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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編オリキャラ募集 ( No.134 )
- 日時: 2012/11/24 16:54
- 名前: noeru (ID: GjhzkEUG)
「失礼しまーす……」
ガラガラと大きな音を立てて病室に入ると、見慣れた少女が横になっていた。
白い病室の大きなベッドで、眼を開くことも動くことも話すこともしない。身体中に管が通り、酸素ボンベや点滴と繋がっている。静かで静かで、心拍数を示す音以外は何もない。窓にはカーテンが閉めっきりで、外部との接触を遮断している。
「……いらして頂いて、ありがとうございます……。……はい、昨日急に容体が……せっかく……」
母さんは隣の家の、ユキの義母親と廊下で話している。モモは急用が入ったとかで来ていない。つまりこの病室にはユキと俺しかいないのだが、正直言って暇で仕方がない。何せ、ユキは今までと違ってただ眠っているだけだ。それも、いつ目覚めるか分からない。
普通の人間がこうなったら、大抵はそのまま死んでしまうらしい。
植物人間状態、とでも言えばいいのだろうか。意識があるのかないのか分からない。指1本も、ぴくりとも動かせない。声も出ない。音も聞こえない。瞬きすらしない。肉体のみが、当たり前のように奇跡的に有機物の役目を果たし続ける。ただ呼吸し、鼓動を繰り返す。
「伸太郎、もう帰りましょう……。」
またガラガラと大きな音を立てて、今度は母さんが病室に入ってきた。どうやら話も終わったらしい。適当に返事をしつつ、ちらっとユキの方に目を向ける。
—————このまま帰ったら、もう二度と会えない気がした。
母さんに「先に入口まで戻ってて」と言うと、とても驚かれたが10分だけよ、と言われた。頷くと、母さんたちは病室を離れた。
無機質にただ生き続けることが、楽しいのか分からないけど。
「また明日も来るから。」
握った手は冷たかった。本当に死んでしまったようで、強く握っても温まりはしない。
ただ、少し握り返された気がした。
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