二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ボーカロイド『RUI』の誕生 ( No.8 )
日時: 2012/09/09 21:22
名前: はるく ◆2bvow6Zq4g (ID: OBZwk3oo)
参照: http://www.kakiko.cc/youtube/index.php?mode=view&no=6581

「はあぁ…」

私はその部屋の隅にどかっと座ると、今までの記憶を辿るように思い出した。

一年前、マスターが私を買ってくれて、それから嬉しくて嬉しくて毎日練習した。
マスターも最初のうちは練習に付き合ってくれたけど、少したつと新しいボーカロイドの方ばっかりで、私は放っておかれたままだった。

そして週に一回ほど行われる音声テストでは、毎回注意を受けるのは私だけ。
他の皆は凄く綺麗な声だった。

「何であんたには出来ないの?」
それがマスターの口癖になっていた。

私は、出来るならあの頃に戻りたい。
マスターが私を買ってくれた、あの頃に……
そして歌うの、また、皆でー………

私の口からこぼれ出る音は、懐かしい、あの頃皆から教わった曲だった。

誰も信じられないなら
誰かを信じてみたいなら
一人になろうとなんかしないで
一人でいようとなんかしないで
いつまでもそれが出来ないのは
苦しくて仕方がないのは
誰のせいだ
君のせいだ
僕の…………っ…!

声が出ない……
やっぱり駄目なんだ。
私は、私はやっぱり歌えない…

「あの頃に戻りたい…なんて…そんなこと出来るわけないじゃないですか……」

暗い部屋に、私だけの声が響いた。

「やっぱり…そうなんじゃないですか……誰も、誰もいないんじゃないですか………」

暗い部屋、私の声は何度も響き、そして皆の綺麗な歌声に、かき消されていった。