二次創作小説(映像)※倉庫ログ

サンドリヨン ( No.76 )
日時: 2012/12/21 20:16
名前: はるく ◆2bvow6Zq4g (ID: vJF2azik)

時刻は夜8時ジャスト。まるでそれを知らせるかのように、舞踏会開始の金が鳴り響いた。それを聞いた人々は、途端に歓声をあげ、城の中で円を描くように踊りだした。

「はぁ…」

「どうしたんですか?浮かない顔して…」

そう俺に声をかけたのは、隣の国の姫、ミスティア・ワンリールだった。ミスティアは相変わらずの清楚でまじめそうな顔を俺に向け、呼び掛ける。

「ロムが開いた舞踏会でしょ?貴方が楽しまなくて誰が楽しむんですか」

ああ、やっぱりそう言うよなぁ…
舞踏会の招待状には、きちんと『ロム・レイツ』、俺の名前が入っていたのだ。しかも王家の印で。

「俺が開いたわけじゃないんすよ…」

ミスティアは「はぁ?何言ってるのこの人」というのがいちばんしっくりくる顔をして俺を見た。
まぁ…そうだよなぁ…王家の印で『ロム・レイツ』だなんて、俺が出した以外にありえないだろう、はたから見れば…
実際その印は俺しかもっていないし、普段使えるのも俺しかいない。当たり前だろう。

「じゃあミスティア、俺がそんな面倒くさいもの開くと思えるか…?」

俺がそう言うと、ミスティアは納得したようで、頷きながら「有り得ないですね」と呟いた。

「じゃあ誰が出したっていうんですか、王家の印を一般人が勝手に使ったとすれば大事態ですよ?」

「あぁ…それは……」

ミスティアの質問に答えようとしたときだった。何処からかドタドタと音をたてて誰かが走ってきたかと思えば、俺の姿を見つけるなり「兄様あああああああ!!!」と叫ぶ少女がいた。
俺はミスティアに視線を向けると、「アレアレ」とでも言うように走ってくる少女を指差してみせた。

「ああ…そういうことですか……それは大変ですね」

ミスティアは少し笑い気味だ。少し馬鹿にしているようにも聞こえた。