二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ドラゴンクエストⅧ 光と闇の軌跡 第46話 ( No.81 )
日時: 2012/10/23 14:40
名前: フレア (ID: srAErIwi)

十分後。
カジノの入口の扉が開いた。
「遅いよ、サフィラ。ほら、早くトロデ王の所にってうわぁっ!!」
「……?どうしたの?」
エイトが驚くのもそのはず。
サフィラはマジカルスカートではなく、
ビキニアーマーと呼ばれる女剣士が纏っているような露出度の高い鎧を着ていたからだ。
純情な少年を刺激するには丁度良かった。
「……?」
サフィラは何でエイトが顔を赤らめて自分から目を逸らすのかが分からなかった。
「ちょっ……サフィラ……何でそんな鎧を?」
「はぐれメタルの鎧。男性用のも試着してみたんだけどね……胸の辺りがきつくて結局女性用のにしたんだ。
肌が結構露わになってるけど、精霊の加護とかで魔物の攻撃を防げるらしいよ」
「はぁ」
確かに、物は良い。
エイトは優れた観察眼で物を正確に見分けられる。
この鎧が本物であるというのはすぐに分かった。
「あ、あとこの剣もコインと交換して貰った」
サフィラが腰に差しているのは鍔に隼の意匠が施された隼の剣と呼ばれる物。
軽くて強い金属で作られている、手にするとハヤブサのごときスピードで攻撃することが出来る剣。
「と、これ」
サフィラがエイトに渡したのはずっしりと重たい袋。
「何が入ってるの?」
「十万G」
「……どれだけ稼いだの」
「数え切れないほど。スロットマシン壊れていたのかな」
「……はぁ」
首を傾げるサフィラとため息を吐くエイト。
「トロデ王の所に行こうか」

「よぉ姉ちゃん、久しぶりだなぁ」
エイトと酒場へ向かう途中にサフィラは荒くれ男に話しかけられた。
「これが例の兄貴を投げ飛ばした娘ですかい?」
「なかなかの上玉ですなぁ」
取り巻きらしき数人の男達が口々に言う。
サフィラとエイトは無視して進む。
「おいおい……つれねぇなぁ」
荒くれ男はサフィラの腕を掴む。
「……放してください。貴方は誰ですか?恨まれることやった覚えも無いのですが」
「俺のことを忘れたのかよ。船着き場でおまえに投げ飛ばされた男だ」
正確に言うと、サフィラは投げ飛ばしたのではなく蹴りを入れたのだが、
もの凄い勢いで吹っ飛んでいったため投げ飛ばされたと勘違いしているのだろう。
「ちょっと来て貰おうか」
「彼女を放してください」
エイトが男の腕を掴み、静かに、しかし凄みのある声で言った。
「あぁ?てめぇ関係ねぇだろ?引っ込んでろ」
「エイト、ここは私が片づけるから」
「あ?」
「もう一度言います。放してください。放さないと……」
厳しい目でサフィラは言った。
「はんっ。この状況でお前に何が出来るんだよ」
男達は嘲笑する。
突然、男が握っていた腕が消えた。
腕だけではない。
姿そのものが。
「何っ!?」
チンッと剣を鞘に収める音がした。
次の瞬間、男達がが着ていた服はバラバラに破れ去った。
「どうします?このまま続ける?」
男達はガクガクと震えながら引きつった顔で首を振った。
この男達が感じているのは恐怖。
——いつも私はそうだった。みんな、怯えて。友達が一人ひとり消えていって……。
ほんの少し寂しさを感じたが、サフィラは気にせずに
「エイト、行こう」
と感情の無い声で言った。
——エイト達は何で私を《人間》として見てくれる?
そんな疑問が胸に広がっていった。
「サフィラ?大丈夫?」
エイトは心配そうにサフィラの顔をのぞき込んだ。
「何で君は私を《人間》として見てくれているの?」
サフィラはエイトに訊いた。
エイトは少し戸惑った顔をして言った。
「え……そりゃあ魔族とか人間とかそういうの関係無しに生きていきたいって思ってるからかな。今はまだ、難しいけど」
「………」
サフィラは刃を飲んだような表情になった。
——そんな事、出来ないって分かってる。絵空事だって……。でも、何なんだ?この気持ちは……。
「サフィラ?」
サフィラは自分を呼ぶ声で我に返った。
「あ……うん。……いつか、そんな時代が来るといいね……」
「うん……。同じこの世界の生き物同士で争うのは悲しいから」
エイトは空を見上げた。