二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】オリキャラ募集終了 ( No.240 )
日時: 2013/01/04 19:38
名前: noeru (ID: Od4XhnNJ)
参照: やっとカゲプロの二次に戻った気がするぜ!



白い空間だった。果ても見えない程広い。いやむしろ果てなどないのかもしれない。もしかしたら白すぎて遠近感が麻痺しているのか。


「どこだよここ……」


どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。夢の中であることに間違いはないのだが、リアリティがあって気持ち悪い。きょろきょろと周りを見回していると、背後に気配を感じた。振り向いて、絶句した。


「—————ユキ。」


最後に見た時と何も変わっていない。髪も、目も、服も、顔も記憶のままだ。だが、大きく異なる点があった。信じたくない。
ユキが、死んでいる。

胸を包丁で一突き、というのが一番分かりやすいだろう。包丁というか小型のナイフというか、刃物で深く胸を刺されている。パーカーは紅い血で染まって、白い腕を伝ってぽたぽたと血が地面に滴っている。
思わず目を逸らしてまた絶句した。
目の前で死んでいるはずのユキが、目を逸らした先にいる。もちろん死んでいて。

綺麗なプレゼントの包装用の太いサテンのリボンで、首を吊って死んでいた。唇から真っ赤な血がぽたぽたと、白い地面に水溜りを作っている。そしてその少し離れた場所に、左手にカッターナイフを持って、右手の手首から大量に出血した死体があった。もちろん、ユキの。

声も出ずに、ただ3つの死体に囲まれた。本能的に「逃げよう」と思った。大きく深呼吸をして、振り向いて俯いたまま駆け出した。
……ガツンと、何かにぶつかった。前を見ると、椅子があってユキが座っていた。


「う、うわああああああああああっ!!」


全身血塗れだった。どこが致命傷なのかも分からない。ただ血を浴びただけじゃないかと錯覚するほど、ユキは真っ赤だった。よく見れば椅子の下には、大量の凶器が乱雑に置いてある。どれも返り血を浴び、目の前の虚ろな少女を殺したことに間違いはなかった。


「あ、ああ……っユキ……?」


声を絞り出しても、返事はない。
あるのは見慣れた人間の屍のみ。
夢にしてはタチが悪すぎる。
聞き慣れた声が聞こえてきた。


「ねぇ、シンタロー?」


首だけ振り向くと、他の死体は無くなっていた。
代わりに、正真正銘生きているユキが笑っていた。
俺はきっと涙目になっていることだろう。


「ユキ……本物の、ユキなのか?!」

「シンタローはさぁ〜」


咄嗟に立ち上がってユキの腕を掴もうとしたが、掴めなかった。ユキの細い腕を通り抜けただけだった。
ユキはただ笑っている。


「あんな汚らしい姿でも私が好き?」

「……は?」

「あんな醜い死体になっちゃう私のこと、嫌い?」


自分の死体を嘲笑うかのように、ユキは微笑んでいた。
いつの間にか椅子も死体も凶器もなくなっていたが、それよりもこっちの方が恐ろしかった。
こいつは『ユキ』じゃない。
見た目も声も口調も全てにおいてそっくりだが、ユキはこんなこと言わない。


「……お前、誰だよ。」

「なにいってんの?私、ユキだよ。ずっと会いたかった?」

「違う。お前はユキじゃない。……誰だ?」


じりじりと近づいてくるそいつから離れるように、少しずつ距離を取る。にこにこと作ったような笑顔は異常なほど不気味だった。


「……私はユキだよ。シンタローの幼馴染の、雪芽だよ?」

「いい加減認めろよ!お前はユキじゃない、ユキはどこにいるんだよ!!」


その時初めて、そいつの顔から笑顔が消えた。背筋が凍りつきそうだったが、じっと睨み返す。そいつは俺を睨みつけることはなく、ただただ無表情に俺を見ていた。


「……ユキ。」

「え?」

「ユキユキユキユキユキユキユキユキユキユキユキユキユキユキユキ。シンタローはそればっかり。病弱な幼馴染がそんなに心配?虐待されてた幼馴染がそんなに大事?どうせすぐ死んじゃうくせに?あんな奴いらないよね?私たち2人だけで、あんな偽善者早く死んじゃえばいいよね?」

「……何言ってんだよ。」


気持ち悪い。明らかに危険人物だった。俺はこいつを知らないし、ユキが死ねばいいと言った。しかも『私たち2人だけで』……妄想癖は勝手にやってればいい。人を巻き込むな。


「ずっと好きだったんだよ。ずーっと一緒に居たのにどうして気付いてくれなかったの?シンタローだって私が好きなのに、どうしてアヤノなんかと仲良くするの?どうしてあいつに関わるの?」

「………アヤノなんか、って言ったか?」

「うん、言ったよ。一番ウザいのはユキだけど……シンタローに近付く屑共は私が全員排除してきたの。もちろん、アヤノもユキも、ね♪」


そいつはまた笑っていた。ユキの顔で、歪んだ笑顔を浮かべた。殴りかかりたい衝動に駆られたが、相手は触れることも出来ないし見た目はユキそっくりだ。とてもじゃないが、太刀打ちできる相手じゃなかった。


「今夜はもうすぐお別れだけど……朝になったら運が良ければ会えるからねぇ。それとね、いいこと教えたげる。」


ユキの声で、ユキの顔で、そいつは俺を見下すように見た。



「私も、あいつも、ちゃぁんと『ユキ』だからね。」