二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】オリキャラ募集終了 ( No.346 )
- 日時: 2013/02/21 22:04
- 名前: noeru (ID: Ae0cXCnx)
- 参照: 夜咄ディセイブのリピート回数が病気です重症です
ある少女は聞きました。
「なんで僕は独りぼっちなんだい」
ある怪物は答えました。
「それはお前が不完全だからだ」
その少女は聞きました。
「なんで僕は完全じゃないんだい」
その怪物は答えました。
「それはお前が無垢だからだ」
少女の姿を模した『バケモノ』は何も言いませんでした。
ただ、——————
—————「なんで僕は生まれてきたの」
「それは悪がこの世に必要だったから。」
「君は教えてくれる?」
「『バケモノ』の僕の本当のこと」—————。
「いたわ……。美!!」
フードコートエリアの中心、スイーツ店がずらりと並んで甘い香りを放っている中で爛々と目を輝かせている1人の少女。声を掛けるとこちらに気付いて微笑んだが、同時に周りの野次馬とそのカメラの向く先にも気付いたらしい。たくさんの視線に耐えきれず呻いている。
くわしいことはよく知らないが、つい最近まで彼女……美は喋れなかったらしい。そのために未だに無口だし、病室から出たことがなかったせいで極度の視線恐怖症だ。だから自分が何故注目されるのかさっぱり分かっていない。
「あ……ぅ…………れ……レイ………ちゃ……ん………」
「待ってなさい。今助けてあげるわ」
ふふ、と笑うと美は少し安心したように子供っぽく笑った。
目を閉じてゆっくりと開ける。私の目が赤く輝くと同時に、たくさんの野次馬がそれぞれ大きな声で叫びながら四方に散らばって行った。ぽつんと残された春に駆け寄ると、今にも泣きそうな顔をして立ち尽くしていた。
「……あ…りがとう………レイちゃん……は…すごい……ね………かってに………いなく……なって………ごめんなさい………」
「大丈夫よ。美にとっては全部珍しいのよね、しょうがないわ。それよりフウが待ってるわ……早く行きましょう。」
涙目で項垂れている春を連れて会場に急ぐ。ここからなら5分もかからないだろう。小奇麗に手入れされた腕時計を見ると開始まであと25分。フウの出番は最後の方……余裕で間に合うだろう。
「………フウ……は…間に合う………?」
「出番?ああ大丈夫。まだまだ時間は余ってるから。」
複雑な造りのフロアを、能力で周りを惑わしつつ歩いていく。これで美に『目』が集まってくることもないだろう。周りには美は全く別の少女、むしろ少年に見えているかもしれない。あんまり話しかけて無理に喋らせるのも可哀想なので(歩くだけでも息を切らして苦しそうだった)、無言で歩き続ける。しばらくすると派手に飾り付けられた大きな屋内広場が見えてきた。色取り取りの風船や鮮やかなネオン、大袈裟な音響機具など意外と本格的な感じだ。
「うわぁぁああ…………すご…い……ね……すごい………」
観客がもう大勢集まっていて、席はほとんど埋まってしまっている。「関係者席」と書かれた席に座って開始を待つものの、まだ10分以上ある。美はいつものように周りをきょろきょろと見回してはニコニコ笑っている。ただ誰か知らない人と目が合うと決まって、いそいで目を逸らして涙目になるのだった。
「美、もうすぐ始まるからじっとしてなさい。」
「う……うん………!……たの……し…み………!」
美はじっと前を見て、いつもより楽しそうな雰囲気だった。
—————それが30分前。