二次創作小説(映像)※倉庫ログ

MIZKI ( No.53 )
日時: 2012/10/13 20:38
名前: はるく ◆2bvow6Zq4g (ID: eUekSKr/)

自分が勝手なのは分かっていた。
マスターに刃を向けて、傷つけて、勝手に嘆いて逃げ去って。いくらあたしがボーカロイドだからって許されないことだ。

かれこれ5分ほどこの道を歩いているわけだが、あたしとすれちがう人達は皆、あたしを見て驚きを隠せずにいる。
それどころか、真っ赤に染まったこの服を見て走り去って行く人もいた。無理もないのだけれど…

「うわあぁっ…! 危ないですっ…!!」

いきなりにも前方から何かがやって来た。あたしがあたふたと慌てている間にそれは近づいてきて、勿論、避けることができなかったあたしは『それ』と衝突するはめになったのだ。

「……った………」
「ご、ごめんなさい!!怪我とかしてないですか……ってあああっ!血出てるじゃないですか…!」

衝突したときにどこかで切ったのだろう。あたしの足からは血が出ていた。そしてそれが足だけじゃなく、他にも色々と怪我してしまったことに気づくのは、もう少し後になる。

それにしてもこのぶつかった相手、聞いたことのある声だ。どこか懐かしい、今となっては聞き飽きてしまった声。

「本当ごめんなさい…えと…あの…家、すぐそこなんで……手当てするのでついてきてもらってもいいですかね…?」

嗚呼、分かっていた。あたしはボーカロイド。同一人物がいてもおかしくない存在。それなのに…それなのに、どうしてこんなところで会ってしまったのだろう。

「えっと…見ない顔ですね……名前、聞いてもいいですか?あ、私…私は…」

聞きたくない。
もっと言うと、会いたくなかった。
あたしが、あたしが一番恨んだ相手…

「私の名前は、ミズキっていいます。」

それは…紛れもなく『私』だった。