二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編リク募集! ( No.93 )
日時: 2012/11/13 23:01
名前: noeru (ID: ITQjg0TH)



身体が浮くように軽くなる。眼の前に手を出してみた。指を少しひっぱってみたり、髪の毛をつまんでくるくると捩じったりする。どうやらやっと解放されたみたいだ。久しぶりに感じる3次元は、まだまだ暑さが残るものの風は涼しくて、逃げるにはちょうどいい気候だ。足を運ぼうとして、がくんとその場に座り込む。ただでさえ外で歩くことが少なかった私が、さらに肉体さえ失い死んで、それでも走れる……歩けることは難しい。使われずに錆び付いた足で動けないのなら、どうしたら逃げれるだろう———?

「お先にどうぞ?」

眼の前に過った情景は、舌を出して余裕ぶる幼い頃の私。あの頃はクラスでもダントツに足が速くて、よくリレーのアンカーだの陸上の大会だのやったなあ……走ることが楽しくて、無邪気に目を輝かせてた。幻影を掻き消して、動かない足を前へ前へ。

「ほら出番だ」

聴き慣れた声

見慣れた青いログイン画面

パスワードをすばやく撃ちこむ

じゃじゃ馬が目を覚ます


「—————エネ!!聞こえてる?!」


「……も、もしかしてご主人♀ですか?!」


「もしかしなくてもそうだよ!!なんとか今逃げてるから、ええっと、とりあえず後でね!!」


もう夜が深くなってきた。オコサマなら今頃、慣れない暗い時間に燃えているだろう。先の見えない延長戦を潜り抜けて、帰る場所へ急ぐ。

「逆境ぐあいがクールだろ?」

寝れないね、まだまだ。使い物にならないくたびれた足を無理矢理進める。さあ早く速く!

イン・テンポの曲が街を疾走する。視線がぶつかり合う道を、ビートを刻むように走る。小さくハイタッチして、嗚呼早く会いたくなってきた。そんなこと考える時間も勿体ない。足を動かしリズムにノっかってく。さらにワンコードで視線を合わせて、渦巻くグルーヴがぶっ飛んだ。まだ気付かない、冗談じゃない、見えてるはず。そのハイエンドの風景の隙間に、確かに。