二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】 ( No.59 )
- 日時: 2012/11/07 20:30
- 名前: noeru (ID: H9VWapZn)
僕はあの場所に戻ってきていた。
ただ違うのは雨が降っていて、あの家が少し新しいので、あの時よりも昔なようだ。また横になっていたようで、起き上がって雨の中で考える。どうしようか、この『右腕』は防水対応なのだろうか……。
「あら、大丈夫……?」
吃驚してバッと振り返ると、あの時の少女によく似た女性が立っている。でも、それよりも白い髪。それよりも赤い眼。奇麗だ。
「雨の中じゃ、風邪引いちゃうよ。中入って?」
「あ、すいません……。」
よろよろと立ち上がる。どうやら『右腕』は撥水素材でコーティングされているらしい。全く痛みも不快も感じない。
生暖かいお湯が身体を滑らかに伝っていく。冷たい雨の中で寝ていたからか、身体は随分と冷え切っていた。こうして見ると『右腕』はやたら気味が悪い。何よりも、髪を洗うのに片手では不便にもほどがある。それに浴槽でぷかぷかと浮く『右腕』は、この上ないほどありえない。
「ありがとうございました、服まで借りちゃって……」
「いいえ、私から言ったんだもの。———珍しいわね、ここに人が来るなんて。」
彼女の表情は寂しそうにも嬉しそうにも見えた。歓迎されているらしく、ほっと胸を撫で下ろす。それにしても、ここで一人で暮らしているのだろうか?
「きっと娘が喜ぶから、起きたら遊んであげてくれる?」
「えっ?娘さんがいるんですか?!」
じゃあ、あの時の一人ぼっちの女の子は……。
「ええ。私たちはメドゥーサの末裔で、外で他の子と遊ばせることも出来ないけど……」
外で遊べない。
何処かで聞いた、ううん。僕自身が知ってる。体験したことがあるような……?メドゥーサの末裔?僕は……
「私、シオンっていうの。貴女は?」
「僕……ユウキっていいます。けど———」
震える左腕を支えようとして気付く。
嗚呼、僕にはもうかつてのような『右腕』がない。
代わりに—————醜い醜い、コンセントのプラグがある。
「僕は、人間だった、はず、なのに……どうしっ、て……」
偽りの涙が後から後から溢れてくる。僕の身体はもう人間じゃないって知っていた。細長いコードの右腕、全身の関節は全て球体、鮮血のような髪、漆黒に塗りつぶされた禍々しい瞳。昔の僕はどこに消えたんだろう。感情さえ、誰かに覆われて見えなくなってしまったような。
「いつまでも降り止まない、この雨が止んだ時、あの子はどんな顔で、どんな人と世界を知るのだろう。それだけが今日も、楽しみで仕方なくて。」
静かにシオンさんは語る。その温かさが、僕を優しく包んでくれた。どうしてかな、さっきの自動販売機も、如月の名前も、あの少女も、メドゥーサという種族も、何1つ違和感を感じないのに。
誰かに、優しくされることは苦手なんだ。
思い出したのは、また眩む視界で気付いてしまったのは、