二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】 ( No.51 )
- 日時: 2012/11/04 20:38
- 名前: noeru (ID: 5T17/fJ8)
『非常に残念なことですが、本日地球は終わります。』
最初は不確かだったラジオのノイズは、視界がしっかりしてくると共にはっきりと聞こえた。泣きながら喋る大統領閣下は、意外と言葉を詰まらせることもなく話す。悲しんでるんだろうけど、いまいち伝わってこないんだよね。
空は最初見たように、大きな鳥たちが空を埋め尽くしている。三日月がそのシルエットの間からぼんやりと見えそうで見えない。地上は地上で大混乱。そんなに自分が可愛いか、自分の命が愛おしいか。くだらねえ。面倒だし、逃げるのも生き残るのも興味ない。どうせ死なないだろうしさ。ここで思い出したこと、僕は多分もう当分何が起きても死なない。
眼の前の人たちはみんな街の中心街に向かっている。どこにどう避難しようと意味がないのに、集まればなんとかなるというのは思い違いだと何故教科書に載せないのか。
眼の前の少女はよくエネに似ていて、小型の携帯ゲーム機をセーブもせずに切ってしまった。嗚呼、もったいない。もう少しでラスボスだったのにね、残念だ。机の上に散らばった参考書の中には、こういう時の避難方法は載ってないよ。ヘッドフォンで耳を塞いで現実逃避。そうやって死んでいく人間が大多数だと思われる。設定から、アーティスト項目『不明』、タイトル『不明』に設定している。そこにあるはずのない曲が1曲、少女の耳元に溢れ出す。僕はその懐かしい声に耳を澄ませた。
「生き残りたいでしょう?」
「あの丘を越えたら20秒で、その意味を嫌でも知ることになるよ。」
「なんで、なんでっ……?!」
叫ぶようにして走り続ける少女の後を追う。生きる気も死ぬ気も特にないので、彼女がその後生き残ろうと死のうと気にしない。ふいに少女は丘から少し離れた路地に入る。ヘッドフォンから「違う!」とか「戻って!」とか聞こえてくる。———道を間違えている。
「!!は、放してよ!!」
少女の肩を掴んで強く引っ張った。振り返ろうとする彼女の針路を無理矢理修正して、肩を放し耳元で呟く。
「—————生き残れ、エネ。」
少女が振り返った先に僕は居なかった。眼の前には丘がある。そこを少女は駆け登る。
科学者が手を叩く。爆弾を投げた。
紅く色めく終末実験の行われている実験施設で、僕は独り失う意識の中。
「ごめんね。」
声を聴いた気がしたんだ。