二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編オリキャラ募集 ( No.226 )
- 日時: 2012/12/30 21:50
- 名前: noeru (ID: AtjBkiCc)
- 参照: ダーク系ボカロ中毒患者の作者www
「雨樹。」
うさぎの中から出てきたのは雨樹だった。
正真正銘、私の双子の弟だった。
「おかえり雪芽。」
「あはは、ただいま。」
変わらない、変わってない、変わっちゃいけない。
昔から。2つで1人だったころから。私が表で、雨樹が裏だった頃から。
お互い、姿形はだいぶ変わったけど、『双子以上のもの』がある。
同一体だった頃の名残。血を超える繋がり。絶対に変わらない。
一心同体から対極の存在に変わり果ててしまったけど。
もう憎みあったりしない。愛したりしない。
だって雨樹は私だから。
私の黒っぽい赤毛はお母さん譲り。
雨樹の真っ黒い毛はお父さん譲り。
私の茶色い目はお父さん譲り。
雨樹の蒼い目はお母さん譲り。
私の人間離れした声は誰譲りかな。
雨樹の白い肌はお母さん譲りだね。
うさぎの被り物を座席に置いて、たくさん話した。
でもすぐに話のネタは尽きてしまう。
私の体験したことが雨樹の見てきたことで、雨樹が感じてきたことが私が夢に見たことで、つくづく一緒にいたんだねって言い続けた。
そんなことしてる間に、周りが白んできた。
風景が朝に変わる。
もうすぐ会えるね。急にいなくなったりしてごめんね。
雨樹とも仲良くしてあげてね。もういなくなったりしないよ。
私なんて必要ないかもしれないけど、私が生きていくのにはあなたが必要なの。
もう少しだけ、心の拠り所でいてください。
もう少しだけ、私の我侭を我慢してください。
もう少しだけ、私の運命を騙すのを手伝ってください。
もう少しだけ、私の世界に色をください。
今度の最期まで、傍にいてください。
ユキの最期まで、隣で私に呆れててください。
私の最期まで、私の嘘に付き合ってください。
最期の瞬間まで、あなたに甘えさせてください。
最後の最期まで、私の弱さを包んでください。
私が今度こそ消えたら、忘れてください。
ううん、やっぱり忘れないでください。
私は不器用で寂しがり屋だから。
むしろ、命日には欠かさずお墓詣りしてください。
いや、毎月来てください。
毎日仏壇に手を合わせてください。
1時間に1回くらいは写真に話しかけてください。
30分に1回は思い出に耽ってください。
15分ごとに私を思って泣いてください。
エネに監視させるから。
……やっぱり、1分1秒たりとも他のこと考えないでね。
どっちにしろ、まだまだ先のこと。
おじいちゃんになってもボケて忘れたりしたらダメだから。
あと数年ほどお世話になります。
また気が向いたら、どこかに連れて行ってください。
また気が向いたら、今度は海に行きたいです。
また気が向いたら、私も遊園地に連れて行ってください。
また気が向いたら、一緒にゲーセンで対戦もしたいです。
あなたは私と初めて会った日を憶えてますか。
あなたは私と話したことを憶えてますか。
あなたは私が好きなものを憶えてますか。
あなたは私が苦手なものを憶えてますか。
あなたは私の声を憶えてますか。
あなたは私の温もりを憶えてますか。
あなたは私の態度を憶えてますか。
あなたは私の癖を憶えてますか。
あなたは私の笑顔を憶えてますか。
あなたは私の泣き顔を憶えてますか。
あなたは私の困り顔を憶えてますか。
あなたは私の怒った顔を憶えてますか。
あなたは私の焦った顔を憶えてますか。
あなたは私の悩んだ顔を憶えてますか。
あなたは私の強がった顔を憶えてますか。
あなたは私のきょとんとした顔を憶えてますか。
私は全部憶えてるから。
あなたがとっても優しいことも。
あなたがいつも私を心配してくれたことも。
あなたがすごく強いことも。
あなたが温かいことも。
あなたの笑顔がどれほど私を幸せにしたかも。
どんどん車内は明るくなる。朝日のひんやりした感触が伝わる。
喉が痛くなる。冷え込んだ車内はゆっくりと崩壊する。怖くない。何度も死んだ。ドアがぱらぱらと落ちていった。向かいの窓が霧になって消えた。私と雨樹の座っている座席はそのまま、まだギリギリ原形を保っている列車と進む。手を繋いで、想いに耽りながらうとうとと眠気が襲う。
落ちていく中で、手を繋いだまま目を閉じた。
朝霧が髪を湿らせて、涼しかった。
私、幸せ。
それくらいの嘘ついたって、許されるよね?