二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編オリキャラ募集 ( No.192 )
- 日時: 2012/12/13 19:16
- 名前: noeru (ID: /b8.z0qR)
- 参照: 唐突に第1章完結Wオリキャラは第2章で登場!
『目に涙を』……あれ?
白い病室に目を白黒させる。黒で塗りつぶされた光景から、白で塗りつぶされた光景に変わった。
あれ?雨樹、何処にいるの?シンタロー?キド?
返事はない。身体には点滴や人工呼吸器、ベッドの横には酸素ボンベや心電図、冷え切った手には某機械会社の音楽プレーヤーが握られていて、小さ目のヘッドフォンからは何も聞こえてこない。
—————嗚呼、終わっちゃったのか。
此処に来てくれるのは誰?優しい幼なじみ?双子の弟?同じ孤児院にいた友達?大好きだった親友?
否、誰も来ない。
知ってたの。僕は1人が嫌で、虚構の世界に沈んだの。母親は自殺したんじゃないの。母親は風俗店の人間で、僕は捨てられたの。父親は交通事故で『轢かれた』んじゃないの。父親は交通事故で『轢いて』死んだの。双子の弟は生まれてこれなかったんじゃないの。もともと僕に姉弟は存在しないの。幼なじみもいない。孤児院だって友達は出来なかった。親友なんて作れっこない。学校なんて行けなかった。声が戻るはずもない。紙飛行機を飛ばす相手もいない。園田雪芽は———存在しない。存在するのは病室で無意味に枯れるのを待つ僕。もう、名前も分からない、僕。羨ましかったの。それが架空でも構わなかったの。君がいればどんな運命だって笑顔に変えられる気がしたの。名前も分からない僕の残り少ない未来が輝いた気がしたんだ。僕は帰る場所が欲しかった。出られない、病室という世界。此処から出れば、見たかった世界があって。でもその世界に、帰る場所など何処にもなく。かといってずっと此処に居るのも嫌で。本当は此処から出られないと知っていても。
だから僕は———帰りたいから、世界を作った。それが存在するかしないかも関係ない。だって僕が存在しているかさえ怪しいぐらいだもの。僕は虚構の世界を愛した。小さな物語で、些細な幸せに触れた。次元を跨ごうと、時空を駆けようと、空間を変えれど、そこに差異なんてない。ただ意識があるかないかの少しの違い。
ただ帰った。そこが居場所だった。
弱々しく、力強く、音楽プレーヤーのボタンを押す。
大好きなフレーズが脳を直接癒す。
目を瞑ればそこに居るの。
君がいる。鈍感で天然で馬鹿で無知な『私』と笑ってるの。
僕はそれだけで幸せなんだ。
自分じゃなくたっていい。
自分の世界を生き甲斐をカタチにした『私』に
静かに笑いかけてくれればそれでいい。それがいい。
今日も白い病室は賑やかだ。
想像とか空想とか妄想とか
そんなんじゃないの。事実、そこに存在してる。
存在しない僕に、甘い甘い夢を見せる。
何度も言う。声の出ない嗄れた喉で、何度だって叫んでみせる。
実在していて、他人の目に映るかなんて関係ない。
じゃあ他人に僕は見える?通常の病人に、見えないでしょ?
実在するかなんて———そんなに大事なことじゃない。
だって聞こえてきます。
お迎えの足音が。
どうやら僕は最期まで一人みたい。
でも独りじゃないから大丈夫。
いつも通り、目を瞑っていれば終わるから—————
ブツッ——————————、
—————————、
————————、
———————、
——————、
—————、
————、
———、
——、
—、
。
あれ?おかしいなあ。
急に音楽が止まっちゃった。
もしかして……電池切れ?
僕の最期は独りなの?
最期に独りなの?
最期マデヒトリボッチナノ?
思えばあっという間だったな。
無い記憶が、嘘の記憶が渦巻いてる。
いいの、これでいいの。
僕は登場人物じゃないから。
本当の世界で、正しい登場人物が、幸せになってくれたらそれでいい。
結婚とかして子供が出来て、僕を幸せにしてくれた分、幸せになってくれたら、それで、いい。
今もどこかで笑っているのかなあ。
それが知らない人に向けた笑顔でも、笑ってくれてたら嬉しいなあ。
それで、いい、。
これが、僕の罪で、罰だから。
———もっと隣に居たかったなあ。
———冗談言い合って、もっと笑えばよかった。
———食べてばっかりじゃなくて、たまにはご飯とか作ればよかった。
———喧嘩だっていっぱいすればよかった。
———ずっと抱き着いて、離さなければよかった。
———みんなで旅行とかしたかったなあ。
———みんなと一緒に、生きたかったなあ。
こんな独りで辛い思いするくらいなら、
「わたし」なんて、生まれてこなければよかったよ——————
せめて、生まれ変われるならば
目に浮かべる涙は
今度こそ嬉し涙だといいな———
「ずっと、寂しかったんだよ」
Happy end
[今度こそ幸せな終わりを]