二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第103話 ( No.288 )
- 日時: 2013/04/26 18:21
- 名前: フレア (ID: QXDbI9Wp)
ゼシカはくるくると持っている杖を回す。
宝玉が一際紅く輝く。
「え……?」
「メラゾーマ」
空中に巨大な炎球が現れ、サフィラに向かって一直線に降り注ぐ。
「……いつそんなもん覚えたんだ」
ぎりぎりかわしたサフィラが引きつった顔で呟いた。
「マホトーン!!」
剣を持っていない方の手から蒼い光が解き放たれる。
魔法を封じる呪文、マホトーンだ。
……だが
「メラゾーマ」
「嘘……!効いてない!?」
再び唱えられた最大炎熱呪文を身を翻して避けるが、サフィラの表情に余裕はなくなった。
それに続いてさらに嘆きたくなるような事態が。
「闇を住処とし狂気を食らう夢魔どもよ、死の眠りへ誘え!」
ゼシカが杖を勢いよく振り下ろす。
すると、見えている景色の一部が歪んだ。
「……!!」
影……とでも言うべきか。
翼がある悪魔のように見えるが、とにかく黒。
唯一色があるその目は、何の感情も込められていない、黄土色の深い奈落のよう。
三体いるその影……名付けるならばシャドーは、ばらばらに散らばったかと思うと、消えた。
「……っ!!はっ……放せっ!!」
気が付くと、シャドーの内の一体がサフィラの腕を後ろに回し、拘束していた。
剣が地に落ち、カランッと乾いた音を立てる。
「……案外大したことないわね」
ゼシカの笑みが消えた。
そっとサフィラに歩み寄りながら、つまらなそうな言葉を吐き出す。
「結局は魔王なんてそんなものなのね」
「…………」
サフィラは、真っ直ぐゼシカの目を見た。
負の感情に苛まれそうになるが、それでも。
「……気に入らない」
唐突にゼシカがそんなことを言ってきた。
「なぜ貴方は希望を失わない?この期に及んで説得するとかそんな馬鹿なこと、考えていないわよね」
「……ははっ……ははははっ……」
「……」
「そんなこと考えるわけ無いじゃないか。私は貴様を倒そうとしているだけ。ゼシカは、絶対元に戻すから」
「…………気が変わったわ」
「……?」
ゼシカが杖を振りかぶる。
「いたぶって殺してあげようかと思ったけど……私、貴方みたいなのは反吐が出るほど嫌いなの。まるであの賢者共みたい……」
「……あああっ!!」
シャドーの手がサフィラの背を貫通している。
血が溢れ出て、常人なら意識どころか命さえ失うかもしれない程の傷を負っていた。
「……」
ゼシカは無言でサフィラの首を右手一本で締め上げる。
サフィラの両腕はだらんと下がり、顔は徐々に青ざめていく。
最早抵抗すら出来ない。
薄く唇に笑みを浮かべたゼシカが、杖の凶器のような先をサフィラに向けた。
「……死ね。……っ!?」
まさにとどめを刺そうと振りかぶっていたゼシカが飛来してきた真空波を屈んで避けた。
ゼシカの手から放されたサフィラが地に落ち、人形のように動かない。
それにエイトが駆け寄り、回復呪文を掛けた。
「大丈夫?」
「エイト……」
「メイルが教えてくれなきゃ君、死んでいたよ」
「メイルが……?」
サフィラの霞んでいた視界は、だんだん傷が癒されることによって見えるようになってきた。
エイトの左ポケットから「ピキっ!」とサフィラの肩に飛び移るメイル。
「そっか……ありがと、メイル」
「ピキーっ!」
「さ、早くみんなに加勢しよう」
「分かった!」
サフィラは地べたに落ちている剣を素早く取り上げた。