二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編オリキャラ募集 ( No.218 )
日時: 2012/12/28 20:53
名前: noeru (ID: sMzMY2aV)



点で描かれたような、箱に小さな穴を開けたみたいな、途方もないくらいちっぽけな星が泳ぐ暗闇を、列車は掻っ切っていく。

暖かな車内、流れていく代わり映えのない風景、ふかふかの座席、漂う古めかしい木材の甘い香り、微かに聴こえる明るいポップス、その全部が今は何だか愛おしい。それ以上に、嗚呼帰れるんだっていう。なんて言ったらいいのかな?帰巣本能、帰巣願望が細胞の1つ1つに染みわたって、なんか考えてないと泣きそうなんですよね。だから、もう2度と乗ることもない列車の世界観を心に刻む。痛い痛いって悪態ばっかの醜い僕を、忘れないように心に刻む。

いよいよ{声}と{肉体}のみの、表の少女に僕が還る。
それで終わるんだ。全てが、終わる。
それが永遠になる。


考え事をしていて気付いた。
—————僕って、何のpartsなの?
余ったpartsは{意識}。
『ユキ』は少女の{肉体}、『ユウキ』は少女の{声}のparts。
そして思い出した。


{記憶}のpartsはドコニアル?


誰に教えられた訳じゃない。
うさぎが語った訳じゃない。
別に僕が知った訳じゃない。
1つのシナリオな訳じゃない。
1つの運命論な訳じゃない。
1つの人生観な訳じゃない。
君に気付いてもらいたかった訳じゃない。
僕だってこんなこと分かった訳じゃない。
じゃあ誰がこんなこと気付かせた?
知らないけど僕は知ってしまったから。

あるはずだ、{肉体}も{意識}も、まして{声}だってある。
何かが足りないんだ。それが{記憶}だった。
少女は何かを願って、GAMEはそれを叶える為に造られた。
願う理由はそうなってほしいから。
少女は{記憶}が欲しかったんじゃないか?
少女は雪の夜に1人で家を出て死んだ。
どうして死んだ?車に轢かれて?落下してきた鉄柱に貫かれて?
違う、きっと凍死したんだろう。


『目が凍る話』


少女は———死にたくないと願ったんじゃないか?

「凍った心は溶かすことは出来ない」

誰が言ったのか、はっきり思い出す。
言ったのは少女だ。かつての僕だ。
僕や『ユキ』、『ユウキ』は[少女の願いを知った誰か]に[造られた]んじゃない。
[少女本人]が[自分を分けて]生まれた。
目的は願いを叶える為。
記憶が欲しい。死にたくない。
両方叶うはずのない夢、願いだったのではないか。
凍った心、心臓が溶けたら嬉しかっただろう。
薄れゆく意識の中、忘れたくないと必死で幸せな日々を思い出したはずだ。
擦れる声を絞り上げて、少年の裏や双子に助けを求めたはずだ。
それを、分けたんだ。
凍った{肉体}、途切れた{意識}、枯れ果てた{声}。
『目が凍る話』はきっと少女の話だったんだ。

『ユキ』は人間恐怖症だった。
きっとそれもその少女がそうだったんだろう。
だからこそ裏の少年は実体化するほどになった。
触れた相手を殺してしまうと言ったこともあった。
きっと少年は触れることが出来なかったんだろう。
もし触れることが出来たなら、その時は少女が消える時だと。
少女は大好きな少年を殺したくなかったから。
精神的に不安定なのも、精神が少年と少女の2つあったから。
「うん、私がやったらしいよ。」
「あいつと僕は違う。」
これも片方がユキ、片方は雨樹なんだろうな。
やったのは雨樹、それを認識したのはユキ。
この場合の僕は雨樹。


「……あれ?」

じゃあ雨樹はなんなんだろう。
彼もpartsがあるような言い方だった。
ということは雨樹は

















「ねぇ、きみはだあれ?」
「ぼくはきみだよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
「じゃあずーっといっしょだね!」
「うん、ずーっとずーっといっしょだよ」

「早く早く!置いてくよ!」
「おい、ちょ、待てよ!」
「全く   は遅いなあ。」
「  が早いんだよ!」

「  、急にどうしたんだよ。出てこいよ」
「……嫌だ。」
「   には分かんないよ。どうしてみんな僕たちを否定するの?いいじゃん、僕たちは本当の本当に、2つで1人なんだもん……」
「  ……」

「最近、身体が動かないの。声が出ないの。たまに意識が飛んじゃうの。」
「大丈夫か?どうして……僕が  を支えてやるからしっかりしろよ!」
「うん、ありがと……あれ?   なんか前よりも色濃いね?なんか、今にも触れられそう……」
「……え?」



「ねえ   、どこに居るの?!僕ここまで探しに来たんだよ?!どうして居なくなっちゃったの?!言ったじゃん、ずっと一緒だよって!嘘つき嘘つき嘘つき!!ねえ、嫌いになっちゃうよ!ねえ、ねえ……帰って来てよ……」

「僕はここに居るよ!すぐ目の前にいるだろ?!早く帰らないと、  が死んじゃうよ!お願いだよ、ここに居るから死ぬなよ!!なんで見えなくなるんだよ!!周りには見えてんのに!  は僕が嫌いになったの?!なあ……死んじゃうよ……」

















雨樹は、あの少年だ。
雨樹にもそれぞれのpartsがいて、還るんだ。


気が付けば星は明るく瞬いていた。
僕は気が付けば、『ユキ』と同じになっていた。
黒っぽい赤毛、ヘーゼルの瞳。
横で寝ていたうさぎはこっちを見ている。



私は、うさぎの被り物を持ち上げた。