二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編オリキャラ募集 ( No.180 )
- 日時: 2012/12/01 18:41
- 名前: noeru (ID: 9dgTjxIn)
あれ、ここは何処かな。
生ぬるいお湯に浸かってるような、むしろ漬けられてるような感じがする。でも息が出来る。生きている。
身体がいつもよりも軽い感じだ。耳元でコポコポと、水槽の中にいるような音に囁かれる。鼓動も滑らかで、あんなに全力疾走した後とは思えない。
最後に走ったのは小学校の6年生の運動会の時のリレーだった。1位でゴールして、ゴールテープを切った途端に意識が飛んで……入院して「もう2度と走ってはいけない」って言われたんだった。「これ以上無理に運動したら、寿命を縮めることになる」。
眼を開くと、明るい世界が広がっていた。
私は大きなビーカーに沈んでる。高さは見上げる程高いけど、ここで腕を目一杯広げることは出来ないだろう。ビーカーというか、ジュースの瓶の中に沈めれたみたいだ。ビーカーの周りは真っ暗で、私の周りの液体が発光している。それなのに周りは見えなくて、まるで液体の光はビーカーの中でしか輝けないように感じる。
私の身体には太いチューブが接続されて、よくよく見るとその先は私のやせ細った喉に繋がっていた。チューブはビーカーの外から伸びていて、私の身体から何かを奪っているのか私の身体に何かを送り込んでいるのか分からなかった。それから驚くほどじゃないけど、私の身体は機械になっていた。
両腕は通常。1つ言うなら左腕の上部に数字で『07』と印刷されている。両足は細い鉄骨の針金のようなものを絡ませて出来たガラクタの脚。裸体の上半身には、ぐるっと線を引いたようにバーコードが印刷されている。髪はずっと憧れていた黒髪で、発光液体の中でプカプカ浮いてる。
聞こえる声に耳を澄ませても、それは聞いたこともない歌だ。
歌詞も聞き取りづらくて、分かるのはこのビーカーの周りの暗闇に人がいて歌ってることくらいだ。
『こ 何処 キ に た 』
聞いたことのある声なんだけど、人間離れした声をさらに機械で加工したような声で、人間の声というよりも純機械音源といった声だ。
『お い クを し 』
『ボ ミ 中 るよ』
段々声がはっきりしてきた。さらによく聴こうとする。それにつれて喉のチューブの色が濃くなっていく。
『キミ 会い い けな 』
『ボクは 処に る 』
喉がヒリヒリしてチューブの色がこれでもかって程濃くなって機械の両足が千切れそうになって上半身のバーコードに胸を痛い程締め付けられて発光する液体が燃えるように熱くなって
『ボクはキミになったんだよ』
暗闇の向こうの赤い血が、僕の目で
ビーカーの破片に埋もれながら僕は夢を見る。
あの人が綺麗だと言ってくれた黒い髪が
彼女が自分の髪と瞳と同じ色だと言ってくれた瞳が
みんなが美しいと賞賛してくれた声が
彼に———愛されたかった僕が。
変わっていく、変えていく
ボクは私になる。