二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編オリキャラ募集 ( No.123 )
- 日時: 2012/11/24 11:32
- 名前: noeru (ID: sMzMY2aV)
今日もまた、コンコンと窓を叩く音が部屋に響く。
窓を開けると、少し冷えた風が入ってくる。その向こうには、紙飛行機を握ったユキがいて、いつも楽しそうに笑っている。
「 。」
紙飛行機は真っ直ぐに、いつもの軌道を通って掌に着地する。でも最近は投げる力が弱くなって、ふらふらとやっと掌に落ちてくる。紙飛行機も、綺麗に折ってあったのに少し折り方が下手になってきた。手紙を開くと、紙の切り方も汚くなって、文字も少し大きくなって漢字が減って、内容もずっと短くなった。
『学こうはたのしそうでうらやましいな。
ぼくも早くこえがもどって、学こうに行きたいよ。
べんきょうもさいきんできなくて、ベッドからおきるのが辛くなってきたんだ。
またにゅういんも決まったし、おくすりもまたふえました。
今どはしばらくかえってこれないかも・・・』
手紙を読み終えると、いつもは少し会話をしていた。でも今日も昨日も……1週間ほど前から、すぐにユキは『ばいばい』と口パクをして部屋に戻るようになった。深夜に苦しそうに咳き込んでいるのも聞こえる。
俺はここ最近の手紙を並べて、じっくりと読みなおすことにした。最初に机から出てきたのは、一昨日の手紙だった。
『またお薬がふえました・・・
もう毎日6粒ものんでるのに、からだは思うように動かないんだ。
明後日は1日びょういんで検査だし、もしかしたらまた入院するかも・・・
また学校でのこと聞かせてください。
ぼくも学校に行って、友だちが欲しいなあ・・・』
「お兄ちゃん、なに読んでるの?」
突然聞こえた声にびっくりして振り向くと、扉を半分開けてモモが覗いていた。咄嗟に手紙を机に押し込むが、ぐしゃっという音が響いて敢え無く意味もなくなった。
「なあにそれ?手紙?お兄ちゃん女の子みたーい。」
「うるさいな。モモには関係ないだろ、勝手に入って来るなよ。」
なによー、と愚痴を零してモモは部屋に戻っていった。本当に何をしに来たのか分からなかった。手紙を取り出すと、ぐしゃぐしゃになっている。
「あ、言い忘れたけど。」
手紙の皺を伸ばしていると、モモがまた扉の向こうから覗き込んできた。
「今度またお隣の子が入院するんだって。」
「知ってるよ。」
手紙をまた無造作に机に押し込む。モモは不思議そうなフリをしているが、絶対に気付いている。
「それで、今度の土曜にお見舞いに行くんだって。」
唖然とする俺を残して、今度こそモモはいなくなった。