二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエストⅧ 勇者と魔王の軌跡 第36話 ( No.49 )
- 日時: 2012/09/26 16:30
- 名前: フレア (ID: 5DiXAqe.)
五人はマイエラ修道院を一気に駆け抜ける。
橋は未だに炎が燃えさかっていた。
「水の精霊よ!汝の持てる力の全てを我に授けよ!
全てを焼き尽くす炎をこの世から消し去り、
氷結の静寂をもたらし給え!マヒャド!!」
サフィラが呪文を大声で唱えると炎は氷と化した。
橋を走って渡ったが、館の入口には鍵がかかっていた。
「ここしか扉無いの!?」
「ああ!こうなりゃ実力行使だ!
こんだけ人数いりゃあ、どうにかなる!」
五人は顔を見合わせ頷くと勢いよく扉に体当たりした。
すると、扉が開き先頭に居たヤンガスは
ずさぁぁぁと音を立てて前に転がる。
「これは・・・!!」
館の中には気絶している者、大怪我を負っている者が倒れていた。
「うあああああ!!」
二階から悲鳴が聞こえる。
犯人は上の階に居るのだろう。
五人は階段を駆け上った。
そこには宙に浮いてにやついているドルマゲスと、
数人の倒れている騎士と、
オディロを背に守っているマルチェロが居た。
ドルマゲスはサーベルトを殺したあの杖を振り上げる。
すると、マルチェロは吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた。
「兄貴!」
ククールはマルチェロに駆け寄る。
「命令だ・・・!聖堂騎士団員ククール!!院長を連れて逃げ・・・」
マルチェロの言葉の途中でククールは
マルチェロと同じように壁に叩き付けられた。
なにか見えない力が働いているように・・・。
「くっくっく・・・これで邪魔者は居なくなった・・・」
ドルマゲスはオディロの方を向き、不気味に笑う。
「っ!!させない!!」
エイトが叫び、剣を抜きドルマゲスに飛びかかる。
しかし、ドルマゲスは笑いながら風の最上級呪文・・・
バギクロスを唱えると、エイトの体には無数の傷が刻まれる。
「うあぁ!!」
「光の精霊よ!
我にその加護をもたらし、その力を我が仇敵の前で解ほ・・・」
サフィラが爆発呪文を唱えようとするとドルマゲスは
「全ての魔力は無に帰する。
汝が言葉の一つ一つは、手枷足枷となってその身を縛り付けよ。
精霊界も天界も、汝の前には開かれるな。汝の言葉は心に届かぬ。
マホトーン」
素早く魔法を封じる呪文を唱え、サフィラの呪文は封じられる。
「炎の精霊よ!
古の掟と誓いにより、我にその力を!
地獄から舞い戻りたる亡者を紅蓮の劫火で燃やし尽くせ!メラミ!!」
ゼシカは炎の呪文を唱えるが、かわされる。
「うおりゃぁぁぁぁぁ!!」
ヤンガスは斧で気合いの一太刀を喰らわせようとするが、
いとも簡単に受け止められ、はじかれる。
もうここにはドルマゲスに勝てる者は居なかった。
「待て待て待てーい!!」
階段の方で声がした。
一同が振り返るとそこにいたのは緑色の魔物・・・トロデだ。
「久しぶりじゃなドルマゲスよ!!」
「これはこれは・・・トロデ王じゃありませんか」
ドルマゲスは優雅にお辞儀をする。
「城の者達を本の姿に戻せ!!
貴様のせいで今も皆苦しんでおるのじゃぞ!!」
ドルマゲスは杖を振り上げる。
杖先には膨大な魔力がたまっていく。
ドルマゲスは杖を投げた。
トロデの方に。
エイトが傷だらけの体を無理矢理起こしてトロデをかばおうとする。
時間が、すべての事がゆっくりと感じた。
ずしゃあ!!
