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視界がゆらゆらと揺らめく。

ぼやけた景色が目に慣れない。

病室は妙に明るい。

冷えた身体が暖房で一気に温まる。

意識が、世界がはっきりと姿を現す。


—————僕は、１人じゃなかった。

「シンタロー？」


僕の声帯は、あの擦れた嗄れた醜い汚いみっともない声ではなく、元の声を出していた。


「……本物だよね？」


「……。」


呆然と、唖然と、沈黙が流れる。動かせるのは顔だけ。手足は動かない。声が出て、音も聞こえる。眼も見える。———生きている。

会話が続かない。その前に何を話したらいいのか分からない。どれくらい話せるかも分からない。


「……と、思った。」


「え？」


寒さが和らいで、手足の感覚が戻ってくる。動かせないけど、『生きている』という実感がさらに五感を、心を刺激する。だからきっとこんなことを、他人に、呟いてしまったんだ。


「死ぬかと、思った。ありがとう。」


この人の前では心から笑えることが、嬉しかったです。