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壊すことにもう躊躇いなんてない。
崩すことにもう戸惑いなんてない。
じゃあなんで走ってるの。病院を飛び出して逃げ出したの。

自分のやりたいことが分からない。
でももう後戻りできない。
もう傷つきたくないし傷つけたくない。
なんで素直に笑えないのかなぁ。
いつから笑えなくなったのかなぁ。
忘れちゃった。


忘れちゃった



「ねえ、『蛇』さん。本当の事。教えて。」


拙い君の声が脳裏に焼き付いて離れない。


「本当はユキはもうこの世にいないんでしょ。」


止めて止めてお願い止めて。
もうすぐもうすぐ全部終わるから。まだもう少し待っていて。


「ずっと昔に死んじゃったんだよね。」


待って待って往かないで。
私を置いて往かないで。約束したよね、私を１人にしないでよ。









本当はね、大好きなんだよ。





終末実験は崩壊を始めた。この世界の榎本先輩とすれ違う。ユウキにpartsを奪われ死んだ私が先輩の背中を押して、世界は最後の日の中を疾走する。ラジオから聞こえた大統領の声、私はあの場所に立っていた。
先輩とは逆方向、あの丘から病院から離れていく。周りがみるみる実験で崩壊していく。そのうち何処でもない、暗闇の中を無我夢中で走っていた。

世界の終わりから逃げる片道キップ。
もう手放す道は閉ざされているなら。
『振り返ってはいけない』シナリオを千切ることにした。


振り返った先。
[本当の世界]は跡形もなく消えていた。