二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】オリキャラ募集終了 ( No.308 )
日時: 2013/01/31 22:22
名前: noeru (ID: 5FJRtBSO)
参照: 公式ファンブック買えたあああ IAちゃんありがとおおお



涼しい夜風が病室に流れ込んで来て目を覚ました。


「……ユキ?」


居るはずのない誰かの懐かしい声が聞こえたような気がする。
彼女と離れてからもう10年以上経つのか。機種が変わってもなお、俺の携帯の着信音は変わらない。
彼女が「この曲、手術前に聞くと落ち着くの。」と言っていた曲だ。そういえば連絡さえ取っていない。また入院したという話も聞いてない。
あんな親だし、何処か遠くへ引っ越したのかもしれない。それこそ海外に居る祖父や祖母、叔父叔母夫婦のもとへ行ったのかも。
こんなにも昔のことを思い出して干渉に浸るなんて俺らしくない。早く寝てしまおう。

黒光りする刃が、首元で光った気がした。




思い出せない。おかしい。
いつもよりも早く起きた8時半。今朝はなんだか目が冴えて、ずーっと例の写真立てと睨めっこしていた。
角度を変えたり、裏に何か書いてないかひっくり返したり、そもそも誰がこの写真用意したんだ?と考えたりしている。
この病室はほとんど私の特等席……という言い方は嫌だけど本当だからしょうがない。ここがまだ別の病院で建物が全く別物の時から、南病棟の街並みがよく見える日当たりのいい病室にいつも通される。
そのためか、荷物はほとんど置きっぱなしだ。
ふと、向こうの病室が目に入った。


「……あの子……誰……?」


見たことのないような見たことがあるような、綺麗なオレンジ色の髪を結んだ男の子。私と同い年くらいで、こんな時間なのに本を読んでいる。どこかアンニュイ気味な猫科の雰囲気。微妙に変わる表情は楽しそう。フラフラしてて掴みどころがないのに、いつか目が合いそうで。
何よりも、私と彼は同じ血が流れてるような安心感を覚えた。

病室は距離にして若干10メートル。
近くて遠い窓と窓がもどかしかった。



視線を感じて本から目を逸らした。
白いイヤホンを外して音楽を止める。「モモちゃんの新曲だから!絶対ハマるから!!」と言われたものの、基本はこういう激しい曲は好きじゃない。だからこそ、10年も着信が変わってないのかもしれない。あまりこだわりがないのだ。


「…………?」


俺の病室がある北病棟のちょうど向こう側の南病棟にいる少女。赤毛のような黒髪のような微妙な髪色、少しうねった長い髪。俺と年齢は同じくらいで、ぼんやりとこっちを眺めている。白い折れそうな手には写真立てが大事そうに抱えられていた。不思議な雰囲気のどこか寂しそうな表情。触ると霞のように消えそうだ。無駄に儚いオーラがあった。

窓は丁度10メートル程離れていた。
憂鬱そうな目線には何故か懐かしさを覚えた。




《独りで寂しいよ》

《死にたいよ》

《それでも》

《私が犯した過ちを》


《君が好きだよ》

《僕はここにいるからね》