二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】 ( No.50 )
- 日時: 2012/11/04 20:15
- 名前: noeru (ID: 5T17/fJ8)
視界の砂嵐がようやく収まり、眼を見開くとそこには死体があった。
真っ赤に染まった少女の死体はどうやら、トラックに轢かれたらしい。さきほど轢かれそうになっていたのはその少女を抱きかかえて泣いている少年だったはずだが……?
やけに日差しが強いな、と適当に考慮してみる。ここで少年に話しかけ、「君が轢かれたんじゃないの?」とか問うのは後にしておこう。今いいところみたいだから。
血飛沫の色が道路、トラック、標識、信号機、少年、少女の死体等を鮮やかに染め上げている。その具合といったら、あまりに見事で清くさえ感じる。憶えていないが昔僕もこれほどの血飛沫を浴びた気がする。目の前で嘆く少年のように、血まみれの誰かを抱きかかえて泣いた気がする。
ゆらゆらゆれる陽炎は夏の間にはよく見かけるいわゆる『風物詩』だが、人型で喋る陽炎は生まれて初めて見た。いつ生まれたのかは知らないし、どうでもいいのだけれども。
その瞬間、空間がぐにゃりと歪む。眼の前で身体が可笑しな方向に捻じれたまま動かない少女よりも曲がる。陽炎がこっちを見てちょっと笑って、消えた。ぐしゃぐしゃ、べちゃべちゃと耳障りな音を立てながら廻る空間で僕は居た。
どうやら今日は8月14日らしい。
日付の確認と年月の経過速度の確認を済ませ、また街を歩き回る。今日は涼しくて散策調査には絶好だった。僕は15日よりも14日の方が好きだ。15日は暑くてたまらないし、何よりまた空間が捩れる感覚は好きになれない。
確かこの前はどんな風にヒヨリは死んだんだっけな……?
2人の会話から、いつも酷い死に方をする少女が『ヒヨリ』でいつも狂ったように嘆く少年が『ヒビヤ』だと解っている。
ちなみに、半永久的に続くこの世界を救おうとしている青年は『コノハ』というそうだ。
コノハがこの世界を進めようとするその気持ちは理解不能だ。コノハもエネや僕と同じような存在で、エネのように人間に肯定的なようだ。僕は正直肯定も否定もしない。どっちでもいい。勝手に周りが決めてくれて構わない。それに、人型の陽炎の正体も知りたいし。
話が戻るが、お気に入りのヒヨリの死に方はもう何年も前のことで、鉄柱がその小さな身体を貫通したときの死に方だ。鉄柱に潰されるのはよく聞くが、貫くという発想はなかった。
さて、今日はどんな風に死ぬのだろうか。ちょっと楽しみだ。
ヒヨリを押しのけてヒビヤがトラックにぶち当たった。
最初と同じように一面が血に染まる。この結末にたどり着くまでに約何十年掛かっただろうか。普通に考えれば数回で気付きそうなものだ。
だが、このシチュエーションはどこかで……。
ヒビヤが飛び込んだ景色。そうか、あの日にやっと戻れたのか。これで駒を進められる。コノハは目標達成か。おめでとう。
陽炎が不満そうに唸る。役者が1人減ったのを気にしているのかもしれない。僕だけは穴埋めに使わないでほしい。
つまりはまあ、簡単に言うと。
実によく、特に夏にあるらしい話が1つここで完結した。
で、今度は身体の中から響くように、ラジオのノイズが聞こえた。
やっぱり意識は飛んだんだ。