二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】オリキャラ募集終了 ( No.309 )
- 日時: 2013/02/01 22:41
- 名前: noeru (ID: 8Iser8UO)
- 参照: 君の犯した過ちに 刺し殺されてしまっても 泣いた、実話?
「シンタロー、今日も来てくれたの?」
平日の昼下がり。もちろんモモたちは仕事や学校で来れないので、エネと俺だけでユキの病室に来ていた。
あの日倒れた時から、ユキは少しずつ確実に弱っていた。病室のカーテンをいつも閉め切って、その向こうをぼんやりと眺めている。
憂いというか、何と言ったらいいんだろう。普段のように感情を表に出すことをしない。何か言いかけて、止める。嬉しそうでもないし、不満があるようにも見えない。
「なぁ。ユキおかしくないか?」
「そうですねー、お菓子食べれないから退屈なんじゃないですか?」
ディスプレイ一杯に顔を近付けて、お気楽そうにエネは笑っている。せっかく人が真面目に話してるのになんて奴だ。
「真面目に答えろよ。こういうの、俺よりもお前の方が分かるだろ?」
「ハイ。ご主人よりは分かります。ご主人鈍感ですからね。」
「失礼だな!一応小学校の頃から面倒見てるんだぞ、少しは……」
「その時点で違います。私が思うに、ご主人♀は多分1人でも十分生きられます。生活力ありますし。」
それを言われると何も言い返せない。得意げなエネに言葉が詰まってしまう。確かにユキは母さんがいない時は家事もある程度こなすし、料理も結構うまい。掃除も出来るし気も利くが、1人にしておいて急に発作が出たりするといけないので見張りが必要になる。モモの部屋に居られなくなって俺の部屋に来た時、一緒に寝ていたのはそのためだ。
「それとですね、ご主人!気付いてないんですか?」
「何がだよ。」
「ご主人♀って、絶対ご主人のこと好きですよね!」
もうなんか唐突すぎて驚けなかった。
むしろ笑えない冗談だ。
俺すらも超える超人レベルの鈍感さを持つユキに好きな男?しかもそれが俺?在り得ない在り得ない。
エネはかなり自信満々で目を輝かせているが、苦笑いでは返せなかった。
「いや……流石に笑えねえよそれ。」
「あれ?でも好きな人はいると思いますよ〜!女の勘です!!」
「そうか?あいつに限ってそんなことは無いと思うけど。」
「絶対そうです!絶対!!」
興奮しているのか、携帯が強く震える。女子って言うのは誰に変わらず恋愛の話題に敏感なのが面倒だ。ユキはまったくそういった類に興味が無かったが。
本日27回目の深い深いため息を吐いた。
不思議な意識が覚醒したような気味の悪い背徳感が、生温かく背筋を滑っていくようだ。くすぐったくて苦しいけれど、それを押し潰すものがある。
病魔だ。
私は必要以上に人と関わることはなかった。一部例外はいるけど、自分がいなくなった時を考えれば人と深い繋がりを持つ意味なんて忘れてしまう。
重々しいカーテンの向こう。だいたいいつも不機嫌で、ハードカバーの本を読んでる。退屈な時は音楽を聴いているけどすぐ飽きている。たまに来客が来るとカーテンを閉めて、その人が帰るとカーテンを開ける。
顔を見たことしかない、10メートル離れた距離から。
でもただの向かいの病室の住人だけじゃない。恋愛感情でもない。分からない、から不思議だ。
昔孤児院の先生に「4つ離れた兄がいる」という話は聞いたことがあるが、どう見ても成人しているようには見えない。どこかあどけなさが残る。
どうか、こっちに気付いてくれないかな。