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ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第43話  ( No.78 )
日時: 2012/10/23 10:12
名前: フレア (ID: Q.pGZPl6)

「いやー皆さん。本当にありがとうございました!!」
イシュマウリにより見せられた記憶によって完全に立ち直ったパヴァンは笑顔で言った。
その顔には陰りが無い。
「いえ、お礼ならイシュマウリさんに言ってください」
「謙遜しなさんな。皆さんがあの丘へ行ってくれなければ願いは叶わなかったのですから」
今、五人は王を立ち直させてくれたという理由でもてなされている。
まともに王の話を聞いているのはエイトとゼシカくらいであった。
サフィラとヤンガスは目の前の料理に夢中で、バカリスマはかっこつけて半分ほど話を聞いていないように見える。
ククールが髪をかきあげるとほんの少し開いた扉から覗いている女性が黄色い歓声を上げた。
「イシュマウリさんはどこに行ったんだろう……」
話を聞いていない三人を見てイラッと眉を動かしつつ、エイトは呟いた。
今まで骨付き肉にかぶりついていたサフィラは顔を上げた。
「私の役目は終わった。そろそろ月の世界へ帰ろうって消えていったよ」
「結局あの人は何だったんだろうね……」
ゼシカは首を傾げた。
「とにかく、あなた方はこの国の恩人です。もし、お困りごとがあったらおっしゃってください。
何かお力になれるかもしれないので」
パヴァンの言葉にエイトはありがとうございます、と言ってから席を立ち上がった。
「みんな、そろそろ行こう」
「うん、そうだね。早くドルマゲスを追わなく……ドルマゲス!!パヴァン王!
この国に不気味な道化師が来ませんでした!?」
サフィラは切羽詰まった様子で訊いた。
「いえ……来ていません。……そういえば、不気味な道化師が海を渡って西の大陸に向かったと聞いたことがあるな。
結構最近に」
「西の大陸に行く定期船ってあります?」
ゼシカはパヴァンに尋ねた。
「いや、無いですね。このところ魔物達も凶暴化してきているから……。
船を貸してあげたいが、この国は船を一隻しか所有していないもので……。申し訳ない」
「いえいえ、せっかくこの国は立ち直れたんだから他所の国との交流もしなくてはいけませんし……。
では、僕達はこれで」
「はい、気をつけてください」
パヴァンが五人を見送るとき、とても心配そうな顔になっていた。

「いいのう……お主らだけ旨い物が食べられて………」
アスカンタから外に出ると、トロデが拗ねていた。
それもそのはず、昨日の夕方からトロデとミーティアは放置状態だったのである。
「おっさん……その姿だからしょうがないじゃないでがすか……」
ヤンガスが慰めるが、トロデはそっぽを向く。
「この拗ね方は王族そのものだな。俺には何となく分かる」
ククールは呆れている。
「ヒーン」
ミーティアはククールに同意を示すかのように鳴いた。
「あ!そうでがすパルミドに行きやせんか!?」
ヤンガスはポンッと手を叩く。
「あの町は小汚ねえ所ですが、これがどんなよそ者でも受け入れる懐の深い所でしてね。
そこならおっさんも安心して入れると思うんでがすよ」
「でもこれ以上寄り道するわけには……」
「いやいや、あの町には腕の良い情報屋がいるんで、ドルマゲスとか船の事も色々分かると思うんでがすよ」
「じゃあ、取りあえずそこに行こうか。ドルマゲスも西の大陸に行っちゃったっぽいし」
エイトは地図を広げて言った。
「パルミドって町はどこにあるの?」
ゼシカは訊く。
「あ、その必要はないよ」
「……?どうしたのサフィラ」
「ルーラにちゃんと詠唱を付ければ他人の記憶からも一瞬でその場に行くことが出来るんだ。
まあ、一回行ったことがなければできないけど」
「ヤンガス、一回行ったことがある?」
エイトがヤンガスに訊いた。
「パルミドはあっしの故郷でがすから」
「そうなんだ。じゃあいくよ……。
光を司りし精霊達よ。彼の者の記憶を辿り、我らを彼の地へ誘え。ルーラ!!」
呪文を唱え終わると同時に一行は青い光に包まれ、バシュンと音を立てて消えた。


第5章 完