杖が体に刺さった音がした。
しかし、体に杖が刺さっていたのはトロデではなくオディロ・・・。
オディロがトロデをかばったのだ。
ドルマゲスは薄笑いを浮かべて手招きするような仕草をすると、
ドルマゲスの手元に杖が戻っていく。
「・・・悲しいなぁ。お前達の神も運命も私の味方をしてくださるようだ」
「ドルマゲス!!貴様の目的は何だ!三人も殺して!!」
サフィラがこれまでに無いほど声を荒げる。
「いずれ分かるだろう魔族の王よ。
もっともお前は称号だけの非力な王だが」
杖が赤く光る。
「もうここには用はない」
ドルマゲスの後ろにあったステンドガラスが割れる。
「・・・さらば皆様。ごきげんよう。きーひっひっひっひ!!」
ドルマゲスは不気味な笑いを残して
ステンドガラスが割れたところから消えていった。
「ドルマゲスゥゥゥゥゥっっっっ!!」
エイトの叫びが虚しく空にこだました・・・・・・。
- ドラゴンクエストⅧ 勇者と魔王の軌跡 第37話 ( No.50 )
- 日時: 2012/10/18 11:13
- 名前: フレア (ID: R5Q2oYCj)
サフィラは高く跳躍し、修道院の屋根に登って空を仰いだ。
月が不気味なほどに綺麗だった。
あの後、次の日には院長の葬式があるからと言われ、
トロデとミーティアを除く四人は修道院に泊まることにした。
しかし、サフィラはなかなか寝付けずに少し風に当たることにした。
すぅっと風が吹き、サフィラの長い髪がなびく。
月の光が髪に反射して美しく輝く。
——称号だけの非力な王。あいつの言う通りだ。
私には人一人守れやしない。
魔族の王にもエルフにもなれなかったただの生き物。
サフィラの目からすっとルビーの涙が落ちる。
——守らなきゃ。仲間を、人間達を守らなきゃ……。
自然に道具袋からある物を取り出していた。
黄金の腕輪……。
オセアーノンから預かった膨大な魔力を秘めている腕輪。
——人間を……守れるように私も覚悟を決めよう……。
サフィラは覚悟を決めて腕に黄金の腕輪をはめた。
その瞬間、サフィラを中心にして闇の波動が広がった……。
翌朝、冷たい雨の中オディロ修道院長の葬儀は行われた。
ドルマゲスは闇の中に消え、再び行方ををくらました。
どうにか無事だったマルチェロは
その夜に起きたすべてを皆に説明した。
サフィラ達の疑いは晴れたのだ。
しかし・・・・・・。
葬儀に立ち会った皆は院長の死を心から嘆き、
天も惜しみない涙を流した。
雨は夜更けすぎまで降り続き……そして夜が明けた。
ギシィ……
エイトはドアを開ける音で目が覚めた。
もう一日四人は修道院に泊まったのだ。
「目が覚めたみたいだな」
ククールだった。
「……葬式の前にも言ったが
院長の死のことはあんたたちの責任じゃない。
むしろ、あんたらが居なかったら団長まで死んじまってただろう。礼を言う」
「……でも!」
「…・・さて、団長殿がお呼びだ。部屋まで来いとさ。
じゃあな。俺は確かに伝えたからな」
エイトの言葉を遮り、
ククールは言うことだけ言って部屋から去っていった。
「……」
エイトは三人を起こす。
「……おはよう」
「おはようございやす」
「おはよ……」
四人は挨拶を交わす。
だが、いつもより元気が無かった。
マルチェロの部屋に入る四人。
そこにはマルチェロはもちろんのこと、
ククール、トロデ王までもが居た。
「話はすべてこちらの方から聞きました。
あらぬ疑いをかけ、申し訳ない」
「……いえ」
「憎むべきはドルマゲス。
あの道化師には神の御名のもと鉄槌を下さなければなりますまい。
しかし、私は新しい院長として皆を導くという役目がある。
……そこで、です。
こちらのトロデという方の話では
皆さんもドルマゲスを追って旅しているとか」
「……?」
サフィラはマルチェロが何を言おうとしているのか分からなかった。
「どうでしょう?ここにいる我が弟ククールを
同行させていただけませんか?」
「……」
「ククール。今修道院を離れても問題のない者はお前しかいないのだ」
「…俺が邪魔だからか。なるほど、分かりました。
それほどおっしゃるならこいつらについて出て行きます。
院長の敵はおまかせを」
ククールは乱暴にドアを開け、部屋を出て行く。
「儂は姫と一緒に馬車でまってるからな〜」
とトロデはククールの後に続く。
「では!皆さん!ククールをどうぞよろしく。
旅の無事をお祈りしています」
マルチェロは礼をして言った。
第4章 完