二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】 ( No.49 )
- 日時: 2012/11/04 19:37
- 名前: noeru (ID: 5T17/fJ8)
鳥の大群が消えた時居たのは、普通の町だった。人間が忙しなく僕の横を通る。
立ち尽くす僕にぶつかりそうになって小さく舌打ちするサラリーマン。
無邪気に僕のないはずの右腕を指差して親に注意されている親子連れ。
僕の容姿を見て避けるように歩いたり、ちらちらとこちらを伺う人々。
その遥か向こうに、フードを眼深に被った集団が見える。やはりこちらを指差したり笑ったりしている。それを何1つ気にする様子もない。あっちだって十分怪しいのに、あっちは誰にも気付かれていないように見えた。
ぼーっと彼らを眺めていると、いつの間にか居なくなってしまった。何処に行ったのだろう、僕は何処にいこう等の全く進まない考察をしていると、誰かにぶつかった。
「ああ、すまん……」
こちらを全く気に留めずに謝られた。何とも思っていないので気を悪くすることもない。何か別のことに夢中なのだろう。それが重大なことだったら責任は取れないし、足早に立ち去ることを決めた。
「いえ、こちらこそすいませんでした。」
眼を向けて驚いた。
さっきの怪しげな集団が居た。もうこちらを見ていないが、さっきぶつかったのはそのうちの1人のようで、とても顔立ちの整った少女だ。眼が真っ赤に染まっている。何か不思議なものが込みあがってきたが、不発で終わった、終わるところだった。
「———エネだ。」
集団の中に居る、ぶつかったのとは別の少女が持っている旧型のスマホの画面いっぱいに映し出されているのは紛れもない、少し前に新たな名前を教えたあのエネだ。
「エネ!エネっ!!」
集団の中に飛び込み、必死に旧型のスマホに手を伸ばす。それを持った少女はかなり驚いた様子で腕を引く。その手に握られた画面の中で、エネの驚いた顔が映し出されている。
「ユウキ———?!どうしてそっちに……!」
スマホをつかみ損ねた僕は、そのまま前のめりに倒れ込む。その途中で視界がまるで古いアナログテレビの砂嵐のように眩むのが分かった。
暑さでバグった僕が最後に見たのは、十字路でトラックに轢かれる間際の少年だった。