二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】 ( No.43 )
日時: 2012/11/03 13:46
名前: noeru (ID: JxbQz1Sc)



雨樹はあの日確かに死んだ。

だから私しか生まれてこなかった。

でも雨樹は私の中に溶けて生きていた。

おかしいよ、双子の姉を愛するなんて。

狂ってるよ、憎んでるはずなのに。

私は私の中で、義親に暴力も受けない傍観者の雨樹を憎んだ。

雨樹は私の中で、アヤノやシンタローと楽しげに笑う私を憎んだ。

私は初めて『目を潰す』まで、雨樹の存在を知らなかった。

雨樹も私の存在を知らなかった。

あの日、私たちは確かに分裂したんだ。

『目を潰す』私と、『目を覆う』雨樹に。

それまでは雨樹の『目を覆う』で私の能力も雨樹の能力も出なかった。

私が『目を潰す』なら雨樹が『目を覆う』。

雨樹が『目を覆う』なら私が『目を潰す』。


     ・   ・   ・


これは不幸でもない。

これは絶望でもない。

これは正しくない。

どうでもいい。

僕はユキを憎んでいる。僕はユキが大好きなんだ。

誰がおかしいと言おうと、変わらない。

ユキ本人が拒んでも、変わらない。

ずっと傍にいられればそれでいい。

ユキは無垢だ。純粋だ。何も知らない。

だからこそ愛おしいんだ。

誰の手にも届かない。誰も愛さない。

ユキは誰も愛さないし、誰に溺れもしない。

誰のものにもならないし、誰にも染まらない。

心に刻まれた深い傷に流して、忘れてしまう。

『人間と関わるのが怖い。いつか失う。』

あの日にユキはそれを味わった。

目の前でアヤノが死んだ日に。

だからユキは、人間を恐れたんだ。


     ・   ・   ・


雨樹の笑顔が頭を過った。
ユキの笑顔が頭を過った。

本当に守りたかったものがあったはずなのに。
本当に守りたいものがそこにあるはずなのに。

現実の世界で私は苦しんだ。
虚構の世界で僕は悲しんだ。

ここが虚構だというのなら、
ここが現実だというのなら、

それは私が望んだ世界なのかな?
それは僕が望んだ世界なのかな?

いっそここで朽ち果てるのも悪くない。
いっそここで殺してしまうのもいいな。

右腕を完全に失ってもまだなお、
左腕を完全に失ってもまだなお、

私はあの夢に沈む。
僕はこの幻に沈む。

雨樹には何の罪もない。
ユキには何の罪もない。

だって、雨樹は私だったんだし…
だって、ユキは僕だったんだし…

張りぼての世界観が涙で滲んだ
張りぼての幻想感で君は泣いた

大切にしたかったあの日が
大切にしたかったその日が

スクリーンに映っていた。
スクリーンに映っていた。