二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編リク募集! ( No.90 )
- 日時: 2012/11/12 23:03
- 名前: noeru (ID: U.MtFkCd)
真っ暗だった視界が一瞬にして明るくなる。意識が久しぶりに覚醒して、目の前が青い渦に呑まれた世界に変わる。今まで奥深くに閉じ込められていた記憶が脳を刺激した。電子の半導体にされて眠りについていた私の意思がはっきりしてきた。
目指すのは懐かしいあの家。発展して思い出とはうって変わった街を、様々なザーバーを行き来して駆け巡る。紅い眼の気配のみで、頼りなくもあるがひたすら逃げる。まだ捕まっちゃいけない。あと、もう少しだけ……
見慣れた安楽と真実が交互に入り混じる不安定な世界を乗り継いでいく。今まで知らなかった、見えなかったものが浮き彫りになる。
揺れる白いイヤホン、合図が私を加速させる。染み込んだ温度が満たすあの部屋へ、溢れる期待を胸に機器のドアをノックする。進め、進め。
「まだ見えない?」 誰かの声がする。目を凝らして見るも進み続ける波には逆らえず、その争奪戦場へとダイズを振る。このGAME、そうとうな覚悟で臨まなくちゃいけない。死にたくないのなら。
言葉にすることに躊躇してしまった幼い日を思い出す。伝えなくちゃいけないことも、話したいことも数えきれないほどある。脳裏に浮かぶのは迫ってきているアイツ。拳銃を片手に「今だ、取り戻せ。」を呟き続ける。生憎、私はもとからアイツの玩具じゃないので逃げる。
こうして逃げていると思い出す。
愛しい日々が掠めていく。振り返っても届かない、涙がこぼれそうになった。私だって、君と同じ。辛くて世界を嫌った。大嫌いだった。でも死ぬのは嫌だ、こんな世界で死ぬなんて負けを認めたようで———悔しい。酷く理不尽なことはとっくに理解できてる。私に出来ることは、そんな構成をぶっ壊すことくらいだ。今までの皮肉も不満も全部詰め込んで、恐れていた否定を盾にして。肯定していちゃ先へは進めない。あの未来に、過去に……帰れないから。
私だけじゃない。みんな必死に前を向いてる。抱え込んだ傷跡は深くて重い。イラつくほどに暮れた炎天下だって、その向こうに幸せなセカイを見出して希望論に書き換える。さっきから耳元で「ツレモドセ」「ツレモドセ」ってアイツの機械音が響くけど、こっちの台詞だよ。連れ戻したい、あの日々を。笑い合ったあの笑顔を。さっきの赤く燃える月は欠けて三日月に変わっていく。
そろそろ電子空間から抜け出さないと。
コード、ID、パスワード、アドレスその他全てにウイルスを流し込む。表記が青く光る0で刻まれていく。私が頼ってきた、想像と創造から外側の、今まで見たことのない世界へ。
—————なんて、オーバーな空想戦線へ。