二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】 ( No.4 )
日時: 2013/06/01 16:29
名前: noeru (ID: hrsoCobP)


私はまたあの夢を見てる。

あの頃の『私』が今日も石の道を歩く夢。

捨てられたくないから、今日も意思とは関係なく無意識に刻む。

まずあんなのは『私』には似合わない役だったんだ。

お義父さんとお義母さんが、必死になって糸を引いてただけだったんだ。

眼鏡の裏からは汚い世界しか見えなかったよ。

『私』には出来ない事ばっかり求められてもさ、無理なんだよ。

必然的に選ばれちゃっただけなんだから。

画面の中から見えるのはやっぱり汚い世界だ。

それから、ほら。まただ。

助けられない、目の前で「ありがとう」って呟いて。

世界が空回りして、色をまた潰しちゃって。

とりあえず、紅く染まっていくんです。

それからまたぐるぐる廻ってさっきのシーンに戻る。

石の道を今日も刻んでるよ。

もうそこにあの笑顔も自分の願いもないのにさ。

『私』なんてただの人形だって、もう知ってたじゃん?

偽善のままに笑えって言われて笑ってただけだよ。

限りなく深く造られたプールかなんかに溺れて、助からないって知ってるくせに足掻いてる人と同じだよ。

『私』なんて操られてただけじゃん、都合いい人形じゃん。

あの日失ったものの大きさも重さも、多すぎてはっきり憶えてるくせに。

また同じ夢見て、また言えなかった。

「今までごめん」って謝れなかった。

最期まで言えなかったよ。

その糸を誰かが切ってくれるのを待ってた頃の愚かな自分。

そろそろ気付いてもいいはずでしょ?

溶けきった『私』に気付いてくれる人なんてもういないんだよ。

「そんなこと解りきってたよ。」

実体を失った溶けた『過去』に反論なんてされたくないね。

言い返す口ももうないのに。

簡単だよ、自分から糸を引き千切れよ。

その力ももう残ってないんなら、


—————いっそのこと、死ねば?



     ・  ・  ・


「ねえ、ユキちゃんって絶対ユキだと思うんだけど。」

「あ、カノもっすか?俺もなんか似てるなーって。」

「…ここまで意見が揃うとはな…」

全員一致で「ユキに似ている」という結果になった。

ユキは俺たちよりも1つ年上で、俺たちが5歳…つまりユキが6歳の時に引き取られていなくなった。引っ込み思案で幼くて天然だったのをよく憶えている。

「名前も同じだし、本人じゃない?」

「だとしても、こんな偶然…。ありえないだろ…。」

でもまあ、ありえないこともないか。引き取られた先が偶然如月家の隣人の家だったら、ここに住んで…。住んで?

「シンタロー、どうしてユキはここに住んでるんだ?」

よく考えたらおかしかった。引き取られ先は如月家じゃない。ユキは本名を『如月雪芽』と答えたけど、その後シンタローがすぐに訂正したのだ。本名は『園田雪芽』。園田を名乗ることも嫌がっている。

「あいつの里親さ、過保護なんだよ。それで逃げ出してきた、他人の家に。」

「…過保護?」

「ああ、過保護すぎてさっき言った中学の件以来高校入学まで、あいつ親に家で監禁されてたんだよ。家出る時も『出ていったら殺す』とか言われたらしい。」

「「か、監禁?!」」

どうやら彼女は、ろくでもない所に引き取られたらしい。


     ・   ・   ・


「…何時?」

起きた時はもう夕方だった。携帯の電池が切れて、時間が確認できないよ。

「エネーっ。」

「あ、ご主人♀!なんでしょう?」

「その呼び方止めて。」

シンタローのおまけ扱いには慣れないなあ。苦笑しながら時間を確認すると、もう4時近いことに気付いた。

「4時でもうこんな夕焼けになるんだ〜。」

窓越しの夕焼けしかもう見てないよ。外の空気も吸ってないよ。シンタローとモモ以外の人間なんて、2年ぶりに見たなあ。おじさんとおばさんは海外だもん。お義父さんとお義母さんは…私なんて存在してないみたいだ。私が選んだことだからどうでもいいけど。

「…ねえ、エネ。」

「なんですかっ?」

「私が人間と会話なんて馬鹿馬鹿しいよね!」

なんとなくすっきりしたので、リビングに戻ることなく二度寝することにした。