見てから、チェルスはゼシカの前に立ちはだかった。
「ここから先は一歩も行かせないぞ!!ハワード様には指一本触れさせないっ!!」
「ハワード……?ふふっ……」
ゼシカは小馬鹿にしたように笑った。
「何がおかしい!」
「悲しいわ……。自分の血に刻みつけられた大いなる運命を貴方はまだ知らないのね……」
「何を……!」
「私が狙っていたのはあんな見せかけだけの男じゃないわ。この杖が全てを知っているの」
寒気がした。
同時に、殺気も、憎悪も。
「私の狙いは、かつて暗黒神ラプソーンを封印した七賢者の一人、大呪術師クーパスの末裔……チェルス、貴方の事よ」
「!!」
「ゼシカ……!?一体どうしちゃったの……!?」
サフィラの叫びは、無視された。
その代わり、ゼシカはチェルスに近づいていく。
杖の尖った柄を構えて。
「悲しいわね。貴方の命を守るべきその男が、その事をまるで覚えていないなんて」
「くっ……来るな!!」
「はあぁっ!!」
きぃんっ!!
杖が弾かれる。
ゼシカとチェルスの間に、サフィラが割り込むように剣を構えていた。
「チェルスさん、逃げてください」
「でも……!!」
「いいから早く!!」
「は……はい……」
有無を言わさぬ声に、チェルスも弱々しい声で返事し、走り去った。
「……ふふっ、いいわ。どうせ貴方と戦うのは避けて通れないと思っていたもの」
「……メイル」
サフィラが肩の上にちょこんと乗っかっている小さなスライムに
「逃げて」
「ピキっ!!ピキピキーっ!!」
「そんなこと言っている場合じゃないの。早く」
「ピキィ……」
悲しそうな目をして、メイルはサフィラを見やる。
「早く!!」
「ピ……ィ……」
メイルはサフィラの肩から地に飛び降り、その場から逃げる。
「……それでいいんだ」
小さなスライムを見ながら、彼女は呟く。
「……ふふふっ……」
「何がおかしい。ゼシカ」
「……ふふふふっ……貴方の絶望しきった顔、今から見るのが楽しみだわ……」
「……貴様は誰だ?」
鋭い目つきで、ゼシカに問う。
「ゼシカなら人が苦しむ姿を見て喜んだりしない。貴様は誰だ?」
「そんなことどうでもいいじゃない。それよりも……」
ゼシカは、杖の宝玉がはめ込まれた先端を向ける。
「殺し合いましょ?」
「……いいだろう」
殺気が、一気に膨れあがった。