二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編リク募集! ( No.87 )
- 日時: 2012/11/11 20:28
- 名前: noeru (ID: i/PBPHsD)
今日も誰かが殴られて血を吐き続ける。今日も誰かが軽蔑の視線に涙を流す。見慣れてしまった醜い毎日に、君はいつしかそこに立ってた。
真っ白な髪、淡いピンクの眼。きっと彼女も僕らと同じ、何らかの能力を持っているんだろう。彼女は僕と同じ牢獄に入ってきた。つまりは、昨日いなくなった奴の補充で、他の牢から来たってことか……。それにしてもビクビク怯えて、誰とも口をきこうとしない。代表に(何故か)僕が選ばれて、彼女の名前を聞くことになってしまった。
「———あー、あの。聞こえてる?」
遠距離から声をかけてみる。びくっとしてこちらを振り返ったので、とりあえず耳は聞こえるようだ。こんな劣悪な環境なので、耳が聞こえなかったりする奴も居るんだ。たまに。
「……」
「君の名前が知りたいな。教えてくれない?」
「…… 。 、 。」
なるほど、彼女は喋れないらしい。よく見ると舌がない。口パクでなんとか伝わったが、彼女には名前も舌もないそうだ。
「 。」
「……は?」
彼女が来てしばらくして、彼女は馬鹿みたいなことを思いついたようだ。僕の居場所はここ以外ない。帰る場所も、ない。無理矢理手を引く彼女に連れられて持ち場を離れ、監獄の暗いじめじめした通路を疾走する。冷たい隙間風が肌を切り裂くように刺激する。
「待って、そっちは強制更生牢獄……」
彼女は無我夢中で走っているのか気付いていない。あっちは看守が無駄に多くて危険だというのに。冷や汗が垂れる。その時、眼の前に広がったのは強制更生牢獄の一室だった。
壁一面に真っ赤な夕焼けが描かれている。僕はだいたいこの施設の地図を把握しているが、ここは知らなかった。彼女を見ると何故かぽろぽろと涙を零している。その視線の先には、2人の子供の死体があった。辛うじて少年と少女だと確認が出来る。今まで死体はたくさん見てきたが、ここまで酷いのは初めてだ。酷く吐き気がする。しかもその1人には見憶えがあった。
「あ……あ、ま、まさか……。」
その血塗れの手を取ると、まだ生温かかった。
「 ……。」
彼女も、隣で少年の手を握って泣いている。
『一緒に帰ろう。』
『間に合わなかった……。』