二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編オリキャラ募集 ( No.190 )
日時: 2012/12/12 22:02
名前: noeru (ID: S8AJBgfb)


遠くでね、声がするの。
すごく耳が安らぐ、聞いててもっと眠くなる懐かしい声。
この声はシンタローかな?
この声はアヤノかな?
この声はモモかな?
この声はエネかな?
この声はキドかな?
この声はカノかな?
この声はセトかな?
この声はマリーかな?
この声はヒビヤかな?
この声はコノハかな?
この声は榎本先輩かな?
この声は九ノ瀬先輩かな?
この声は柚野先輩かな?
この声は連くんかな?
この声はエンカちゃんかな?
この声はシオンさんかな?
この声はカゲロウかな?
この声はヒヨリかな?
この声はケンジロウ先生かな?
この声は光のユウキかな?
この声は闇のユウキかな?
この声は本当のお母さんかな?
この声は本当のお父さんかな?


「はぁ〜……お前本当に馬鹿なの?」


—————否、雨樹だった。

真っ白な世界で横たわっている私を、呆れ顔で覗き込む双子の片割れがいた。


「……なんか、話し方違うね。」

「第一声がそれか。まず感謝しろよ。」


いつもはユキって呼ぶし、バカなんていってこない。
そして感謝って何を。あとここは何処なの。


「僕がいなかったら、消えるとこだったんだからな!」

「えっ、私生きてるの?」

「死んでるよ。ってか私って言ってて気味悪くないの?」


消えるとこだった、でも死んでる。どういうことなの?
雨樹がいなければ消えてた。今は消えてない、でも死んでます。訳分からない。
そして今更一人称に文句付けないでください。


「私は私だもん。ほっといてよ。」

「やっぱりそういうきつい言い方がらしいよ。本能的に。」

「話が読めない、変態か。」

「言い換えようか?設定的に。」

「どうでもいいよ。」


昔からそうだけど、雨樹と話してるとなんだか馬鹿っぽくなっちゃうんだよね。
悩みとか不安とか恐怖とか憎悪(?)とか、安心に変わるの。双子だから、じゃ済まないレベルで。


「1つ聞いてもいいかな?」

「なに?」

「前に、雨樹が言ってたじゃん。私のことが好きなんだって。どうして?」

「どうしてって、特に理由なんてないけど。あえて言うなら、ユキがシンタローを好きなのと変わらない。」


なるほど、家族としてだったんだね。ですよねー。
どちらにしても好かれてて嫌っていってたのは随分昔だな。


「とりあえずさ、行けば?」

「どこに?」

「家。」

「帰れるんなら先に言え!」


あれ?私死んでるんじゃないの?帰れんの?ここ何処なの?
それより今の台詞、私じゃないみたいだった。全く別の人みたいだった。


「……あのさあ、まだ気付かない?」

「な、何を?」

「元に戻れる以外ありえないだろ!{声}のpartsに勝ったんだろ?!僕だってそうだ。これで{意識}のpartsを取り戻して、僕たち{肉体}のpartsと……」

「戻るって、何に?」


雨樹の話を遮ると一瞬何か言いたげな顔をされたが、すぐに呆れ顔になってため息を着かれた。何だか一方的に言い負かされてる気がする。これはあれだ、シンタローにうまく言い包められた時。すごい空しい感じね。


「もう、いいや……疲れた。」

「私も疲れてんの。帰りたい。」

「いいけど。帰れるけど。僕も着いていくよ?お前1人じゃ心配だから。」

「はぁっ?!」


咄嗟に反論しようとしたが、真っ白な世界がまるで灯りを誰かに消されたように真っ暗になったので、雨樹がどこに居るのかさえ分からなくなってしまった。


「ユキ、聞こえる?僕だよ。」


眼の前に手をかざして見えるか試していると、雨樹の声が聞こえた。


「雨樹、ここ何処なの?」

「『目に涙を浮かべる話』」


さっきの私みたいに、私の言葉を遮って雨樹は淡々と話す。『目に涙を浮かべる話』?今までたくさんの本を読み、たくさんの話を聞いたけど……初めて聞く題名だ。でもなんだか、すごくあったかい。


「僕らの話。これ以外に、僕らは関わるべき存在じゃなかった。」

「わ、私の話?!」


雨樹は続けた。他にもある話のこと。私はそれに関わってはいけない、登場するはずのない人物だった。

『目に物見せる話』
『目を背ける話』
『目を隠す話』
『目も眩む話』
『目を疑う話』
『目を合わせる話』
『目を醒ます話』
『目を奪う話』
『目に入れても痛く無い話』
『目を逸らす話』
『目を覚ます話』
『目を掛ける話』
『目が冴える話』
『目を欺く話』
『目を盗む話』

そして、本来なら居るはずのない私と雨樹の話。

『目が凍る話』
『目を溶かす話』
『目を潰す話』
『目を覆う話』

『目に涙を浮かべる話』